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  • 2023.01.27

「刀ピークリスマス2022」の“韻”──ライミングから解説する、ピーナッツくんの音楽性

「刀ピークリスマス2022」の“韻”──ライミングから解説する、ピーナッツくんの音楽性

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バーチャルYouTuber/ラッパーのオシャレになりたい!ピーナッツくんとバーチャルライバーグループ・にじさんじ所属の剣持刀也さんの2人による、一夜限りならぬ聖夜限りの祭典「刀ピークリスマス」。

クリスマスの夜に行われるコラボ配信の中、ピーナッツくんは毎年、剣持刀也さんへの愛を綴ったテーマソングを披露しています。

年を重ねるごとに上がるそのクオリティに、「刀ピークリスマス」を視聴するファンからの期待も高まるばかり。

ついに2022年の「刀ピークリスマスのテーマソング2022」は、剣持刀也さんが「ちょっと音楽性見せに来てる今回!」と笑いながらツッコみを入れるほどの出来栄えに。TikTokで大流行するまでになっています。

今回は、“HipなPop”を掲げラッパーとしても活動する筆者が、特にライミング(韻)をタイトに踏んでいた「刀ピークリスマスのテーマソング2022」1番のリズム・デザインを分析・解説。その評価の理由を紐解いていきます。

目次

  1. Q.ラッパーはなぜ韻を踏む? A.リズムをつくる/崩すため
  2. 1番Aメロ:“刀ピー”でリズムの転換点を明示
  3. 1番Bメロ:3連譜のリズムでサビへとタメ
  4. 1番サビ:「O・I・O・A・O」の5文字踏み
  5. ピーナッツくん「王道」のリズム・デザイン

Q.ラッパーはなぜ韻を踏む? A.リズムをつくる/崩すため

そもそも、ラッパーはなぜ韻を踏むのでしょうか?

これは私見もありますが、ラップという歌唱法は音韻を揃えることでアクセントをつけ、それによって“リズムをつくる/崩す”ために生まれ、発展していったものだと考えられています(もちろん、文章表現・言葉遊びとして強調するという役割もあると思います)。

1970年代、アメリカのストリート文化をルーツとして誕生したラップの文化。約50年の歴史を経て数多の主義・流派へと派生していますが、その基本はビートに乗せてリズミカルに言葉を紡ぐことにあります。

ではリズムとは何か。やや抽象的な説明になってしまうのですが、リズムとは「同じパターンの周期的な繰り返し」。音楽においては、一定時間の間に似た音のまとまりが繰り返されることで、リズム(ビート)を生み出しています。

ビートに言葉を乗せる中、一定の周期で同じ母音の響きを発することでリズムをつくり、耳に残るようにする。あるいは、同じ母音の響きを起点にリズムを自然に崩して、飽きがこないようにする。それが、ラップにおけるライミングの役割です。

1番Aメロ:“刀ピー”でリズムの転換点を明示

刀ピークリスマスのテーマソング2022

その前提に立った上で、「刀ピークリスマスのテーマソング2022」のリズム・デザインを見ていきましょう。

各パートごとに歌詞を引用していますが、本稿では、音韻やリズム・デザインをわかりやすくするためにひらがなで表記(英語などは響きの近い母音で代用)しています。

トラックには、BigBadBeatsが提供するタイプビート「Party」(外部リンク)が使用されています(ピーナッツくんは音楽的に最先端のビートを探してくるセンスも凄まじいです)。

まずはAメロから。Aメロの大枠は、16ビートを基本にしたヒップホップの王道スタンダードなもの(参考記事:USヒップホップの潮流 Migos以降のトレンド「Scotch Snaps」のリズムデザインとは)です。拍の区切りは「|」、16分休符を「□」で表記しています。

I'm gonna fadeaway
消し去ってきなよそのデータベース
ふたりでしてる これは穢れ
寝汗をかくGentleman&Gentleman

|□□□□|□□□□|□□□□|あいごな|
へだえ□|□□けし|さってき|なよその|
でたべす|□□ふた|りでして|るこれは|
けがれ□|□□ねあ|せをかく|ぜためん|
ぜためん|□□えー|□□ぜっ|たいてき|

「刀ピークリスマスのテーマソング2022」1番Aメロ(前半)より

(実際にMVを流しながら上記のリズムを確認してください)

Aメロに入る1拍前(イントロ頭から数えて8小節目4拍目)から、勢いをつけるように食って入るピーナッツくんのラップ。

各小節、1拍目のド頭を「E・A・E(fadeaway、データベース、穢れ)」の響きで揃えてアクセントをつけています。フロウ(歌い回し)としても、この1拍目のド頭にアクセントが来ています。

リズム・デザインの観点から言えば、“消し去って~”“ふたりで~”“寝汗を~”と、各行の頭が同じ位置から始まっているのもポイント。1小節目から3小節目まで、同じパターンの繰り返しによってリズムがつくられていきます。

そして、3小節目の終わりから4小節目の頭を跨ぐのが、“Gentleman&Gentleman”という「E・A・E」の音韻2連打。1拍目にアクセントを持ってくるという流れを守りつつも、リズム・パターンを崩し、自然に次のブロックへと橋を渡していきます。

絶対的 刀ピーいまくるまる毛布
明日になれば消える魔法
闇夜照らした君のiPhone
No way 出荷状態にしとけよ

|ぜためん|□□えー|□□ぜっ|たいてき|
|とぴーま|くるまるもうふ□|あしたに|
|なればき|えるま□ほう□□|やみよて|
|らしたき|みのあいほん□□|のーえい|
|□□すっ|かぞーた|いにしと|けよ□□|

「刀ピークリスマスのテーマソング2022」1番Aメロ(後半)より

“絶対的”と食って入り、Aメロの後半に。前からの流れを活かし、フロウとしては、引き続き小節の頭(“刀ピー”“なれば”“らした”)にアクセントが付いてます。

特に“刀ピー”というキャッチーな単語は、文章表現としてメリハリをつけているだけでなく、明確にリズムの転換点であることをリスナーに示しています。

ライミングという観点から言えば、Aメロ後半の“まる毛布”(A・U・O・U・U)“魔法”(A・O・U)“iPhone”(A・I・O・N)は、同じ位置にあるもの、一見音韻が踏めていないように見える並びです。

しかし、“まる毛布”の“ふ”を子音しか発音しない、“魔法”の“ま”の後に16分休符を入れるなどの工夫を凝らすことで、可能な限り音韻の響きを揃えようとしています。

リズム・デザインとしては、Aメロ前半と同じく1小節目から3小節目まで同じパターンに揃えてリズムをつくり、4小節目でそれを崩すというもの。

これはあくまで筆者の考えなのですが、リズムを崩す王道のテクニックは、食って入るか、休符にするか。ここでは後者が使われ、“出荷状態にしとけよ”という(ツッコミどころも含めた)パンチラインに繋げています。

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