Web3はVTuberに何をもたらした? AI台頭にメタバース流行──2022年総括【新時代編】
2023.01.19
※本稿は、2023年に「KAI-YOU.net」で掲載された原稿を再構成している
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バーチャルYouTuber/ラッパーのオシャレになりたい!ピーナッツくんとバーチャルライバーグループ・にじさんじ所属の剣持刀也さんの2人による、一夜限りならぬ聖夜限りの祭典「刀ピークリスマス」。
クリスマスの夜に行われるコラボ配信の中、ピーナッツくんは毎年、剣持刀也さんへの愛を綴ったテーマソングを披露しています。
年を重ねるごとに上がるそのクオリティに、「刀ピークリスマス」を視聴するファンからの期待も高まるばかり。
ついに2022年の「刀ピークリスマスのテーマソング2022」は、剣持刀也さんが「ちょっと音楽性見せに来てる今回!」と笑いながらツッコみを入れるほどの出来栄えに。TikTokで大流行するまでになっています。
今回は、“HipなPop”を掲げラッパーとしても活動する筆者が、特にライミング(韻)をタイトに踏んでいた「刀ピークリスマスのテーマソング2022」1番のリズム・デザインを分析・解説。その評価の理由を紐解いていきます。
目次
- Q.ラッパーはなぜ韻を踏む? A.リズムをつくる/崩すため
- 1番Aメロ:“刀ピー”でリズムの転換点を明示
- 1番Bメロ:3連譜のリズムでサビへとタメ
- 1番サビ:「O・I・O・A・O」の5文字踏み
- ピーナッツくん「王道」のリズム・デザイン
そもそも、ラッパーはなぜ韻を踏むのでしょうか?
これは私見もありますが、ラップという歌唱法は音韻を揃えることでアクセントをつけ、それによって“リズムをつくる/崩す”ために生まれ、発展していったものだと考えられています(もちろん、文章表現・言葉遊びとして強調するという役割もあると思います)。
1970年代、アメリカのストリート文化をルーツとして誕生したラップの文化。約50年の歴史を経て数多の主義・流派へと派生していますが、その基本はビートに乗せてリズミカルに言葉を紡ぐことにあります。
ではリズムとは何か。やや抽象的な説明になってしまうのですが、リズムとは「同じパターンの周期的な繰り返し」。音楽においては、一定時間の間に似た音のまとまりが繰り返されることで、リズム(ビート)を生み出しています。
ビートに言葉を乗せる中、一定の周期で同じ母音の響きを発することでリズムをつくり、耳に残るようにする。あるいは、同じ母音の響きを起点にリズムを自然に崩して、飽きがこないようにする。それが、ラップにおけるライミングの役割です。
その前提に立った上で、「刀ピークリスマスのテーマソング2022」のリズム・デザインを見ていきましょう。
各パートごとに歌詞を引用していますが、本稿では、音韻やリズム・デザインをわかりやすくするためにひらがなで表記(英語などは響きの近い母音で代用)しています。
トラックには、BigBadBeatsが提供するタイプビート「Party」(外部リンク)が使用されています(ピーナッツくんは音楽的に最先端のビートを探してくるセンスも凄まじいです)。
まずはAメロから。Aメロの大枠は、16ビートを基本にしたヒップホップの王道スタンダードなもの(参考記事:USヒップホップの潮流 Migos以降のトレンド「Scotch Snaps」のリズムデザインとは)です。拍の区切りは「|」、16分休符を「□」で表記しています。
I'm gonna fadeaway
消し去ってきなよそのデータベース
ふたりでしてる これは穢れ
寝汗をかくGentleman&Gentleman|□□□□|□□□□|□□□□|あいごな|
「刀ピークリスマスのテーマソング2022」1番Aメロ(前半)より
|へだえ□|□□けし|さってき|なよその|
|でたべす|□□ふた|りでして|るこれは|
|けがれ□|□□ねあ|せをかく|ぜためん|
|ぜためん|□□えー|□□ぜっ|たいてき|
(実際にMVを流しながら上記のリズムを確認してください)
Aメロに入る1拍前(イントロ頭から数えて8小節目4拍目)から、勢いをつけるように食って入るピーナッツくんのラップ。
各小節、1拍目のド頭を「E・A・E(fadeaway、データベース、穢れ)」の響きで揃えてアクセントをつけています。フロウ(歌い回し)としても、この1拍目のド頭にアクセントが来ています。
リズム・デザインの観点から言えば、“消し去って~”“ふたりで~”“寝汗を~”と、各行の頭が同じ位置から始まっているのもポイント。1小節目から3小節目まで、同じパターンの繰り返しによってリズムがつくられていきます。
そして、3小節目の終わりから4小節目の頭を跨ぐのが、“Gentleman&Gentleman”という「E・A・E」の音韻2連打。1拍目にアクセントを持ってくるという流れを守りつつも、リズム・パターンを崩し、自然に次のブロックへと橋を渡していきます。
絶対的 刀ピーいまくるまる毛布
明日になれば消える魔法
闇夜照らした君のiPhone
No way 出荷状態にしとけよ|ぜためん|□□えー|□□ぜっ|たいてき|
|とぴーま|くるまる|もうふ□|あしたに|
|なればき|えるま□|ほう□□|やみよて|
|らしたき|みのあい|ほん□□|のーえい|
|□□すっ|かぞーた|いにしと|けよ□□|「刀ピークリスマスのテーマソング2022」1番Aメロ(後半)より
“絶対的”と食って入り、Aメロの後半に。前からの流れを活かし、フロウとしては、引き続き小節の頭(“刀ピー”“なれば”“らした”)にアクセントが付いてます。
特に“刀ピー”というキャッチーな単語は、文章表現としてメリハリをつけているだけでなく、明確にリズムの転換点であることをリスナーに示しています。
ライミングという観点から言えば、Aメロ後半の“まる毛布”(A・U・O・U・U)“魔法”(A・O・U)“iPhone”(A・I・O・N)は、同じ位置にあるもの、一見音韻が踏めていないように見える並びです。
しかし、“まる毛布”の“ふ”を子音しか発音しない、“魔法”の“ま”の後に16分休符を入れるなどの工夫を凝らすことで、可能な限り音韻の響きを揃えようとしています。
リズム・デザインとしては、Aメロ前半と同じく1小節目から3小節目まで同じパターンに揃えてリズムをつくり、4小節目でそれを崩すというもの。
これはあくまで筆者の考えなのですが、リズムを崩す王道のテクニックは、食って入るか、休符にするか。ここでは後者が使われ、“出荷状態にしとけよ”という(ツッコミどころも含めた)パンチラインに繋げています。
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