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  • 2023.01.08

キズナアイ活動休止、4年ぶり天使復活──2022年VTuberシーン総括【懐古編】

キズナアイ活動休止、4年ぶり天使復活──2022年VTuberシーン総括【懐古編】

クリエイター

この記事の制作者たち

2018年初頭からブームが続くバーチャルYouTuber(VTuber)シーン。

2017年末に流行の序章を迎えていたことを考えれば、バーチャルYouTuberブームの開始から5年を迎えたと言える。この5年の間でVTuberは5万人へと拡大。世界中にVTuberが存在し、世界中にそのファンがいる。VTuberの活動や身体性も多種多様なものになっている。

※VTuberは5万人:出典はmyrmeleon「VTuber統計ショートレポート2022.08.13」より、データが最新のものではないことに留意。また、インターネットサービスの分析などを行っている株式会社ユーザーローカルによると、現在の日本のVTuberが2万人突破というデータもある

2022年を振り返ると、ミライアカリさんや嫁ノ萌実さん、電脳少女シロさん、のらきゃっとさん、ピーナッツくんあんたまときのそらさん(ホロライブ)などのように活動5年を迎えるものもいれば、WEATHEROID Type A Airiさん、雪猫カゥルさんのように活動10周年を迎えるVTuberもいた記念的イヤーであったように思う。

また、パイオニアであるキズナアイさんがスリープ(無期限活動休止)。デビュー当時中学生だった花譜さんが高校を卒業し、8月には武道館ライブを開催。2018年に15歳で高校入学前後に活動を開始した東雲めぐさん、まりなすメンバーが成人するなど節目を感じるイベントも多かったように思う。

VTuberの1年を振り返る総括レポート、2020年では「激動」、2021年は「混沌」と表現された。2022年は3回に分けて振り返り、その第1回のタイトルを「懐古」と名付けた。

2022年は、混沌の2021年以上に混沌としていた。例に漏れず2022年も著名なVTuberの引退や卒業が多く、大きなゴシップや裁判沙汰があった。

VTuberはe-SportsシーンやTikTokを起点に、一般への浸透が広まった。テレビ朝日系『ガリベンガーV』が土曜日のゴールデンタイムに改変されるなど、VTuberそのものが影響力を増している。

2022年を振り返る本稿において、筆者は、長年活動するVTuberや、長年バーチャルYouTuberを見届けてきたファンたちが過去のVTuberの様子を思い思いに語る姿が最も印象的だったことで今回のタイトルに決めた。詳細は「4年ぶりの天使降臨 復古するバーチャルの世」にて詳しく解説したい。

ここからは日本のVTuberシーンに起こった事象を中心に、ごく一部ではあるが海外事情も含め振り返る。なお、AVTuberAVスプラの動向についてはAVTuber連載を確認いただきたい。

目次

  1. キズナアイの「おはよう」が聞こえなくなっても私たちはつながっている
  2. 「大正解だよ」批判される超美麗3D 送られた“祝福”
  3. 時代を始めたVTuber四天王と呼ばれた3人たち
  4. 一時代の終わり そしてVTuberのすべてが揃ったラストライブ
  5. 「キズナアイを生み出した人々」
  6. 春日望のInstagramに投稿された1枚のピンクの画像
  7. キズナアイの繋がりはまだ終わっていない
  8. キズナアイの技術はウタに引き継がれる
  9. ライブに注力するActiv8
  10. 4年ぶりの天使降臨 復古するバーチャルの世
  11. VTuberコミュニティは復活祭状態へ 思い出話でスペースが盛り上がる
  12. ニーツも復活 天魔機忍ver.Gのコラボ配信も
  13. 現実は小説よりも奇なり モデルとなったくるみちゃんを前にして
  14. VTuberの復活は他にも──まじかるどーるにMaya Putri
  15. Zero Projectの解散 白き新生「Chumunote」
  16. 注目トピックス! Part1

キズナアイの「おはよう」が聞こえなくなっても私たちはつながっている

キズナアイさんのスリープ(無期限活動休止)については、真っ先に触れるべきトピックだろう

キズナアイさんは「バーチャルYouTuber」の言葉を広める要因となったパイオニア的存在だ。ほぼすべてのVTuberに、何らかの形でキズナアイさんの遺伝子が受け継がれていると言っても過言ではない。

YouTube Japanでは、活動6周年となる2022年12月1日に「6年前のあるバーチャルクリエイターの登場をきっかけに『VTuber』コミュニティは今や世界中で賑わっています。」との文言とともに著名なVTuber数名をまとめたプレイリストをトップページにバナーで掲載。そのプレイリストの最初こそ、キズナアイさんの自己紹介動画だった(外部リンク)。

2021年に5周年を迎えたものの、12月にスリープ(無期限活動休止)を発表したキズナアイさん。その予告通り彼女たちは2月26日にオンラインライブ「Kizuna AI The Last Live “hello, world 2022”」を開催し、スリープをした。

キズナアイさんは最後の最後まで、楽しみ、挑戦し、仲間になったVTuberを忘れなかった。

2022年の彼女に関連した動向のなかで特に筆者が印象的だったものをいくつか取り上げる。

「大正解だよ」批判される超美麗3D 送られた“祝福”

1つ目は犬山たまきさんとキズナアイさんの対談コラボ「アイたま」だ。

【キズナアイ】スリープ前対談!#アイたま【犬山たまき】

犬山たまきさんは、現在はVTuber事務所・のりプロの運営をしながらも非常に高い人気を誇るVTuberでもある。彼女がこれほど注目されるようになるまでには、様々な苦労があった。

放送では犬山たまきさんが「ぼくはアイさんが寝た後もVTuber/バーチャルの世界で活動を続けていくわけなので、アイさんが起きた時に『こうなっておいてほしいな』とか僕に託したいことはありますか?」と質問。

それに対してキズナアイさんは「ない(笑)」と回答する一方、自分で事務所を設立し、仲間がいて、他のタレントも育成している犬山たまきさんのことが「素敵で、すごい羨ましい」と褒めた。

その言葉に犬山たまきさんは泣き始め、実写のような身体を放送に載せた「超美麗3D」を配信した時に「キズナアイがつくったVTuber業界を壊すな」と言われて申し訳ないと思っていたエピソードを話し始めた。しかし、キズナアイさんはこれについても「大正解だよ」と祝福したのだ。

当初キズナアイさんのような活動をする存在は他にもいたものの、雑誌『ユリイカ』でキズナアイさんが「『バーチャルYouTuber』というのは、もともとわたしが活動を始めるにあたって名乗った言葉だったんです」と語っていたように、「バーチャルYouTuber」を自認していたのは1人だけだった。

2017年末にキズナアイさんの動画がニコニコ動画に転載されたことをきっかけに、バーチャルYouTuberが流行。同誌でも語られている通り、キズナアイさんは自分に続く存在を次第に認め、輝夜月さんといった後続から「親分」と慕われるようになった

現在に続くVTuberシーンに、キズナアイさんはなくてはならないものだった。それを強く感じられるエピソードだと筆者は思う。

時代を始めたVTuber四天王と呼ばれた3人たち

キズナアイさんのスリープ直前、かつてバーチャルYouTuber四天王と呼ばれた5人のうちキズナアイさん、ミライアカリさん、電脳少女シロさんの3人が集まり、コラボ配信や動画投稿を行っていたことがある。

現在に繋がるVTuberシーンの中で、彼女らの影響力は当初は多大なものだった。そんな3人が動画や配信のコラボで話すのは、5年に及ぶバーチャルYouTuber史上初。長年キャリアを積んできた彼女らだからこそ出来る会話の数々が展開された。

「『VTuber』というものがここまで大きくなると予想していましたか?」というマシュマロにも丁寧に答え、「やっと一般にも浸透してきた」といった認識や最初期みたいに再び爆発的に伸びてほしいといった見解を示していた。ある意味「VTuber老人会」会員各位にとって目の離せない配信だった。

ま・・・?この3人で雑談配信!? #アイシロアカリ

一時代の終わり そしてVTuberのすべてが揃ったラストライブ

3つ目はもちろんライブだろう。ライブ中には、1820人のVTuberが壇上に登場。かつてコラボしてきたVTuberの数々がステージにあがって共演した。そこにはキズナアイさんから分人化したアイガーさんとloveちゃんの姿も。キズナアイさん、ミライアカリさん、電脳少女シロさん3人によるダンスコラボも行われた。

ラストにはキズナアイさんが背から翼のようにを生やしてどこかへと羽ばたく演出が組まれており、「バーチャルYouTuber」と呼ばれたカルチャーの一つの幕引きを感じた。

これまでの5年に及ぶ蓄積を音楽、自らの言葉で表現したラストライブ。Moe ShopやW&Wをはじめとする世界でトップレベルのコンポーザーが登場するのも、キズナアイさんのライブならではだった。

「キズナアイを生み出した人々」

キズナアイさんは沢山の人々やVTuberと繋がることでその存在感を示してきたが、そこには裏で支えてきた人々がいたことも忘れてはならない。活動から5年を経たラストライブの後にようやく、公に明らかになったことがある。それが「キズナアイ」の生みの親たちだ。

これまで「キズナアイ」というプロジェクトがどうやって生まれたか、立ち上げ当時誰が関わっていたかなどは明かされてこなかった。

しかし、キズナアイさんが無期限活動休止をする中で複数人が「自分はキズナアイの立ち上げに関わった」ということを明かしたのだ。

声をあげたのが、3DCGムービー製作ツール・MikuMikuDanceを使った動画制作者として知られるLiveCartoonのcortこと辻昇平さんだった(外部リンク)。キズナアイのプロジェクトが7人で始まったことなど新たな情報と思い出が語られている。

じゅんじのアイデアから始まり、次にたけしが、そして僕とほえたんが入り、そこからたくま、そーいち、ゆーじ が集まりました。「おやすみキズナアイ またねー! | ハッピーメイカー」より

そんな辻昇平さんによる文章が書かれた中で「キズナアイ」のアイデアを生み出した「じゅんじ」こと松田純治さんも声を上げた。タイトルは「キズナアイは確かに存在する」。今年バーチャルYouTuber(VTuber)について書かれたnoteの中で最も人気の高かった記事の1つだ(外部リンク)。

そこには、これまで明らかになることのなかった「キズナアイ」が生み出されるまで、バーチャルYouTuberではなくVTuberが流行し、結局皆「中の人」を見ているという嘆き。様々な感情や考えがその文章にのせられていた。

松田純治さんはその後、VTuberグループ・ますかれーどに携わり、現在はVTuberプロジェクト・こねくとぴあを運営している。

当時の仔細な経緯や胸中、こねくとぴあで何を実現するつもりなのかといったことはKAI-YOU Premiumのインタビューで語られている。また、11月には元輝夜月のプロデューサーのゼロサキさんとの対談も行っていた。

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