「ビジネスを最優先した人は残ってない」花譜プロデューサーが見つめるVTuber産業の未来図
2023.03.24
ラッパー・ハハノシキュウが挑むのは、2023年3月12日開催の「戦極MCBATTLE 第29章」両国国技館のレポート。
この日、優勝もとい最も自意識過剰だったのは誰なのか?
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俺のがヤバい 俺のがヤバい 俺のがヤバい 俺のがヤバい 俺のがヤバい 俺のがヤバい 俺のがヤバいMOROHA「俺のがヤバい
めちゃくちゃすげぇ暴論を言わせてもらう。
戦極29章を4行に纏めるとこうなる。
先攻一本目 GADORO
後攻一本目 MCバトル(ベスト8まで)
先攻二本目 梅田サイファー
後攻二本目 MCバトル(ベスト8から決勝)
「勝敗をつけるべきじゃない」と言う人がいるかもしれないが、やってる側は本気で戦ってると思う。
戦ってるってことは負けたくないってことだ。
ただ、バトルに出場してる側は「ライブ陣には負けられない」というところまで意識の範囲を広げられなかったと思う。
当然だが、目の前のバトルに集中していたはずだ。
逆にGADOROと梅田サイファーは「バトルそのもの」を食いにいく強い意志を感じさせた。
GADOROと梅田サイファー(R-指定を筆頭に)の「貪欲さ」「自意識過剰さ」「負けず嫌い」はバトルに出ていた時代よりも深く、それでいて研ぎ澄まされているように思えた。
「自分が一番じゃないと気が済まない」
そんな病的とも呼べる自己顕示欲が宿っていた。
GADOROも梅田サイファーもファン層がバトルから地続きになっている部分があり、ヒップホップをそこまでディグらないバトルメインのお客さんでも周波数を合わせられる。
ただ、この日の2組のライブは、観客が曲を認知してようがしてまいが関係なくロックする気概を持っていた。それは普段のライブでも当然のようにやっていることだから特別ではないのかもしれないが、この日ばかりはバトルを超えるライブパフォーマンスを見せつけようと躍起になっていたように思えてならない。
一応、僕も渋谷や下北沢の小箱だけどバトルイベントに“ライブだけで”出たことが何度かある。
結果から言うと惨敗だった。
お客さん(+バトルの出場者)の興味はほとんどバトルにしかなく、ライブはバトルの休憩時間と認識されていると言ってもいい。
僕が今より若く、人の話より自分の話を信じていた頃は、自分に興味がない観客が相手でも“ライブで”度肝を抜けると本気で思っていた。
端的に言うと、MCバトルにライブで勝てる。自分の力量をそんな風に過信していたのだ。
しかし、実際にステージに立ってみると自分という人間に興味を持たない人たちから、その冷めた目線を奪うということが想像を絶するほど難しいとわかる。
バトルイベントの主役はバトルだ。
しかしながら、ライブは「助演男優賞」すら獲れない。
それくらいの差を感じたのを覚えている。
だから、R-指定とGADOROというバトルを抜けた側の2人からすれば「主役を食いたい」と思うのは当然のことだろう。
結果としてどっちが勝ったのかはわからないし、それは現場に足を運んだお客さんが各々の価値観でテイクアウトするものだとは思うけど、善戦をしたのは間違いない。
「全体を通して今日のベストバウトを教えてください」
先攻一本目 GADORO
後攻一本目 MCバトル(ベスト8まで)
先攻二本目 梅田サイファー
後攻二本目 MCバトル(ベスト8から決勝)
この日のベストバウトはこの1試合だった。
そんな風にマクロな視点で形容できてしまう1日だった。
言い忘れていたが、これだけは言っておきたい。
僕もまたそんな「負けず嫌い」の中の1人だ。
外野からの参戦ではあるけれど、この文章で「優勝」をもぎ取りたいと思っている。(明言していないだけで、毎回僕はそう思いながらバトルレポートを書いている)
さて、この日、最も自意識過剰だったのは誰なのか?
目次
- 「バトルじゃなくたって戦ってるのさ」GADOROの戦い方
- 「戦極24章 日本武道館公演で『第一部完』ってことは」
- 横綱相撲? 土俵際からの見事なうっちゃり
- GADOROの残像をバトルで超えていかないといけない
- 18年振りの再戦 取り返したかった一勝
- レゲエからの刺客
- すれ違った人生観
- 「SATORUのリザーバー」の逆襲
- コードボールの行方を左右するもの
- 怒涛の韻が飲み込んだ「最適解」
- 「やっほー! 両国GAMIちゃんです!」
- 両国国技館に立つMCに求めるもの
- 梅田サイファーの「負けん気」
- 言葉に重みが乗るということ
- 命を賭けた「おもろい」
- 立ちはだかった、ラスボス以上の何か
- 「そう思わんとこのマイクは重すぎて握られへん」
- 一度も足を踏み外さなかった方が
- 勝ち気よりも優先されたもの
- 「戦極29章、食うなら肉っしょ」
- 倍速で16小節を2本、実質64小節を駆け抜けた異常
- 「めっちゃ観たっしょ自慢なら俺の方」
- そのライムは龍になるか
- 「バトル“に”勝つ」ための第一歩
- この日、最も自意識過剰だったのは誰なのか?
1.真っ黒い太陽
2.ここにいよう
3.Hot Town Blues -Remix-
4.ハジマリ
5.PINO
「真っ黒い太陽」から始まった彼のライブは「客演で輪入道が出てくるかもしれない」という期待感を孕んでいた。
GADOROの良いところは、曲を知らなくても初見でリリックがすいすい入ってくるところにあると思う。
それはある種MCバトルの延長線上にあるパフォーマンスなのかもしれない。リリックの構造がバトルライムに近いのもある。
バトルは全てを初見で理解させないといけない、そうじゃないと観客をロックできない。そんな世界を通過したからこそ要所要所にパンチラインを落としていく時の絶妙な呼吸が身についているのだと思う。
期待が集まる中、輪入道は登場せずGADOROのバースのみで曲が完結する。
「バトルじゃなくたって戦ってるのさ」
おそらくこのワンフレーズを落とすためにこの曲を選んだのだろう。
2曲目はニューアルバム『リスタート』にも収録されている「ここにいよう」。
新作をチェックしていた人とまだチェックしていない人との違いがわからないくらいに新しい曲でも観客を支配できていた。
GADOROと言えば内省的な曲が多く、ライブだと静かに聞き入るのが定番という印象があったが『韻贅生活』『リスタート』と、最近のアルバムはレゲエ寄りの明るい曲が増えてきている。
3曲目の「Hot Town Blues -Remix-」が始まると、イントロの時点で漢さんとCHEHONさんの顔がチラついてくる。
「真っ黒い太陽」で輪入道が来なかったから、全曲一人で歌い通すつもりなんだろうか。
そんな風に思わせておいてのGADOROの一言で一気に期待値が上がる。
「梅田サイファーにはこのメンツで対抗しに来ました」
そんな流れからの漢 a.k.a.GAMI登場だったため、会場はバトル前だというのに大きく湧いていた。
こうなると3バース目でCHEHONが登壇するのは必然で、会場の一体感は増していくばかりだった。
3月ということでGADOROが「ハジマリ」を歌うのも必然だったと言える。
10代のお客さんが多かったのもあって、この卒業ソングはしっかりと狙った場所に刺さっていたに違いない。
「次、武道館でやる時は全員で来てくれ」
その日が近いことを感じさせた一幕だった。
数秒の沈黙を奏でてから「PINO」のフックをアカペラで歌う。
前に観た時よりも歌が上手くなっている。
自身を「クズ」と自称している彼だが、日々慢心せずに努力を続けているのが目に見えてわかる。
そんな彼を僕は「クズ」とは呼べない。
「新しいアルバム『リスタート』から題名は二文字、簡単です。聞いてくれ『PINO』」
そんなMCを挟んでビートが流れる。
ごく自然にほとんどの観客がロックされていたと思う。一曲目からそうなるように、流れを彼がつくったのだ。
「これが最後の音楽だ、盛り上がってますか? 両国、楽しんでますか? 戦極」
そして1バース目の歌い出しを前に、こんな一言で国技館を湧かせる。
「バトル出とらんけど今日は俺の優勝でいいでしょ?」
少しだけ回想させてほしい。
2021年10月09日に行われた『戦極MCBATTLE 第24章 -日本武道館公演-』の成功から約1ヶ月。
この日、戦極主催のMC正社員から着信があった。
「シキュウさん、24章観てくれた?」
「いや、実は観てないんすよね」
確か、この頃は現場に行くのを極力避けていたし、今ほど積極的に配信チケットを買ってバトルを観ていなかった。自分のことで精一杯だったのもあるが、他人の夢が叶うところを素直に祝福できるほど僕はまだ大人じゃなかったんだと思う。
「DVDの紹介文書いてほしいから、観てくれないかな? まだABEMAで観られるから」
あまり知られていないが、たまに僕は戦極のDVDの紹介文を書かせてもらっている。
「なんか、珍しいっすね、自分から『バトル観て』って言うの」
「俺がこんなこと滅多に言わないのは付き合い長いからわかると思うけど、24章はシキュウさん喜ぶと思う」
「マジで珍しいっすね。自信あるんですか? 歓声なしなのに」
「自信ある」
実際に『戦極MCBATTLE 第24章 -日本武道館公演-』を観て驚いたのを覚えている。
「同じ部品でもネジの締め方で全く違うバイクになる」なんて話を聞いたことがあるが、この24章はそのネジの締め方が奇跡的だった。
「なんでこんな良い大会になったんすか?」
「俺も驚いてる。俺がバトルオーガナイザーを始めて、叶えたいと思ってた夢が叶った」
「これで『第一部完』ってことは『第二部』から昔みたいに好き放題やるんすか?」
この人はテレビ局に例えるならテレ東みたいな人だ。王道はもうやり切ったに違いない。
みんなが呆れるような変なイベントを昔みたいにまた始めるんだろうか?
この時はそんな風に思っていた。
第1試合は戦極21章のベストバウトの再戦から始まった。
満員御礼の両国国技館にはコロナ禍で封印されていた「3年分」の歓声が響き渡っていた
ここ最近のミメイくんの活躍から「今回はCHEHONさんにリベンジできるんじゃないか」という空気感があった。
戦極28章で優勝していることもあり、波に乗っているのが観客の反応でわかる。
ジャンケンに勝って先攻を選んだミメイからお手本のようなバースでの土俵入り、戦極29章が開幕する。
7小節目「土俵際」から韻を繋いで「前回王者のお通りじゃ!」と綺麗に8小節目で落とす。
両国国技館という場所から相撲ネタが多いのは予測できていたし、時事ネタとしてWBCの話題も当然のように織り込まれるだろうと思っていた。
そういうのも含めてミメイはセオリーから外れずにライムをバシバシと踏んでいく。
一方でCHEHONはまだエンジンがかかり切っていないように見えるが、後から見返してみると実際はそうではない。
僕の想像だが「勝ち筋」を頭に描いて登壇しているミメイに対して、あくまで「即興」で対応するために集中していたのだと思う。
「殺す覚悟」「予測不可能」「横綱相撲」と長めの韻を落としていくミメイに対して「いきなり横綱気取り?お前マジでシャベぇぞ、ほんまイケてんの?」と話の筋を逸さずにCHEHONがアンサーしていく。
お互い2本ずつバースを蹴った上で、内容の濃さで順当にミメイが勝つだろうという空気が流れ始める。
「横綱相撲、当たり前、戦極のチャンプを舐めんじゃねぇぞ」「どう考えても今日横綱なのは俺の方」と3本目もセルフボーストを欠かさずにバースを締める。
この時点でミメイの勝利だろうと目測を立てた人は多いと思う。
しかしながらCHEHONの3バース目で試合は大きく動く。
「知識がないから教えといたる、横綱ってのは一回優勝しただけではなれません。何回も優勝して優勝して勝ち数を重ねて初めてなるんです」
まさに相撲の取組のように追い詰められた土俵際からの打っ棄り(うっちゃり)が決まった瞬間だった。
この一瞬を逃さないように集中していたのが伝わってくる。
ミメイのプロップスが現在進行形で上がっていることは言うまでもない。でも、本人がそれを自分で言ってしまうことがマイナスに働いてしまった、そんな感触があった。
基本的に人は増長してる人間を応援しない、だから結果を残したという事実があっても増長は巧妙に隠さないといけないものだ。勝敗を分けた要因はそういう部分にもあったと思う。
勝者はCHEHONだった。
間髪入れずに第2試合が始まる。
SAMくんの復帰戦ということで、当然のように観客の期待が集まる。
両者とも遠目に見てもわかるくらい緊張していた。
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