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  • 2023.03.08

マレーシアから世界に届ける“オタク”のヒップホップ YouTuber・アーティストmiraie来日インタビュー

マレーシアから世界に届ける“オタク”のヒップホップ YouTuber・アーティストmiraie来日インタビュー

私の脳はいつも、中国語と英語とマレー語と日本語で考えています。だから中国語も英語もマレー語も日本語も、全部ヘタです」

華僑にルーツを持ち、マレーシアを拠点に英語で活動するmiraie(ミライエ)。国境を超えるインフルエンサーである彼には2つの側面がある。アニメ・ゲームを取り扱う“オタク"なYouTuberとして人気を博す一方で、hyperpop/digicoreシーンにてグローバルに音楽活動を展開するアーティストの顔がある。

もとよりhyperpop/digicoreシーンはアニメやゲームといった意匠を導入することが多い。特にパンデミック下に登場した10代のプレイヤーにとって、たとえばキャラクターボイスやゲームのサウンドエフェクトを楽曲に織り込むことは、よりリアルな自己像を映し出すような手法になっている。2000年生まれで16歳からYouTuberとして活動するmiraieは、そのような世代のアーティストにとって「ネットの“オタク”のセンパイ」とでも言うべき立ち位置にいるのだろう。

facade / blackwinterwells x miraie

断りなく“オタク”と形容しつつも、10数年前と比べればその意味するところは大きく変わっている、ということは承知の上である。だが筆者からすると、上の動画のような美少女アニメのコラージュや、他の動画で披露するフィギュアやポスター、キーボードなど多様なガジェット類を収集する様を見るに、ミライエは旧来的な意味での“オタク”として人気を集めているように思われる。

そんな「国際的な“オタク”」である彼が東京にやってきたのは、2023年1月のこと。5日間の滞在の目的は、2つのライブへの出演とVlogの撮影と、今回のインタビューだ(もっとも、1つのライブとインタビューは筆者が取り付けた予定であった)。

YouTubeでの活動について、日本について、マレーシアについて、アニメ、ゲームについて……。miraieのキャリアを点検しながら、hyperpop/digicoreシーンの音楽に連なる“オタク”像を追っていこう。

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目次

  1. YouTuberになった“オタク”
  2. きっかけは『osu!』
  3. 動画と音楽の収益で、マレーシアに家を買う
  4. トラックメイカーからアーティストへ
  5. 架空のラッパーによる“オタク”ラップ誕生
  6. hyperpopとの距離感
  7. 初めてのライブは日本で

YouTuberになった“オタク”

「小さい頃はいつも家族で、PlayStation2やXboxで『バイオハザード』をプレイしていました。最近では父がPlayStation5で、私がパソコンでお互い通信しながら『コール オブ デューティ』を、お母さんはSwitchで『ポケモンユナイト』を遊んでいます。家族みんなゲーム好きなんです

miraieが“オタク”になった経緯を聞くと、その原点にはゲームがあるのだという。一人っ子として育てられた彼は、両親と遊ぶテレビゲームを原風景として記憶している。

今もリリックを書いたりメロディを考えたりする時はゲームをします。ゲームをしていると、突然脳に歌詞が出てくるんです。だからDiscordにメモをとって、また続ける。制作のためにしっかり時間をとるというよりは、ゲームをしながらいろんなアイディアをセーブしています」

ゲームに遅れてアニメへの関心が生まれたのは、13歳の時のこと。学校で友人が話していた『ソードアート・オンライン』をゲームと勘違いして、ネットで調べたところが始まりだった。一度アニメを知ってからは、『中二病でも恋がしたい!』や『とらドラ』、『デート・ア・ライブ』などの作品を通して、その世界にのめり込んだ。

ゲームをしたりアニメを見たりすることを、先生や他の人は『悪い』と言う。子どもみたいだって。たとえば今あなた(通訳のステファン)が着ている初音ミクのシャツ、それ着てたら悪口を言われるよ。マレーシアは"変わっている"人に厳しいんです……みんな悪口が趣味(笑)。でも、だからこそオタクの友達はみんな家族みたいに仲がいい。それに、家に帰ると家族が教えてくれました。『他の人に迷惑をかけないなら、好きなことをすればいい』って」

彼が過ごした環境では、“オタク”的趣味への風当たりが強かった。だから学校から帰ると(マレーシアの学校は早朝に始まり、午後1時か2時には帰宅するらしい)、「他の人に迷惑をかけない」趣味に没頭するようになった。

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きっかけは『osu!』

そんなmiraieが憧れたのは、世界最多の登録者数を誇り、現在では日本に移住したYouTuber・PewDiePie(ピューディパイ)だった。

「毎日学校が終わったら、ピューディパイの動画を見ていました。私が16歳になった頃には、自分でも動画をアップするようになります。仕事や宿題ではなく、趣味についての動画です。ゲームやアニメを通じて、みんなが同じエネルギー──嬉しさや幸せな気持ち──で繋がることが、私のやりたかったこと。とにかく大事にしているのは、『Just FUN』ということです」

2016年に投稿を始めてから約1年の間、60本程度の動画をつくったものの、登録者数は数十人に留まっていた。内容は「(FPSの)トリックショットをリアルにやってみた」、「"俺の嫁"ベスト10」、「『Re:ゼロ』グッズを開封してみた」といったもの(※動画タイトルは筆者が要約)。

活動初期より投稿数が多く、ファンを獲得する大きな要因となったのは、『osu!』というゲームに関する動画だ。

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