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  • 2023.03.18

「ラッパーやめようと思ってた」アルコール依存になったAuthorityがBATTLE SUMMITで優勝するまで

「ラッパーやめようと思ってた」アルコール依存になったAuthorityがBATTLE SUMMITで優勝するまで

この国は今病んでる」これは1000万円という大金を手にした直後、Authorityというラッパーが日本武道館の壇上で叫んだ言葉だ。

村八分的な雰囲気の地元・青森を後にし、2020年に上京したAuthority。しかしAuthorityが直面したのは、東京と青森のあまりにも違いすぎる価値観、そして孤独感だった。

1000万円を獲得した「BATTLE SUMMIT」での華やかな優勝──しかし、そこに至る道程は険しかった。アルコール依存症に陥ったAuthorityの知られざる葛藤。

目次

  1. 青森が嫌で抜け出した、けれど──
  2. 酒に蝕まれていった日々…「リスカと変わらない」
  3. 「ドラッグは高い。金がない状態は人を変える」
  4. ラップ以外のことに、真面目に向き合えない。
  5. 「BATTLE SUMMIT」のオファーを断り続けていた理由は「ラッパーをやめようと思ってた」から
  6. アルコールを抜いて言葉を研ぎ澄まし、勝ち取った1000万円
  7. 「フリースタイルは自由なのに、求められる型が決まってきてる」
  8. どこまでも不器用。けれど、踏み出し続ける一歩
  9. 1000万円の使い道は、地元と仲間に

青森が嫌で抜け出した、けれど──

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「村八分的な雰囲気が嫌で東京に出てきたのに、東京は東京で雰囲気が逆過ぎて。それぞれ無関心すぎるというか。地元と東京との極端な差に自分自身がついていけなくなったんですよね」

Authorityは頻繁に、時に突発的に青森へ帰省した。だがやはり地元に帰ってもどこか自分は浮いたように感じられて、中途半端な居心地の悪さを抱えてきた。

「ガキの頃から一緒にいるヤツらのことはめちゃ好きなのに、東京で少しづつ価値観が変わっていく自分と遊んでも噛み合わないっていうか……それでまた東京に戻っても、結局孤独を感じてましたね」

辛い時間、悲しい時間も共有してきた地元の仲間たちとの絆も「もしかしたらあれも馴れ合いだったのかもしれない」という思いに苛まれ、Authorityは東京でドツボにはまっていく。

東京で出来た友達もいるにはいるが、辛い時間をも共に過ごしてきた地元の友達とは違って、気持ちが落ちているときには会いたくなかった。

「東京はモチベーションが高いヤツが多いから、調子良い時しか会いたくなかったっすね。カッコつけてるとかではないんですけど、あんまり同世代にはそういう姿を見せたくなくて。お互いにモチベーションが高くて相乗効果でさらに高められる友達なのに、落ちてる時には相手も会いたくないだろうし。その時に『これが孤独なんだな』って」

文豪・太宰治と同じく津軽出身。まだ20代そこそこだったAuthorityが青森から上京してきて自分のダメな姿をさらけ出すには、東京はエネルギーにあふれすぎていた。

「あんまり愚痴りたくなくて」。Authorityは、一回りほど年上のプロデューサーといった数名の信頼できる人物にだけ腹を割れていた。

「正直いまだに掴みきれてないっすね……東京でのスタイルみたいなものに」

酒に蝕まれていった日々…「リスカと変わらない」

東京上京を境に、Authorityはじょじょに酒に溺れていく。

ちょうどコロナ禍で緊急事態宣言が発令され、外出自粛要請が出されていた頃だ。いわゆるオンライン飲みや宅飲みという言葉がメディアを賑わせていた。アルコール依存症治療で有名な国立久里浜医療センターには、コロナ禍で電話相談が1.5倍(2020年の2019年比)も増えたと報じられた。

「もともと酒は好きなんですけど、東京に来てから依存症みたいになってしまって。最初は歩きながら酒飲んでる程度だったんですけど、段々とひどくなっていった。枕元にジャックダニエルを置いといて朝起きたらすぐ飲む、みたいな。仕事の前にも飲んじゃってたし。その辺りから、酒に対する認識が周りとズレてっちゃったんです」

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「リスカと変わらない」