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  • 2023.12.30

VTuberはグローバル化できるか? ANYCOLORにカバー、Brave groupの戦略

本稿では、諸外国でのVTuberシーンの2023年の動向について、2018年から継続的に注視し自らも海外のイベントに足を運んでいる「すら」氏に寄稿していただいた。

VTuberはグローバル化できるか? ANYCOLORにカバー、Brave groupの戦略

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2022年は、VTuber業界にとって象徴的な出来事がいくつか重なっていた。まず、先駆者であるキズナアイの無期限活動休止が全界隈に衝撃を与え、そしてその年の瀬にキズナアイの技術が引き継がれたウタがNHK紅白歌合戦で「新時代」を披露。

VTuberの新たな章を開くような、そんな終わり方だった。

2023年は、まるでそのバトンを受けとったかのようにVTuberシーンが新たな幕を開けることとなり、変化と成長の激しい1年間となった。

目次

  1. アメリカや韓国、タイ……増加するVTuberの海外イベント
  2. 英語圏でもVTuberは「飽和状態」の声 グローバル化への課題
  3. にじさんじやホロライブにはなかった、Brave group「V4Mirai」の戦略
  4. 元タレントの個人情報を晒し炎上/収益分配の内訳を明かして称賛
  5. 宣言通り海外での横展開を始めたホロライブの存在感
  6. 「公正な報道受けていない」海外ファンの不信が注ぐANYCOLOR
  7. 異世界アイドル(ISEGYE IDOL)が大ヒットした韓国の動向
  8. タイのVTuberシーン──Algorhythm Projectの台頭
  9. 世界で、男性VTuberが躍進しつつある
  10. 中国のVirtuaReal、トリリンガルVTuberがエージェンシー設立など
  11. 自分で見た目を選べる ノンバイナリーVTuberの可能性
  12. 横のつながりが世界的に加速していく

アメリカや韓国、タイ……増加するVTuberの海外イベント

2022年はおそらくコロナの様子を見ながらイベントが開催されていたが、2023年は堰を切ったように怒涛のイベントラッシュだった。

まるで数を競うように海外イベントに参加していたのは、もちろん国内大手VTuber事務所であるホロライブにじさんじである。

にじさんじはNIJISANJI ENでおなじみになったイベント「ANIME Impulse」に留まらず中国や韓国・東南アジアで、ホロライブは数えるのが億劫になるくらいアメリカや東南アジアで、どちらも様々なイベントに参加していた。

また、2021年から日本を拠点に粘り強く活動していた「Production Kawaii」がVTuberとして初めてのオンリーライブをアメリカで行い、翌日にホロライブが同じくアメリカでイベントを開催している。

もちろん、ホロライブやにじさんじ以外のVTuberが参加している海外イベントも増えている。

アメリカでは、英語圏のVTuberブームを牽引してきた「VShojo」やカナダを拠点に日本語も話せるタレントが所属している「Phase Connect」、ソニー・ミュージックエンタテインメントの傘下に入って話題になった「PRISM Project」、さらにShylily(しゃいりりー)さんといった知名度のあるENVTuberが様々なイベントに顔を出している。

また2022年から始まった「OffkaiExpo」もVTuberオンリーイベントとして、着実にアメリカでの知名度を築いている。

中国では毎年bilibiliが大規模なVTuberイベントを開催しているし、韓国でも韓国VTuberたちのライブが目立ち始めた。情勢がややこしいロシアでもついにVTuberがイベントに参加したり、アルゼンチンでもVTuberがライブイベントを行っている。

特にイベントが多すぎて数え切れないのが、温暖な気候の東南アジアだ。中でもタイは、タイの様々なVTuber企業に投資している会社が主催している「VFesta」が主となり個人VTuberも巻き込んで定期的に開催しているため、おそらくVTuberのイベント数は一番多い国なのではないかと思われる。

またアワードイベントでも、VTuberカテゴリーがチョイスされることも多くなっている。海外アワードでVTuberを取り上げる流れは2022年から目立ち、その年はVShojo所属のIronmouseさんや韓国系アメリカ人の3DVTuber・Codemikoさんが受賞していた。

そして2023年は初めてホロライブEnglishのGawrGuraさんが世界的なアワード「Streamy Awards」でVTuber部門賞を受賞することになり、アワードの裾野も広がっている。

英語圏だけでなく、ラテンアメリカの「ESLAND Awards 2023」やタイの「Thailand Game Show 2023」でもVTuberのアワードカテゴリーが設けられ、VTuberへの関心度が高まっていると感じさせてくれた。

英語圏でもVTuberは「飽和状態」の声 グローバル化への課題

日本のVTuber企業は、これまでに数々の挑戦を経て世界的な認知と成功を収めてきた。

2020年にはホロライブが大きな注目を集め、続いて2021年から2022年にかけてはNIJISANJI EN初の男性VTuberユニット・Luxiem(ルクシム)が躍進し、男性VTuberの活性化に貢献した。

こうした流れを背景に、2023年に入ると日本のVTuber業界ではさらに新しい挑戦が始まっている。その兆しが特に見られるのは、ホロライブを運営するカバー株式会社の谷郷元昭氏の発言で、VTuberカルチャーをもっと海外に売り込んでいく必要性を語っている

【VTuberビジネス、爆速成長の秘密】カバー谷郷社長

谷郷社長の危機感は、VTuberのグローバル化はこのままでは自然には達成されず、注力していかなければなし得ないという問題意識である

実際に、データにもその傾向は表れている。

Google TrendsのバーチャルYouTuber(VTuber)トピックのグラフは、2018年から2022年上半期まではトントン拍子に上昇していたが、2022年下半期を境に、検索される量が少しずつ横ばいになっている

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画像はGoogle Trendsより

それだけではない。筆者は2018年から毎日英語圏のVTuberニュースを観測していたが、「VTuber」という単語が盛り込まれたニュースは明らかに減少傾向にあって、2023年はVTuberの英語ニュースが報じられない週もそれなりに出てくるようになった。

英語圏ユーザーからも日本で一時期よく言われていた「飽和状態」という単語が出始めていて、もはや英語圏でも<アニメ・ゲーム・漫画>という切り口だけの情報拡散に限界が来ているのだと考えている。

あくまで日本の一例ではあるのだが、マイナビティーンズの調査「なぜJKは流行に敏感であるのか」にそのヒントがある。そこでは、女子高生が流行に敏感な理由として、比較的コミュニティ全体に情報伝達されやすいからだと語られている。逆に女子大生になると、共通の関心事をもつ人にだけ情報は共有されてコミュニティ全体に共有されなくなるという。

それで言えば女子高生的ではなくすでに女子大生的な情報の生態系に移行した英語圏において、アニメ・ゲーム・漫画好きのコミュニティでは、徐々に「VTuber」という存在の新しさは時間経過と共に失われている(日本もすでにそうなりつつあるが)。これまでとは異なる文化・分野にVTuberを売り込んでいかなければ、情報の新しい拡散は生まれないのではないか、というのが筆者の主張である。

そのコミュニティに訴求するためには、アニメ・ゲーム・漫画カルチャーだけでなく、VTuber✕文化・分野が今後重要になってくるかもしれない。

日本だとhololive DEV_IS(ホロライブ デバイス)の儒烏風亭らでん(じゅうふうてい らでん)さんの芸術に対する知識に裏打ちされた活動や星街すいせいさんの音楽活動がVTuber企業のそれに対する解決策だと考えている。

(ただしアニメ・ゲーム・漫画イベントへの参加が無駄というわけではなく、後述する韓国やタイのようにまだまだ未開拓な領域はある)

にじさんじやホロライブにはなかった、Brave group「V4Mirai」の戦略

特にそのことを察知して動き始めたのがBrave groupだ。

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