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  • 2024.05.31

「ホストの売掛金廃止は意味ない」歌舞伎町を知るラッパーとホス狂ライターのガチ本音

「ホストの売掛金廃止は意味ない」歌舞伎町を知るラッパーとホス狂ライターのガチ本音

トー横、闇カルチャー、立ちんぼ、頂き女子りりちゃん、パパ活、ホス狂──これらの言葉を、ニュースで見ない日はない。

新宿歌舞伎町という魔境を巡って、近年、痛ましい事件も増えている。

ルポ:トー横#2 路上売春”交縁”とは

結果、社会問題となってその闇にメスが入りつつある。その一つが、ホストクラブでの売掛金(女性客へのツケ)問題だ。

ホストに大金を貢ぎ、風営法を無視した個人間での売春や海外での出稼ぎなどでその穴を埋めてまた戻ってくる──そうした実態が問題視され、いよいよ歌舞伎町のクラブ側が売掛金廃止を行なっている。

繁華街の社会学を専門に『「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認』や『歌舞伎町モラトリアム』、『オーバードーズな人たち』などを次々と上梓したライター・佐々木チワワ

16歳でホストになって歌舞伎町の違法店舗で夜の世界に浸った経験を持つ異色のラッパー・釈迦坊主。その後足を洗ったものの自身のルーツとしてたびたびリリックにも表れている。

前編に続き、全く出自の異なる2人の目に映る、歌舞伎町のカルチャーについて。

目次

  1. 女性からホスト、ホストから反社会的勢力へ──問題にされてるのは金の流れ
  2. 「自分のケツを自分で拭けない人間が行っちゃいけない場所」
  3. どうせ死ぬから何をしても自由。ただ……
  4. 「歌舞伎町で遊ぶより、夢を追いかけるのがいいんじゃない?」
  5. 「じゃあ、歌舞伎町にしか居場所がない人間はどこに行けばいいの?」
  6. 法律を遵守するのか、アングラに潜るのか 大きな転換点
  7. 「居場所がない人にとっての居場所になるようなものを」
  8. 「傷つくのを避けたり、否定されるのを恐れる子がホストにハマるのはわかる」
  9. 自己責任論の、その先に
  10. 夢も目標もない人へ/やりたいことがある人へ

女性からホスト、ホストから反社会的勢力へ──問題にされてるのは金の流れ

──2023年末より持ち上がった売掛金の廃止について、2人はどのようにご覧になっていますか?

佐々木チワワ 売掛廃止の背景として、2023年12月にホストクラブの大手13グループと新宿区長で売掛金撤廃の話し合いが行われて、最終的に2024年4月から廃止という方針に決定しました。

いきなり完全撤廃を施行するのはホストクラブとしてもきついということで、1月から基本的に7割入金、2月は8割、3月は9割で4月からは完全廃止という風に、段階的にルールを施行する形式です。中にはROLANDさんのお店のように、先に完全撤廃を知らせる店舗もありましたね。

佐々木チワワ 結局、客と関係を築いているホストであればお金が足りない時は今まで通り個人の財布から貸してくれるだろうし、完全に撤廃されたというわけではない。それでも名目上は、信用がない子に売掛させることが極端に減るだろうとは思います。

売掛はある意味、ギャンブルのようなものなんです。「この女、ちゃんとお金を入れてくれるか飛ぶか」という賭けで、売掛させる。逆に、そういうヒヤヒヤ感で仕事のやる気を保っているホストもいますね。売掛がなかったら、ホストも女の子の面倒くさい話とかを聞かなくなるとは思ってます。

釈迦坊主 ホストからすると、売掛ができないと単純に売上を上げられないですね。何十万円という現金を持ち歩いて店に来るお客さんは、あまりいないと思う。

佐々木チワワ そうなると、今後は現金払いだけではない、クレジットカードが使える昼職の女の子が強いという流れにもなってくる※。個人的には、客側としても楽しい側面もあるし、売掛がなくなることは寂しいことだとは思いますね。

※風俗業の場合、クレジットカード会社の審査が通らずクレジットカードを持てない、というケースがある

──とは言え、多くの人は楽しいだけの側面に留まれず、様々な社会問題を背景に議論されてきました。トー横の未成年たちがホストに多額の金を注ぎ込んで借金に陥ってしまう問題があったり、立ちんぼが増えていることだと言われています。

釈迦坊主 実際には、トー横カルチャーの影響は一部でしかない気がしますね。

佐々木チワワ 大久保の立ちんぼやパパ活を含む、若い女の子全般の影響の方が大きいですよね。前編で話したような稼ぎ方の多様化によって、税金を納めていない若い女の子たちがすぐにそうした手段を取れるようになってしまっている。じゃあ彼女たちは何にお金を使ってるの? と言ったらホストに注ぎ込んでいる。

さらに言えば、ホストの中にはインターネットカジノ(実店舗にカジノゲームが設置されている違法カジノ)に入れ込んでる人もいる。結果的に、女の子がホストに貢いでるお金が裏社会に流れているんじゃないか、という疑惑も売掛廃止に繋がっていると思います。結局、問題とされているのはお金の流れ。

釈迦坊主 自分もめちゃくちゃインカジ行ってましたね。ギャンブルしないホストはマジで希少ですよ。賭け事をしないと言っているホストも、単に嘘をついているだけの可能性もあるし。

佐々木チワワ トー横は10代の未成年同士が楽しむ場所なので、お金の使い道もメンズコンカフェ(男性キャストによる接客、給仕が行われる女性向けのコンセプトカフェ)とか地下アイドルとかが主流。

それにトー横で遊んでたらお金が稼げないので、2、3万円は払わないと遊べないホストクラブに通うのは敷居が高い。だから、ホストにハマる子はトー横を卒業していくんですよね。

「自分のケツを自分で拭けない人間が行っちゃいけない場所」

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釈迦坊主 自分がホストだった時代にも、5000円で体を売ってるような立ちんぼの女の子たちも客としていましたけどね。でも、そういう子たちには、初回出禁とかお店側から制限をかけることも多い。ホスト業界からすると、立ちんぼの女の子から、大した売り上げには繋がっていないと思う。

佐々木チワワ 確かに立ちんぼはホスト業界としてマスの客層ではないですね。ただ、以前は立ちんぼをやるような人は風俗で働けないような子が多かったのが、最近は10代とか20代の普通にかわいい子が立っているんですよ。

なぜかと言えば、パパ活とかSNSの普及によって風俗のフリーランス化が進んできたから。例えばデリヘルが大体60分で1万円、本番行為で2万円のところを、立ちんぼなら3〜40分出れば1.5万円で2回転はできるから効率がいいし、お店を仲介しない方が割りがいい。

女の子たちがうまくお金を稼ぐ方法を突き詰めた結果、現状は「立ちんぼが一番効率が良かった」ということなんだと思います。社会からするとなぜそんなことを、と咎められるかもしれないけれど、彼女たちからすれば「ただの効率厨なんです」というだけの話。

──ただ、立ちんぼの女性が増加し、お店に所属せずフリーで稼ぎ、それでまたホストに貢ぐのは昔からあるししょうがないよねというだけでは、自己責任論的な現状追認ということになってしまうとも感じます。

佐々木チワワ リスクを負うのも自己責任と考える“自由主義”が、風俗産業にも入ってきたな、と。これまでは身体を売りたいごく一部の子たちが立ち回っていたけど、敷居が下がったからアホな子が「楽に稼げる」と思って痛い目を見るような業界になってきている

釈迦坊主 仮にお店に所属していても、色々な理由でがんじがらめになっている、ハメられてる女の子は沢山いるわけで。

フリーであろうとなかろうと自己責任だし、本質的な部分は変わらない。そもそも、歌舞伎町にいること自体が自己責任だと思いますけどね。

佐々木チワワ ニュースで流れる売掛問題の報道で、「娘が騙されたのは、『騙された側が馬鹿だった』で済まされるんでしょうか?」と親が会見しているのを見ても、「はい」としか思わないんですよね。他にも「親とか友達がいれば変わったのではないか」という意見を聞くけれど、その子は周囲のコミュニティが嫌だったから歌舞伎町に来たんじゃないの? と思う。

むしろ周りが「歌舞伎町から抜け出させることだけが幸せであり、正義だ」と思っていることの方が怖い。手取り20万円で親に感謝されるより、風俗で100万円を稼いで好きに遊べる人生の方が、その子にとっては楽しかった可能性もあるし、その子の選択を「正しい、正しくない」でこちらがジャッジすることがそもそもおかしいんじゃないかと。

もちろん悪質なホストもいるし、自己管理能力がなくて借金まみれになるケースもありますけど、大体の子たちは自分でコントロールできる範疇で通ってるような子が多い。

どうせ死ぬから何をしても自由。ただ……

──もちろん、最後は自分で選択し責任をとらなければなりません。ですが、お二人が言う通り、歌舞伎町という特殊な空間にいるうちに常識の線引きが曖昧になっていくということもある。「そういう場所に行ってほしくない」と発言する大人としての責任や、社会からの要請についてはどう思いますか?

佐々木チワワ もし自分の子どもが歌舞伎町に行くと言ったら一度は止めるだろうし、自分のケツを自分で拭けない年齢の人間が行っちゃいけない場所だとは思います。それは客側だけじゃなくて、ホスト側もそう

「自己責任だから好きにする」と言いながらお金がなくなったら親に泣きついたり、自分で払えない金額まで借金するような人間は、歌舞伎町に来るべきじゃない。

私はホストや風俗嬢の子たちが「自分たちは差別されている」という主張には違和感を覚えるんですよね。国民の権利を主張するのなら、そもそもちゃんと納税の義務を果たしてから言うべきだと思っているので。

水商売の人たちが普段はサラリーマンをバカにしてるのに、コロナ禍で稼げなくなったら被害者ぶっている状況を見ると、今まで自己責任を盾に好き勝手生きてきたのに、そこでは制度に頼るんだな、と。

──そもそも、制度や法から逸脱してビジネスをしてきたのに、ということですね。釈迦坊主さんはどうですか?

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「ぶっちゃけどうでもいい。けど、やりたいことがあるなら」釈迦坊主の提言