ケンドリック vs ドレイク vs Jコール──歴史的ビーフで激突する三者三様のヒップホップ観を解説
2024.05.09
クリエイター
この記事の制作者たち
イラスト評論「ネット絵学」プロジェクトを推進してきたイラストレーター・虎硬がおくる新連載「令和のネット絵学」。
今回は日本の美術教育について、受験生、大学生、そして教員と運営目線で、現状を分析する。
美大受験と言えば、近年では、美大生のリアルな姿を描いた漫画『ブルーピリオド』も話題になったが、コロナ禍で学生の数は減り、そしてまた増えてきている。東京藝大では実は、2024年度の志望者数は過去10年でも最多級となっている。
こういった現状を踏まえて、現場目線の分析を展開する。
目次
- 高まる美大人気、その背景は?
- 美大卒のクリエイター、実はこんなにいる
- そもそも美大ってなに? 美大原理主義とは?
- 予備校なくして合格なし? お金に時間に、美大受験の高い壁
- 大学教育は放置が基本 では「美大ってなんのために行くの?」
- 『ブルーピリオド』が描いてみせた”泥臭い格好良さ”
- 美大で学べるものの本質
- コロナ渦以降、フィジカルへの欲求が増えている
- 大学乱立により、文科省認可のハードルが上がる
- 海外からも注目される、日本の美術学校
- 今後の美術教育に求められること
イラストを描く人たちの進学先として、美術大学(以下、美大)は一つの選択肢になります。少子化が叫ばれる昨今ですが、実は2024年に新しいピークがきているのです。
東京藝術大学を例に挙げると、2024年度の志願者倍率は全体で12.5倍です。志望者数はこの10年での最多数とほぼ同じ数字となっています。イラストや絵画関係の学科に絞ると、日本画が15.6倍、油画が20.2倍、デザインが14.6倍と狭き門です。
しかしこれを読んだ美大受験経験者の方は、こう思ったかも知れません。「えっ!?少ない!」と。
そう。受験倍率で言うと、20年前、40年前と比べると大きく下降しているのは事実です。私自身も2005年に藝大デザイン科を受験して(落ちて)ますが、当時は約20倍だったと記憶しています。40年前の油画であれば50倍はあったかもしれません。この倍率の低さには、少子化や専門学校の増加などが関係しています。
受験者数は、2021年はコロナの影響で大きく落ち込みつつ、2023年にはコロナ以前から比べても上昇傾向に転じています。これは東京藝術大学に限らず、他の美大でもトレンドとなってます。
去年はAIイラストのコンテストで中止騒動が起きた武蔵美も、2024年度は受験者増になっています(参照)。
SNSでも美大生と思われる投稿が増え、各科の志望者数にも表れている通り、絵画系の人気は強いのです。YouTubeなどで無料で絵の描き方を学べる時代にも関わらず、美大に人が集まってきます。
私自身も美大受験を経験している人間なので、美大への憧れはよくわかります。
自分の世代で有名だったクリエイターは、東京藝大出身だと日比野克彦、村上隆、箭内道彦、会田誠、安倍吉俊……。多摩美術大学出身では松任谷由実、坂本慎太郎(元ゆらゆら帝国)、AC部、さいとうなおき……。挙げたらきりがありません。
ちなみに私の勤務先でもある京都芸術大学では、アニメ監督の幾原邦彦や山田尚子などを輩出しています。デザイナーや画家だけではなく、ミュージシャンや芸能人も多く、まさにクリエイターの卵が多数在籍しています。これは現在も続いており、若手イラストレーターで美大在学や出身の人も多くいます。今でもイラストレーターと話す時、出身校は盛り上がる定番ネタだったりもします。
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第6弾 LAM氏インタビュー⚡️
今年で独立5周年を迎えた、イラストレーター・LAMさん✨
実はLAMさんは多摩美術のOBで、更に在学当時は芸術祭の運営に携わっていたとのこと🫢❕
本記事では現在の進路に至った経緯や学校生活、当時の芸術祭についてお話を伺います☁️ pic.twitter.com/3BPkFlhn7M
— 2024年度多摩美芸術祭 (@tau_artfes) October 30, 2023
美大は美術に関する研究を行うところです。東京藝術大学、多摩美術大学、武蔵野美術大学などが有名です。東京藝術大学が「藝大」なのは、美術だけではなく音楽を学ぶ学部があるからです。
美大は首都圏にあるものが人気ですが、金沢美術工芸大学や愛知県立芸術大学、京都芸術大学、沖縄県立芸術大学などもあり、その地域に根ざした活動をしていることも特徴です。
また、日本大学などのいわゆる総合大学にも芸術学部があるところもあり、美術やデザインを学びたい学生の進学先にもなります。これらの大学を美大と呼ぶかどうかは人によって大きく分かれます。特に美大受験を経験した人は「藝大、武蔵美、多摩美以外は美大ではない」という原理主義者もおり、受験におけるヒエラルキーも存在します。
私の意見としては、美術の専門的な研究者が在籍し、学部と学科があればそこは美大として判断してよいと思っています。
美大は、大きく分けるとファインアート(油絵、日本画、彫刻など)とデザイン(グラフィック、空間演出、プロダクト、情報など)の2系統があります。前述の通り、油絵や日本画といった絵画系は人気です。デザインでは、グラフィックも人気で倍率が高いです。余談ですが2000年以降は「デザイン思考」という言葉が流行したためか、特にクリエイティブ系の専攻もない大学でも「〇〇デザイン学科/コース」という命名が増えました。
ファインアート系の学科とデザイン系の学科との違いは、学習内容だけではなく受験にもあります。多くのファインアート系の学科はいわゆる実技を重視して、学科試験(英語や現代文など)は確認しません。一方、デザイン系は実技と学科試験の割合が5:5で設定されているところが多いです。
もちろんAO入試、前期、後期など形態によっても必要とされるものは変わりますが、デザイン系を志望する場合は実技以外にも勉強ができなくてはいけないのです! 逆に言えば、勉強が得意な人は美大受験に際してアドバンテージが大きいです。
美大の実技試験は試験内容の専門性が非常に高いことから、専門の予備校に通わなければ合格が非常に難しいとされています。難関大学で予備校なしで合格した人は、少なくとも私の知人にはいません。ここが、一般的な学科試験のみの大学との大きな違いでしょう。
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