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  • 2026.06.25

ボカロ文化から見る『超かぐや姫!』──プロセカ、VTuberから繋がる“新たな歌姫神話”

なぜVOCALOID(ボーカロイド)ファンは、『超かぐや姫!』に熱狂したのか?──評論同人誌「ボーカロイド文化の現在地」の主宰・highlandさんによる寄稿。

ボカロ文化から見る『超かぐや姫!』──プロセカ、VTuberから繋がる“新たな歌姫神話”

VOCALOID(ボーカロイド)文化から見る『超かぐや姫!』

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Netflixアニメーション映画『超かぐや姫!』は、VOCALOID(ボーカロイド、以下ボカロ)をテーマに据えた作品ではない。少なくとも、物語の中心に初音ミクなどのVOCALOIDキャラクターが登場するわけではないし、ボーカロイド文化の歴史を直接描いた作品でもない。

公式の紹介文によると、本作は日本最古の物語『かぐや姫』と豪華ボカロPによる「新時代の音楽アニメーションプロジェクト」として位置づけられている(外部リンク)。

舞台は、誰もが自分の分身となるアバターをつくり、自由に創作活動を行える仮想空間「ツクヨミ」。そこで主人公の女子高生・酒寄彩葉は自作の音楽を奏で、月から来たかぐやがライバーとして歌う。また、酒寄彩葉の“推し”である月見ヤチヨは、ツクヨミの管理人であり大人気AIライバーでもある。

つまり本作は、古典の『かぐや姫』を換骨奪胎し、インターネット、アバター、配信、音楽制作、ライブといった現代的なモチーフで彩った作品である。

Netflixアニメーション映画『超かぐや姫!』メインビジュアル

Netflixアニメーション映画『超かぐや姫!』メインビジュアル/画像は『超かぐや姫!』公式サイトより

それにもかかわらず、『超かぐや姫!』はボカロファンから大きな支持を得ている。SNS上でも、本作をボカロ文化との接続から受け止める反応が目立った。

理由は、単にryoさん(supercell)、kzさん(livetune)、40mPさん、HoneyWorksAqu3raさん、yuigotさんといった著名なボカロPが参加しているから、あるいは「メルト」「ワールドイズマイン」「ray」などの名曲が使われているから、というだけではない。

もちろんそれらは要因として大きいが、本作がボカロファンの感覚に深く入り込んだのは、表層的な引用の量によるものではない。“ボカロ文化の存在論”が作品全体に物語として組み込まれてるからだ。

目次

  1. 『超かぐや姫!』に見る“ボカロ文化の存在論”
  2. 『かぐや姫』を“インターネットの歌姫”に変えるボカロ的想像力
  3. 「メルト」「ワールドイズマイン」は懐メロではない
  4. 『プロセカ』との比較──ボカロ曲を「物語の感情」に変える手法
  5. VTuber文化との比較──カバー曲はキャラクターの履歴書になる
  6. 『超かぐや姫!』のプロモーションは、ボカロ文化的だった
  7. なぜ「ray」が『超かぐや姫!』のEDテーマに選ばれたのか
  8. BUMP OF CHICKENという補助線──ファンタジーと思春期の接続
  9. フリーライドではなく、継承としての引用
  10. 『超かぐや姫!』がボカロファンに刺さった本当の理由

『超かぐや姫!』に見る“ボカロ文化の存在論”

ここで言う“ボカロ文化の存在論”とは何か。

初音ミクは、現実の身体を持つ歌手ではないが、現実の音楽文化を大きく動かした。

彼女は人間ではないが、単なる道具でもない。キャラクターであり、ソフトウェアであり、歌声であり、創作者たちの共同制作の場でもある。初音ミクを開発したクリプトン・フューチャー・メディア社がCGM型コンテンツ投稿サイト「ピアプロ(piapro)」を立ち上げてキャラクター利用ライセンスを整備したことによって、二次創作の連鎖が生まれた(外部リンク)。

つまり初音ミクは、少数の作家によって供給がなされるキャラクターではなく、無数のクリエイターが歌わせ、絵を描き、動画をつくることで成り立つ存在だった。

初音ミク

初音ミク/画像はピアプロキャラクターズより

『超かぐや姫!』のかぐや、酒寄彩葉、月見ヤチヨの関係は、この感覚にかなり近い。酒寄彩葉は音楽をつくり、かぐやは歌う。AIライバー・月見ヤチヨは仮想空間の管理人であり、トップライバーであり、そして物語の真相としては、月人であるかぐやと重なり合う存在として現れる。

ここには、つくり手と歌い手/プロデューサーとシンガー/現実の人間と仮想空間の歌姫という関係が織り込まれている。ボカロファンはこの構図を、ほとんど直感的に受け入れることができる。なぜならそれは、ボカロ文化が十数年かけて繰り返し経験してきた関係だからである。

KAI-YOUのインタビューにて、山下清悟監督自身も、月見ヤチヨについて「髪型といい実体を持たない電脳空間の歌姫という設定といい、かなり初音ミクと類似点のある存在」と語っていた。

さらに、スタッフが「ガッツリボカロ世代」であること、そのためにボカロPとの組み合わせへ向かったことも明かしている。これは重要だ。

『超かぐや姫!』におけるボカロ性は、後から話題づくりのために付け加えられたものではない。作品の企画とキャラクター設計の深い部分に、すでに“電脳空間の歌姫”という想像力が入り込んでいたのである。

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