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  • 2021.06.19

「ボカロはニコニコのものではない」ニコニコ代表・栗田穣崇が語るボカロ文化の今

「ボカロはニコニコのものではない」ニコニコ代表・栗田穣崇が語るボカロ文化の今

VOCALOID(以下ボーカロイド、ボカロ)が巻き起こした、創作の連鎖。それを「場」として支えたのが、株式会社ドワンゴが運営するニコニコ動画というサイトだ。

ボカロブームの火付け役でもある「初音ミク」が販売された2007年当時、すでにニコニコ動画は個人が動画作品を投稿する場として一定の地位を確立しており、CGM/UGCプラットフォームの先駆けとなっていた。

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現在の「ニコニコ動画」

ニコニコ動画がなければ、ボカロはここまで浸透しなかった。そう断言しても差し障りがないくらい、誰が見てもニコニコ動画とボカロ文化は蜜月の関係にあった。ライブ感のあるコメント、ジャンルを横断するタグ機能、クリエイターの競争心をくすぐるランキング、そして二次創作というカルチャー……ニコニコ動画に、同人音楽が育つ土壌がそもそもあったことも大きい。

あれから14年。ツールの進化、YouTubeの拡大、プラットフォームの乱立といった業界全体の変化を追い風とし、ボカロ文化はついにニコニコ動画を飛び出して、普遍的な音楽文化となりつつある

連載第二回となる今回は、ドワンゴ専務取締役COOの栗田穣崇さんにお話を伺う。「みんなのもの」となっていったボカロに対して、今ニコニコ動画の代表は何を思うのか。

「ボカロを取られた」とは思っていない

──2020年代に入ってから、さらにボカロ文化の広がりが加速している印象です。リスナー層も広がり、パワフルな新人クリエイターもたくさん生まれています。栗田さんはもともと、ボカロ文化をどのように注目していたんでしょうか?

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栗田穣崇さん 取材はリモートで行われた。

栗田穣崇(以下、栗田) 僕がニコニコ動画を見るようになったのは、ボカロが起点だったんです。ちょうど2007年末、黎明期に起きた最初のボカロブームの頃で、当時の曲はほぼ全てリアルタイムで聴いていました。もともとEDMが好きで、当時のボカロ曲にもそういう傾向があったじゃないですか。それこそsamfreeさんとか、デッドボールPさんとかが好きでしたね。

──ドワンゴに入社されたのが2015年とのことなので、ボカロが出てきた頃は、まだニコニコの中の人ではなかったわけですよね。栗田さん個人の視点から見て、なぜニコニコ動画でボカロが一気に広がったと考えていますか?

栗田 ニコニコ動画では、コンテンツが二次創作されて、どんどん分化していきますよね。その広がりとボカロがかみ合って、みんなで盛り上がれる面白さに繋がっていたんじゃないかなと思います。

曲を聴いて終わりではなく、それを踊る人や歌う人が出てきて……当時のJPOPを追っているだけでは体験できない、曲が生きて動いているような感覚。それがすごく新鮮で、それまでそんな音楽の楽しみ方ってなくて、自分にとっても印象的でした。1つの曲で何度もおいしいみたいな。

──ボカロ曲をお題として、いろんな派生作品が生まれましたね。

栗田 そう、原曲を軸に何回も楽しむことができた。初音ミクがネギを振るのもそうですけど、いわゆる「ミーム」が生まれて、そのネタが通じる同士で盛り上がるような側面もありました。

──今ボカロカルチャーは、YouTubeやTikTokなどニコニコ動画以外のプラットフォームでも盛り上がっていますが、それはどのように受け止めていますか?

@mananchos

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♬ グッバイ宣言 - Chinozo

栗田 ボカロ文化が、本当に一般的なものになったんだなと思っています。「ボカロ」という言葉の定義も曖昧になってきていますよね。

そもそもボカロってYAMAHAさんのソフトだけを指していたはずなんですが、今や音声合成ソフトじゃないものに使われる場面まであるし。YOASOBIとか、Adoさんもたしかに広義のボカロ文化の方々かもしれないけど、今それを聴いている若年層は特段ボカロであるとか意識せずに、純粋に自分たちの音楽、かっこいい音楽として聴いていますよね。

投稿している側にも、最近は10代後半から20代の若手がすごく増えたなという印象です。昨年ヒットした『KING』のKanariaさんも19歳と公言されています。

再び盛り上がっているではなく、「世代交代が起きている」

──Adoさんは18歳、物心つく頃にはボカロがあった世代ですね。

栗田 そういうクリエイターが増え、光も当たるようになっていて、ボカロの未来は明るいなと思います。なので、「今ボカロが再び盛り上がっている」というより、「世代が変わっていっている」という感覚の方が強いんですよね。

──他のプラットフォームでボカロが盛り上がっていることについて、「ニコニコのものを取りやがって」とは思いませんか?

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