Interview

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  • 2019.10.19

大石昌良を音楽に繋ぎ止めた“ロック界の奇行師”

若かりし時代、同じ道を志した仲間の存在。

それは懐古主義的にではなく、ある瞬間──とりわけ、挫折しそうになった時──には、自分を支える“よすが”ともなり得る。

大石昌良による対談連載。神戸時代を知る旧友との邂逅。

大石昌良を音楽に繋ぎ止めた“ロック界の奇行師”

(左)アルカラ・稲村太佑さん(右)大石昌良さん

作家としてもシンガーとしても活躍し、もはやその名を聞かないクールはなくなったほどの人気を見せる大石昌良さんのキャリアは、バンドからはじまった。

ボーカルを務めるロックバンド・Sound Scheduleは、1999年に神戸で結成し2001年にメジャデビューと共に上京するも2006年に解散。その後2011年に再結成し、現在も活動を続けている。

これまでの対談でも断片的に語られてきた大石昌良のバンドマン時代だが、ルーツを同じ神戸に持ち、大石昌良をして"親戚"と言わしめるほどの近さからバンドマン時代の彼を知る存在がいた。

稲村太佑、「ロック界の奇行師」の異名をとるロックバンド・アルカラのボーカルとして、ロックシーンの一線で活躍するミュージシャンである。

現在でこそアニソンとロックという違うシーンで活躍する二人だが、かつては同じライブハウスでバイトをし、神戸の街を飲み歩いては騒ぎを起こすという青春時代を共に過ごした間柄。

Sound Scheduleの場合はバンドの解散、アルカラの場合はメンバーの脱退など、それぞれ致命的な出来事に直面しても音楽を続けてこられたのは、フィールドこそ違えど一線で活躍している互いの存在があったからだという。

電話1本でいつでも集まれるほどの昔から親友。それが今でも共に商業のシーンで音楽を続けられているという関係は貴重だ。そんな二人が繰り広げる対話の1本目は、その大部分が思い出話になっているが、二人の現在を形づくった確かな源泉も感じさせるものになっている。

ホスト:大石昌良 ゲスト:稲村太佑 取材・執筆:オグマフミヤ 撮影:I.ITO 編集:新見直

目次

  1. ライバルは在野武将になっていた
  2. 刺激し合う仲間の存在
  3. サウスケと違うやり方を見つけなくちゃいけなかった
  4. 踏みとどまれたのは、アルカラがいたから

ライバルは在野武将になっていた

──これまでは現在の活動に近い領域の方々をゲストに呼んできましたが、今回は大石昌良さんを古くから知り、現在もバンドシーンの一線で活躍されるバンドマン・アルカラの稲村太佑さんをお招きしました。

大石 20年来の大親友なのに、改めてこういう場で喋るのは恥ずかしい(笑)。

稲村 酒も飲まずに、こんな斜めに向かい合ってね(笑)。

大石 俺とたいちゃん(稲村さんのこと)は神戸で出会って、同じ時期に同じライブハウス(神戸ART HOUSE)でバイトしてたこともあるから親戚みたいな感覚なんです。

ジェームスノイズって伝説のバンドが神戸にいて、そのボーカルとベースがアルカラに、ドラムがSound Scheduleになったので、元々同じバンドだったことを考えると本当に親戚みたい。

稲村 ジェームスノイズが親会社みたいな感覚やな。

大石 各々でバンド活動をやってたけど、俺らが2001年にメジャーデビューして、先に上京することになったんです。

稲村くんは神戸でライブハウスのブッキングマネージャーをやりながらバンドを続けていて、アルカラを組んでからガーッときたけど、アルカラがロックシーンに登場する頃にはSound Scheduleは解散していて(2006年)、入れ違いみたいな形になってしまった。

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稲村 まーくん(大石さんのこと)に追い付け追い越せって気持ちでやってたのに、いざ追い付いたと思ったら彼は、三国志でいうと在野武将になっていてビックリしたよ

※在野武将 特定の仕官先を持たない武将のこと

大石 俺が先にメジャーデビューしたから、自分が音楽シーンを盛り上げていくんだって気持ちがあったんだけど、気づけばアルカラというバンドがめっちゃ勢いづいていて、大きいフェスにも名を連ねるようになっているのを見て、正直な話、悔しいと思ってたんだよ。

たいちゃんに対しては、ライバルであると同時に、自分に持ってないものが多すぎるから羨ましい気持ちもあるんだよね。

稲村 まーくんだって一度は在野武将になったけど、類い希なる実力を買われて、今やあっちらこっちらで才能を輝かせてるのを見て、俺は羨ましいと思ってるよ。

──同じ神戸で活動をはじめた二人が、お互い羨ましいと思えるほどの規模で活躍してるのは改めて考えるとスゴいことですね。

稲村 (神戸のライブハウス)アートハウスで一緒にバイトしてた当時は地元の同い年で集まって、「ハタチーズ」なんて言ってたんです。

大石 みんなまゆみちゃんて女の子が大好きでね(笑)。

稲村 そうそう、そんなやつらが、東京に出てきて音楽続けられてるって確かにスゴいよ。

大石 俺はやっぱり焦るんだよね。たいちゃんは同い年で同じライブハウスでバイトしてたから、同じ歩幅で歩んでると思ってたのに、気づいたら前の方で霞んで見えるようになっていた。

稲村 そう思うときは俺にもあるよ、でもいつもこう考えてる。…本当は今思いついたんやけど(笑)。

冬のオリンピックでやってるスピードスケートってあるやん。

あの競技だとコーナーを曲がる都合上、内側か外側かによって、一瞬を切り取ると大きな差がついてるように見えるけど、何周かしたらその差がなくなったりしてる

同じようにライブハウスってシーンで見たら、アルカラの方が勢いあるかも知らんけど、まーくんのアニソンとかのフィールドになったら俺たちは太刀打ちできない。

大石 その話おもしろいね、あるワンシーンを切り取ると遅れて見えても、長期的に見たら並んでたり追い抜いてたりすると。

稲村 ちょっと前に見えてるおかげで、こっちも走らな! と思えるし、逆にあいつ後ろおんな! って油断してたらそんなことなかったりする。

でも二十歳の時はまゆみちゃんを取り合ってた俺らが、今ではこうして音楽でしのぎを削ってるって燃えるよな。この思い、まゆみちゃんにも届いてほしい(笑)。

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刺激し合う仲間の存在

──その頃のお仲間で、他にも音楽で活躍されている方がいるんでしょうか?

大石 今は楽曲提供や作詞家として活躍している高木誠司という人間がいるんですが、彼も仲間です。

年間の作詞家ランキングに入ってたりして、その道ではかなりトップにいる。俺でいうアニメソングのように、自分がフィットするフィールドを見つけて活躍していて、仲間として胸が熱くなりますね。

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