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  • 2020.02.21

『けいおん!』から『リゼロ』まで 時代を跨ぐ稀代のヒットメイカー

音楽家・大石昌良をアニソン業界に引き込んだ張本人にして盟友・Tom-H@ck。

2人の公開対談を特別公開。互いの印象的な楽曲から海外市場まで、様々な角度からアニソンを紐解く。

『けいおん!』から『リゼロ』まで 時代を跨ぐ稀代のヒットメイカー

(左)大石昌良(右)Tom-H@ck

連載「音楽にも物語を」では、アニソンシンガー・オーイシマサヨシとしての顔も持ち、作家としても活躍を広げる大石昌良さんと様々なゲストによる対談をお届けしてきた。

そもそもこの連載は、4年前に行われたオーイシマサヨシさんと音楽クリエイター・Tom-H@ckさんによるユニット「OxT」へのインタビューでの「アニソンが物語を失っている」という発言に端を発している(関連記事)。

前衛的な楽曲が増えすぎて視聴者を置いていきがちなシーンをそう嘆いた二人は、その後も目覚ましい活躍を続け、各々個人としてもユニットとしてもシーンの最前線をひた走り、今日へ繋がる新たな流れを生み出してきた。

当時から4年が経過した2020年現在。声優による音楽ライブは未だに数を増やし続け、ドームクラスでのイベントも珍しくなくなった。またアニソンをクラブで楽しむイベント「アニクラ」が流行し、アニソンの新たな聞かれ方も生まれ始めている。そうして変化し続ける環境の中で、アニソンは物語を取り戻すことはできたのだろうか?

幅広いジャンルのゲストを招いてきた「音楽にも物語を」。1年の節目を迎えるこのタイミングで原点へ立ち返り、大石昌良さんとTom-H@ckさんによる対談をお届けする。

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2020年2月4日に行った公開対談の様子。司会はKAI-YOU Premiumの新見直

※本対談は、2020年2月4日に公開対談という形で開催したトークイベントおよび当日公開できなかった事前アンケートへのご回答を元に、原稿として構成した内容となる

ホスト:大石昌良 ゲスト:Tom-H@ck 取材・執筆:オグマフミヤ 撮影:I.ITO 編集:新見直

目次

  1. アニソンは物語を失ったままなのか
  2. お互いを語る上で欠かせない曲
  3. 海外はアニソンにとってのフロンティアとなりうるか
  4. 収録で魔法が起きる条件
  5. 続きを読む

アニソンは物語を失ったままなのか

──手数や転調の数を競うような奇抜な音楽が増え、物語性のあるアニソンが減っていることを憂いて「アニソンが物語を失っている」とお2人が仰ってから4年が経ちました。

大石 当時はワチャワチャした電波ソング的なアニソンが全盛の頃で、深みと物語を感じさせる楽曲がとても少なかった。そうは言いながらも、Tomさんはアニソン界にその流れをつくり出した張本人でもありますけども。

Tom 時代を変えた天才と言われていますからね(笑)。

──そこから現在に至るまでにも多くの名曲が生まれ、シーン全体の様子も大きく変わったと思いますが、まだアニソンは物語を失ったままなのでしょうか?

大石 今は再びアニソンが物語性を持つ流れになっていると感じます。曲を聴けば作品の世界観もイメージできたり、曲調も奇抜なものではなくポップスとして勝負できそうなキャッチーなものも増えてきた。

加えて、作品の背景に物語があるケースも増えてきました。

たとえば『ラブライブ!』のような、アニメになるまでにプロジェクトとしての歩みがあったり、声優さんたちのライブとしてのドラマがあったりする作品は、アニメの主題歌としての文脈に加えて、ライブで披露されていくうちに楽曲に物語が付加されていくこともありますよね。

お客さんのリテラシーも上がってきていて、アニソンでも純粋に音楽として評価されるので、つくる側の我々もより音楽性の高いものをつくらないといけなくなってきている。

Tom 僕がアニソンに関わるようになった約10年前は、声優をやりながらアーティストとしても活動する方々がものすごく人気な時代で、僕や大石さんのようなアーティスト一筋でやっている人間は少しずつ業界に絡み始めていた頃でした。

それが徐々に広がっていくにつれてお客さんもアニソンを音楽として聞いてくれるようになり、今日こうして集まっていただいた方々のように、アニソンの成り立ちにまで興味を示すような玄人なファンの方々も増えてきた。そうしてユーザーリテラシーが上がってきているので、アニソンというフィールドでもいいものはいいと評価されるようになってきたなと感じますね。

大石 お客さんのレベルは近年本当に上がってきていて、もはや”プロ客”ですよね。たとえばライブなどの現場においてもそうだと思うんですが、過激なコールの是非が議論されているように、よりよい現場の雰囲気を主体的に作ろうと考えている方々はたくさんいる。それだけ真剣に音楽を聞こうとしてる方々がいるのは、我々アーティストとしてもものすごく心強いですよ。

Tom …誰1人笑ってないですけど、僕たちこんな真面目な話だけしてていいんですか? 普段のステージとのギャップが…

大石 安心してください、今日はそういう回ですからね!

──真面目なお話をする前提で、お客さんにもお集まりいただいているので大丈夫です!

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隙あらば戯れるTom-H@ckさん

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