Interview

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  • 2020.04.17

インターネットという島は、J-POPという本土と繋がった

J-POP、アニソンシーンで起きているめまぐるしい変化。

そして、その変化にいち早く適応しているのは、実は受け手なのではないだろうか。

インターネットという島は、J-POPという本土と繋がった

多くの共通点がありながら、互いに好対照でもある大石昌良さんと堀江晶太さん。

インターネット発のシーン、洋楽との距離感、新型コロナウイルスが興行に与えた衝撃と価値の転覆。今、そこで起きている変化について、その渦中で見つめ続けるクリエイターが丁寧に言葉にする。

2人の対談を締めくくる、示唆に飛んだ話題の数々。

ホスト:大石昌良 ゲスト:堀江晶太 取材・執筆:オグマフミヤ 撮影:I.ITO 編集:新見直

目次

  1. インターネットは、孤島ではなくなった
  2. クリエイターは自営業主という意識を持たなければ
  3. ライブハウスに”行けない”ファンの存在
  4. J-POPの波はアニソンに影響を与えうるか
  5. 境界が混ざり合う時代に
  6. サイン入りチェキをプレゼント!

インターネットは、孤島ではなくなった

大石 今はネットをルーツに持つクリエイターがJ-POPのシーンで活躍するのも当たり前になってきてるよね。でもボカロがジャンルとして確立されてはいるものの、黎明期に比べると落ち着いている感じもするし、歌い手と呼ばれる人たちもYouTubeに移行してきていたりと、ネットの音楽シーンにも大きな変化が訪れているのも感じる

堀江くんはネットカルチャー出身のクリエイターで、ずっとバンドをやっていた僕からすると新しい時代の人だなと思っているんだけど、そういうシーンの流れをどう見ているのかな?

堀江 僕は確かにネット出身ではあるんですが、今の時代のネットで戦ってる人たちは僕から見ても新人類です。その世代の人たちに曲を提供したり一緒に仕事をすることもあるんですが、感覚はまるで違います。

たとえばよく話す(ヨルシカの)n-bunaくんがそうなんですが、自分とは手法やセンスが全く違っていて、僕らは一世代前の人間なんだなって感じさせられるんです。

大石 堀江くんですらそうなんだね。

堀江 ボカロが始まったころは、なにもない海にボカロという島が急に発生して、なんかすごいらしいと人が集まって独自に発展していったのですが、今はその島が本土とつながっているような感覚です

新しい世代の人たちは、インターネットミュージックだからとかボカロだからみたいな壁を感じていません。そこが僕らとの一番の違いかもしれない。

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島の独自性が薄れているのでボカロが衰退したと見えがちですけど、そうではなくて島が本土と繋がり音楽としてひとつの大きな島になっている

大石 本土と繋がったから、昔だったらボカロで活躍したような才能がJ-POPのシーンで活躍していたりするってことか。

堀江 そういうことなんだと思います。

昔ならすごいセンスがあって腕があるクリエイターがいたとしても、自分だけではできることに限界があるので作品を事務所に送ったり、ボカロPとして活動したりという流れがあったので、そこから商業作家になるケースがありました。

ですが今はYouTubeに作品を上げて、それがよければすぐ世間に見つかるようになっていて、作家になる前にスターになってしまうことが圧倒的に増えている。逆に、実績はないけど腕はいいというクリエイターが減ってますね。

10年前だったら商業作家になりそうなクリエイターが、いくつか工程を飛ばして一気にスターになっているような状況です。

でもそうしてスターになってしまった子たちの中にも、本当は表に出るんじゃなくて職人的に楽曲をつくりたいってクリエイターが結構いるんです。

だから制作側も、「あの人はスターになってしまったから裏方の作家業なんてやらないだろう」と思わずに声をかけてみると、お互いにとっていい形で新しい音楽が生み出せるのかもしれません。

クリエイターは自営業主という意識を持たなければ

大石 今の若いクリエイターは、大人や企業との付き合い方も上手いよね。

僕は1月からポニーキャニオンさんとアーティスト契約したんだけど、「オーイシマサヨシ」だけで、シンガー「大石昌良」と作家「大石昌良」はどことも契約していないし、「Sound Schedule」はなんならヤマハに所属してる。

昔ならありえなかった形だと思うけど、今は個人でも何とかなる時代だからこそ、企業ともWin-Winな関係を築くのがトレンドになっていて、今の若い子たちは自然とそういう形を選択できている

でもそうして個が際立っていくことで、食えてる音楽家と食えてない音楽家が二極化してるとも思うんだよね。

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