
「本格は求められない」アニソンクリエイターがこだわる“にわか“感
アニソンシンガー「オーイシマサヨシ」やシンガーソングライター「大石昌良」、ルーツであるバンド「Sound Schedule」など、い…
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本来は裏方であるはずの作曲家が、クリエイターとしての“ブランディング”を求められる時代。
中でも売れっ子であるはずの当人が感じる戸惑い。
共に最前線で活躍するクリエイターとして、互いの才能を認め合いながらも、好対照な大石昌良さんと堀江晶太さん。
楽曲の才能と同じく、現代において求められるクリエイターとしての“ブランド”力。それに対する、それぞれの距離のとり方が浮き彫りになる。
ホスト:大石昌良 ゲスト:堀江晶太 取材・執筆:オグマフミヤ 撮影:I.ITO 編集:新見直
──大石さんといえば、最近ポルシェを購入されたことが話題です。「後輩を育てない」というのが大石さんのスタンスですが、羽振りの良さをアピールすることで後輩に夢を見せようともしているのかなと感じたのですが…?
大石 そんなアピールしてないですよ(笑)。
でも、ポルシェ買った報告なんてしたら半分以上には疎まれても仕方ないと思っていたのに、九割方肯定的な言葉をかけていただけて嬉しかったですね。
ただ欲しかったから買っただけであって、それで後輩たちに頑張ってほしいという気持ちは全くないです(笑)。
──そうでしたか。しかし、ファンからも好意的にネタにされるのは大石さんならではですね。そして、堀江さんもやはりポルシェが気になっているそうで。
堀江 話題になっていましたし、単純に大石さんがポルシェを買ったという事象が面白かったんですよね(笑)。もはや会うたびに聞くというテンプレになっているんですが一応……ポルシェの調子どうですか?
大石 この前対バンした時も聞いてきたじゃん! 首都高ブイブイ言わしてるよ(笑)!
僕は別に夢をアピールしようとはしてないけど堀江くんはどう?
堀江 僕はあまり自信がない人間なので、そもそも絶対的に成功してるとは思っていないですし、華やかなアーティストというよりは、粛々と作業をする職人に憧れや美学を感じているので、そういうアピールは避けていますし、自分がするのは苦手ですね。
自分自身が目立ったり表に出るよりは、作品を見てほしい。
大石 僕もそういう気持ちはわかるけど、バンドマンもやってたから顕示欲みたいなものがどうしても滲み出てしまう。加えてTom-H@ckに影響を受けてることは否めない(笑)。
彼には、良い意味で偉そうにする才能があって、人の上に立つ資質があるし、近くにいても憧れる部分がある。
──今までやらなかったことをやるという意味では、大石さんにも、Tom-H@ckさんがおっしゃっていたリブランディング(関連記事)の意識もあるのでしょうか?
大石 というよりは、裕福なことをアピールしても嫌味に聞こえなくなってきたという時代性が関係しているかもしれません。
たとえばアメリカのヒップホップ文化がそうだと思うんですが、ドレイクがお金を持ってることをアピールするのなんて当たり前で、その姿にみんなが憧れている。
日本人はおしとやかでひかえめなので、そういうダイナミックなカルチャーは受け入れられてこなかったのですが、時代の変化と共にそういう文化もどんどん流入してきて、成功者に対しての賞賛ができるようになったのかもしれない。
YouTuberさんたちの影響もあるでしょうね。彼らはたくさん稼いだお金を大胆に使っていて、気前の良さをみんなでエンタメとして楽しむという流れが近年できていて、たとえばポルシェを購入した僕に対する印象もそれにならっているんだと思います。
──クリエイターが自らをブランディングすることについてはこの対談で何度か議題に上がっているテーマですが、堀江さんはそうした現代の流れについて嬉しくもあり戸惑いを感じているとうかがいました。
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作曲家に“ブランド“が求められることへの戸惑い
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