フランスで育まれた“日本式” バンド・デシネ出身作家が憧れ吸収した漫画表現

Interview

  • 2020.06.12 20:00:00

海外にまで広まり、評価を得る日本の文化──「MANGA」。

あらゆる文化のグローバル化が加速する激動の時代にあって、フランスの漫画表現「バンド・デシネ」にルーツに持ち、今では日本的漫画スタイルで作品を発表する『ラディアン』の著者であるトニー・ヴァレントに、その価値を問う。

フランスで育まれた“日本式” バンド・デシネ出身作家が憧れ吸収した漫画表現

「MANGA」はもう、日本の専売特許ではなくなりつつある

確かに日本の漫画は世界的にみても、類まれな数字を持っている。『ONE PIECE』や『こち亀』はギネス記録を持っているし、海外イベントで日本作品のコスプレをしているファンがテレビで報道されることも多い。

そして世界中に熱狂的なファンがいれば、その影響は広がり、作品が研究され、日本の漫画スタイルを身に着けるクリエイターが世界中から登場するのも自然の流れ。

『週刊少年ジャンプ』で連載されている『Dr.STONE』の作画を担当する韓国出身の作家・Boichi氏のように、一線で活躍するクリエイターも出てきている。

フランス人でありながら日本の漫画のスタイルを吸収し、連載漫画『ラディアン』がNHKでアニメ化もされるなど、高い評価を得ているトニー・ヴァレント氏は、現在カナダに住みながら日本の漫画を愛する者の一人だ。

バンド・デシネというフランス語圏の漫画文化の作家としてフランスでキャリアをスタートした後、幼少期から『ドラゴンボール』や『らんま1/2』で親しんだ日本漫画のスタイルこそ自分に合っていると感じ、日本漫画的なスタイルの作品を制作してきた。

トニー氏へのインタビューを通して、インターネットの発達と浸透で全世界がコンテンツを共有するようになった現代、海外にはどのような漫画文化が根付いていて、その中で日本漫画はどう評価されているのかを捉えなおす。

目次

  1. ヨーロッパに根付く漫画文化「バンド・デシネ」
  2. フランス漫画家から見た、日本のMANGA
  3. ドラゴンボールにらんま…異国の地で育まれた、日本の漫画スタイル
  4. 差別や苦悩が滲みだす、ヨーロッパの漫画創作事情

ヨーロッパに根付く漫画文化「バンド・デシネ」

──トニーさんはバンド・デシネ作家としてのキャリアをお持ちですが、そもそもバンド・デシネとはどのようなものでしょうか?

トニー バンド・デシネには、日本の漫画に似ているところがたくさんあります!

テーマもジャンルもありとあらゆるタイプのものがありますが、刊行されるのは年に1冊程度で、もちろん例外もありますが平均45~60ページ程度しかなく、雑誌での連載ではなく書籍形式で直接出版されているという点が大きく異なります。

バンド・デシネの単行本はフルカラーがほとんどなので時間がかかりますし、出版されるスピードが遅いので日本の漫画よりも話のテンポが速くなりやすいです。

映像業界に例えるならば、日本の漫画がテレビ番組のように長く続いているのに対して、バンド・デシネはフルムービーのようなものです

──『ラディアン』巻末のインタビューで、フランス人で漫画を書く人が増えていて市場も広がっていると仰っていましたが、その中でトニーさんが注目されている作家、作品はありますか? また、バンド・デシネの中で日本の漫画ファンやバンド・デシネに興味を持っている人にオススメしたい作品はありますか?

トニー たくさんのすぐれた作品があるのでリストアップしきるのは難しいでしょうね。でも、お勧めのバンド・デシネを一つ選ぶとしたら、フロラン・モードゥの『Funerailles』でしょうか。 前作の『Freak’s Squeele』もオススメです。

ストーリーテラーとして、エンターテイメント性があり、作画もしっかりしていて、キャラクターもとても人間味があります。フォーマットは日本漫画とバンド・デシネのハイブリッドで、バンド・デシネよりもページ数が多く、日本の漫画のように白黒のシーンもあります。

──フランスには漫画雑誌というものがあまりないとうかがったのですが、その状況は今も変わりませんか?

トニー 漫画雑誌は、現在のフランスには存在しないんです。過去にはありましたが、残念ながら長続きはしませんでした。

──定期的な雑誌掲載による収入が存在しないと、特に新人作家にとっては大変な状況だと思いますが、どのようにして挑戦されているのでしょうか?

トニー フランスの漫画業界は、書店で販売される単行本の売上に依存しているんです。そのため確かに、多くのアーティストにとって今は厳しい状況です。

──トニーさんがラディアンを描き始めたころ、フランス人に日本スタイルの漫画は描けないという意見があったと聞きました。現在もフランス漫画界にはそのような意見はあるのでしょうか?

トニー 今、潮目はかなり変わってきました。フランスでも読者のほとんどはフランスで描かれた漫画に慣れ親しんでいて、私たちを受け入れてくれています!

──トニーさんご自身は現在カナダに住まれていますが、日本の漫画コンテンツを普段どういった形で楽しまれていますか? 日本の漫画は、英訳・仏訳されたものを読むのでしょうか?

トニー 日本の漫画がフランスで発売されたときに、単行本で直接フランス語版を読んでいます。翻訳された日本の漫画雑誌は売っていないので、単行本の発売を待つしかないんです!

ドラゴンボールにらんま…異国の地で育まれた、日本の漫画スタイル

──トニーさん自身が、イラストや漫画を描きはじめたきっかけはどういったものだったのでしょうか?

トニー 一番の理由は、ストーリーを伝えたい!と思ったからです。最初は『ドラゴンボール』や『らんま1/2』などのアニメを見ていて、そこから漫画を読むようになりました。いつも悟空や乱馬の絵を描いていて、彼らの物語を妄想していました。

そうしていくうちに、いつのまにかその世界の中に自分で考えたキャラクターを生み出していくようになったんです。それが、私が物語をつくり始めることになった原体験です。

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