LGBTQ差別はなぜレゲエに深く根差してきたのか? ヘイト騒動に巻き込まれたMINMIインタビューも
2022.11.05
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「2020年代のカニエ・ウェスト」が始動した。今年の6月末に発表されたGAPとのパートナーシップ締結を皮切りに、新アルバム『God’s Country』のリリース・アナウンス、2020年の米・大統領選への出馬表明など、カニエの勢いは衰え知らずだ。しかし、多くのメディアが評するように、防弾チョッキを着込んで選挙演説に臨んだカニエの姿は「異常」の一言に尽きるものだった。
これに伴って注目が集まっているのは、その暴走の原因と疑われる彼のメンタル・ヘルスだ。正確には「再び」、そして「真面目に」注目が集まっているというべきだろう。
カニエはこれまでも自身のメンタル・ヘルスについて公に発言してきたし、それは彼の作品にも反映されてきた。彼の2018年のアルバム『Ye』のジャケットに記された「I hate being Bi-Polar it’s awesome(躁鬱でいるのは最低で最高だ)」という文言は、あまりにも赤裸々だ。アーティストの精神状態が良くも悪くもクリエイティビティの原動力になってきたのは世の常でもあるし、「Any publicity is good publicity(悪い評判でも、話題になりさえすれば良い宣伝になる)」という言葉に甘えて、メディアも悪びれずにこれを積極的に煽ってきた。
しかし、そのメディアの煽りがアーティストやセレブリティのメンタル・ヘルスに与える影響が顧みられることはほとんどなかった。むしろ、その状況は悪化していると言えるだろう。これはリアリティー的演出を虚構の世界に持ち込んで人気を博している「リアリティ番組」の出演者たちが受けている被害からも明らかだ。もちろん、同プラットフォームの恩恵を受けて名声を手に入れた者も少なくはない。あのドナルド・トランプもリアリティ番組『アプレンティス』に出演していなければ、米大統領に上り詰めることもなかっただろう。
しかし、その現実と虚構の狭間を演じ続けられる者は少ない。演者はいつしか虚構に飲み込まれて精神に変調をきたしていき、それを「暴走」や「奇行」と書き立てるメディアによって、さらに追い詰められていく。先日のカニエ・ウェストの選挙演説や最近の一連のTwitter上での発言もメディアの食い物にされている。「2020年のカニエ・ウェスト」はそんなリアリティ時代の芸能界の被害者を代表する存在なのだ。
長らく“お騒がせセレブリティ”の筆頭として消費され、その一方で若いリスナーからは神格化さえされるヒップホップアーティスト、カニエ・ウェスト。彼の一挙手一投足は、“普通ではない”アメリカの遠い出来事ではなく、世界的な社会問題となっている社会問題「メンタルヘルス」について、日本人のわたしたちにも切に問いかける。いち個人であるにもかかわらず、著名人に及ぶ被害は「有名税」の名の下に蔑ろにされ、「キャラクター」を消費する受け手のわたしたちは、彼らに超人的な「メンタルの強さ」を知らぬ間に求める──。その結果が生む悲劇は、語るまでもなくこの日本でも繰り返されている。
執筆:LIT_JAPAN 編集:和田拓也
目次
- カニエの「暴走」をどう捉えるべきか?
- 双極性障害と“スーパーパワー”
- 『アイアンマン』『ザ・ボーイズ』が描く、スーパーヒーローの精神的リスク
- 「超人的なメンタル」を求められる著名人
彼の言動が全て耳目を集めるための「プロモーション」だという見方も出来る。しかし、彼はこれまでにも繰り返し自身の精神疾患についてSOS信号を発信してきている。
自身のメンタルヘルスを公言しながら、その症状に身を任せるカニエの姿は、多くの人に不可解なものとして映るだろう。その不可解さを正しく理解し、カニエの言動を「暴走」と切り捨てないためには、これまでの彼のメンタルヘルス歴と双極性障害(躁うつ病)の特徴について紐解いていく必要がある。
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