
EXCLUSIVE: Black Friday brings grief for family of Long Island Walmart worker trampled to death by wild shoppers in 2008
When the Damour family gathers now for Thanksgiving dinner it’s always tinged with sadness — and Black Friday is even w…
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アメリカのコメディアンで急先鋒と目されるハサン・ミンハジのNetflix番組『ハサン・ミンハジ: 愛国者として物申す』。
「Supreme」というポップな話題から「インドの選挙」というディープな話題まで、「ユーモア」を武器に、社会問題と大衆の媒介者となる彼のジョーク(パンチライン)から、世界のいまを読み取る連載シリーズ。
The Ugly Truth of Fast Fashion | Patriot Act with Hasan Minhaj | Netflix
日に日に肌寒さが増し、クローゼットの中の優先順位が入れ替わる季節。一昨年、H&Mで買ったデニムジャケット。安かったから買ったけど、今年も出番は無さそうだなあ。捨てるか古着屋に持っていくか。ついでに、こんまりの『人生がときめく片づけの魔法』も古本屋に持っていこう。
衣替えのシーズンは断捨離のシーズンでもあります。ハサン・ミンハジが自身のNetflix番組『ハサン・ミンハジ: 愛国者として物申す』で今回取り上げるのは、そんな衣替えシーズンにぴったりな「ファストファッションの弊害」です。
ハイブランドが年に2回発表する人気の新作を真似、週4回のペースで新作を販売するファストファッションブランドの「ダイナミックアソートメント」戦略や、企業の欺瞞に満ちた環境訴求「グリーンウォッシング」──。近年、国際的にもっとも重要視されている問題である「気候変動(Climate Chanege)」ですが、批評と文化的背景を大量に盛り込んだジョークとともに、ハサンはこの問題にファッションという切り口からわたしたち不都合な真実を突きつけます。
今回もそんなジョークを読み解きながら、楽しく社会問題を学んでいきましょう。
その廃棄されたデニムジャケットの行方、あなたは知っていますか?
超消費大国アメリカ。日本でも徐々に浸透しつつある11月末のブラック・フライデーを皮切りに、年末のショッピング・シーズンがそのピークを迎えようとしています。今年度末の小売売上額は昨年度を5%近く上回る1.1兆円以上を記録することが見込まれており、アメリカ人の購買欲は不況知らずです。
そのお買い物シーズンの華とも言えるのがファッションです。老舗のハイファッション・ブランドが年に数回新作を発表するのに対し、日本でもお馴染みのH&MやZARAといったファストファッション・ブランドからは最新のハイファッション・ブランドを真似た商品が週4回のペースで発売され、消費者を飽きさせることがありません。その結果、1年間におけるアメリカ人の衣類購入数は平均で68着にも及ぶようになりました。これは40年前と比べると4倍近い数字です。
お財布の寂しいファッショニスタにとっては願ってもない現代。しかし、それは購入される衣類の半数が2,3回着用すればクローゼットの肥やしになる時代の到来でもあります。現に20年前と比べると、服の保存期間は半分以下になっているというデータが番組では提示されます。さらに、アメリカにおける個人が1年間に捨てる衣類の量は平均で36kgにまで膨れ上がっているというから驚きです。
クローゼットに堆積した衣服は、良くても古着屋行き。実はそのほとんども、発展途上国に売り飛ばされ、アフリカやケニア共和国の埋め立て地で焼却処分される運命にあります。生産の過程で環境にもたらす悪影響は言わずもがな、ファストファッションの加速させるクローゼットの回転率は廃棄という面でも地球にダメージを与えているのです。
ファストに製造されファストに消費されていくファッションの行方。その過程をプレゼンするハサンのジョークからは、アメリカの消費を支える文化的な背景が見えてきます。
『ハサン・ミンハジ: 愛国者として物申す』「ファストファッションの弊害」より
“She just dropped molly with RoboCop.”「彼女はロボコップとMDMAをやってるだけだ」
ハサンのパンチライン①
11月の第4木曜日、感謝祭(サンクスギビングデー)の翌日。年末商戦の幕開けを告げるブラックフライデーには、買い物客が小売店に殺到します。
そんなブラックフライデーに群がる女性買い物客の表情を、顔追跡システムで解析したところ、彼女の快楽中枢が刺激されて「ハイ」になっていることが明らかになりました。そんな映像を見てハサンはこう指摘します。
「彼女はロボコップとモリ―(MDMA)をやってるだけだ」
映画『ロボコップ』の同名キャラクターの主観視点映像に酷似した、顔追跡システムの画像
3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン──(通称MDMA)は世界中の音楽フェスティバルで愛用されているパーティードラッグの王様的な存在です。MDMAにはセロトニンを過剰放出させることで快楽中枢を刺激し、人間の精神に多幸感を与えたり、他者への共感性を向上させる効果があります。レイヴなどの野外フェスティバルでハメを外すには持ってこいのドラッグというわけです。
ハサンがこのショッピング・ハイ状態になっている女性買い物客を指して、ドラッグの中からMDMAを名指しで例に挙げたのには理由があります。ハイになった彼女の目は見開かれ、口が半開きになっており、まさにMDMAで快楽中枢が刺激されたようなアヘ顔状態なのです。ある特定の成人向け漫画や昨今のグルメ漫画で登場人物が見せるあの表情といえば伝わりやすいでしょうか。
しかし、ドラッグにトラブルが付きものであるのと同様に、このショッピング・ハイが原因でブラックフライデー時には例年、死傷者が記録されています。その最悪の例とも言えるのが2008年にニューヨークのスーパーマーケット「ウォルマート」で、店員の一人が暴徒化した買い物客に押しつぶされて死亡した事件です。2011年にはセール対象となっていたXBOXを巡って32歳の女性が催涙スプレーを振りまき、約20人の負傷者が出るなど、ブラックフライデーの悲劇は枚挙に暇がありません。
死傷者を出すほど悪化しているアメリカの買い物中毒。そんな中毒者たちを満たすかのように、ファストファッションの供給は年々激化しています。その供給を支えるシステムとはどのように構築されているのでしょうか?
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