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  • 2021.12.04

カニエ・ウエストはどこから来て、どこへ行くのか

世界の耳目を集めるカニエ・ウエスト。彼の出自、そしてその考えに触れることで、その音はよりくっきりとした輪郭を帯びていく。

※※本稿は、2018年に「KAI-YOU.net」で掲載された内容を再構成したもの

カニエ・ウエストはどこから来て、どこへ行くのか

クリエイター

この記事の制作者たち

どうも、ラッパーのRAq@raq_reezy)です。

今回とりあげるのは、僕が大好きなラッパーのカニエ・ウエスト(KANYE WEST)です。

近年のカニエといったら、政治的発言や授賞式で暴走するお騒がせセレブといったイメージが強いのではないでしょうか。

カニエ自身の楽曲「I Love Kanye」でも歌われているように、昔のカニエを懐かしむ人は大勢います。

I miss the old Kanye, straight from the Go Kanye
Chop up the soul Kanye, set on his goals Kanye
I hate the new Kanye, the bad mood Kanye
The always rude Kanye, spaz in the news Kanye

昔のカニエが懐かしい、シカゴから飛び出してきたカニエ
ソウルをチョップしてたカニエ、自分の目標に向かってたカニエ
新しいカニエが嫌い、機嫌が悪そうなカニエ
いつも無礼なカニエ、ニュースで騒ぎ立てるカニエ Kanye West - “I Love Kanye”

しかし常に未来志向のカニエに、過去の姿に戻ることを期待しても実現する可能性は薄いでしょう。

そこで、今回は僕自身の解釈も交えながら、カニエの歴史を紐解きたいと思います。

昔からカニエを見てきたけれど最近の行動は理解に苦しむという人も、最近カニエを知ったという人も、カニエの現在地点を少しでも理解できるように紹介していきます。

目次

  1. シカゴから飛び出してきたカニエ
  2. プロデュースだけでは満足できずラッパーへ
  3. カニエの孤独な側面
  4. 興味の拡大と兄貴ジェイZの存在
  5. 借金と躁うつ
  6. 炎上とアルバム『ye』、カニエの現在地点
  7. カニエの葛藤

シカゴから飛び出してきたカニエ

カニエはビートをつくるプロデューサーとしてキャリアをスタートしています。

シカゴの美大に通いながら、ラッパーにビートの提供を始めましたが、トントン拍子にキャリアが進んだわけではありませんでした。

Before anybody wanted K. West beats
Me and my girl split the bucket at KFC
Dog, I was havin' nervous breakdowns
Like "Man, these niggas that much better than me?"

誰もカニエ・ウエストのビートを欲しがらなかった頃
俺と彼女はケンタッキーフライドチキンでバケットを半分こしてた
なぁ、俺は気が滅入っちまってたぜ
「他のやつらのビートが、そんなに俺よりも良いか?」ってね
Kanye West - “Touch the Sky” feat. Lupe Fiasco

それでもカニエはビートをつくり続け、やがてジェイZと仕事をするまでになります。ジェイZのアルバム『The Blueprint』では、プロデューサーとして5曲を提供しました。

Doing 5 beats a day for 3 summers
That's A Different World like Cree Summer's

毎日ビートを5個つくるってのを、夏が3回来るまで続けた
クリー・サマーズが演じた作品名みたいに、まさに『別世界(A Different World)』さ
Kanye West - “Spaceship”

当時、カニエはシカゴ出身ならではのソウルフルなサンプリング音源選びや、チップモンクソウルと呼ばれる"ネタのピッチをあげて利用する手法"を駆使して、サンプリングによるビートの気持ち良さをシーンに復活させました。

こうして音楽で成功したカニエは、プロデュース業で忙しくなり、大学を中退しました。

プロデュースだけでは満足できずラッパーへ

プロデューサーとして成功したカニエですがそれだけでは満足できずじまいでした。周囲も疑問に思ってしまうほどの成功の中で、さらにラッパーとしてのキャリアを目指すようになります。

この時期にカニエは居眠り運転で交通事故を起こし、死にかけたという体験もありました。それがカニエの人生に対する貪欲さに影響しているのかもしれません。

当時、カニエは本当に良いビートができたら、他のラッパーには渡さずに自分の作品のために確保していたといいます(笑)。

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