VRChat隆盛の転換点「スタンミ世代」の現在──初訪問から現在までの足取りを聞いてみた
2026.01.05
作品を貪るように楽しむこと。それを誰に責められるいわれもない。しかし、文化を消費することと、継承することとは、似ているようで全く異なる様態だ。縮小再生産される“懐かしさ”も“新しさ”も、半永久的に消費できるという点において相違ない。
文化を継承する鍵を、映画『レディ・プレイヤー1』の中に見た。
クリエイター
この記事の制作者たち
スティーヴン・スピルバーグ監督の『レディ・プレイヤー1』は確かに傑作だ。劇場での鑑賞が必須な映画体験であり、映画史に残る映画だと言いたい。
ただ一つ、腑に落ちない点を挙げるなら、それはこの映画の“語られ方”にある。
映画の感想サイトなどでの本作のレビューはおおむね好評だ。いわく、「映画・アニメ・ゲームオタクのための様々なシーンやキャラクターの引用」や「VRコンテンツの未来描写」が広く人々にウケているようだ。だが、この映画の本懐はそこにはない。
いや、むしろそれら「過去のコンテンツへの懐古」や「未来描写」の否定にこそ、この映画のテーマが宿っているように感じたのだ。スピルバーグと原作者が、この映画で問いかけているのは、“消費”ではなく“継承”なのではないか?
グラフィック制作・執筆:たかくらかずき 編集:新見直
※本稿は、2018年5月「KAI-YOU.net」で配信した記事を再構成したもの
目次
- 変わらぬ欲望、進化できない人類
- 大人帝国の野望 20世紀博は続く?
- 『A.I.』と『シャイニング』、文化のバトンパス
- 巨大企業とオタク、ビジネスと作品との拮抗
- 物語を終わらせ、外に出る冒険者たち

『レディ・プレイヤー1』の世界観はこんな感じだ。舞台は2045年の荒廃した近未来。世界中の人々はみんな現実そっちのけで、VRの世界に没頭している。
生活における食事やトイレ以外のほとんどの行為が可能なVR空間「オアシス」では様々な欲望を満たすことができるが、ひとたびHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を外すと問題尽くしの絶望的な現実世界が目の前に広がっている。
『レディ・プレイヤー1』(c)2018WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED
そんな中、オアシス開発者であるジェームズ・ハリデーの死後、ゲームの中に潜んでいるという「イースターエッグ」(裏技)を探すゲームが始まる。
エッグを見つけるとオアシスの運営権をもらえるついでに億万長者になれるため、そのゲームは世界を巻き込んだ。ハリデーの残したエッグを手に入れるため、現実の豊かな生活を手に入れるためには、彼の心酔した80年代ポップカルチャーに精通する必要があった。
ひとことで言えば「全人類総オタク化」の世界だ。
オアシスでやることといえば、富・力・名声を得ること。いくら近未来で技術が進化していても、人間の欲望が変わることはない。映画の冒頭ではっきりと、「どこまでいっても人間の欲望はこの程度だ」という見解を突きつけられることになる。
そう、この物語はまず、いつまでも進化できない人類の物語として始まる。
続きを読むにはメンバーシップ登録が必要です
今すぐ10日間無料お試しを始めて記事の続きを読もう
残り 4637文字 / 画像10枚
800本以上のオリジナルコンテンツを読み放題
KAI-YOU Discordコミュニティへの参加
メンバー限定イベントやラジオ配信、先行特典も
※初回登録の方に限り、無料お試し期間中に解約した場合、料金は一切かかりません。
様々なジャンルの最前線で活躍するクリエイターや識者を中心に、思想や作品、実態に迫る取材をお届け
様々な記事の中から編集部で厳選したイチオシ作品をご紹介
ラッパー/ライター/編集
現代の日本の音楽シーンを語るなら、ボカロ文化は不可欠。2020年代のボカロ曲において、音楽的な独自性はどこにあるのか? 柴那典さんが「MAJ2025」受賞候補曲から考えます。
ライター
『ブルーアーカイブ』の青い色彩設計、そしてエデン条約のストーリー。この2つを柱に日本のサブカルチャーがアジアにどんな影響を与えたか、韓国でどう花開いたかを紐解きます
ライター
ぶいすぽっ!所属の蝶屋はなびさん。普段から前向きな姿勢を崩さない彼女のひたむきさはどこから来ているのかうかがいました。格ゲートークも充実!
編集
語られざる、違法な海賊版トレーディングカードゲームの歴史。世界広しと言えども、この解像度でその歴史を紡げる人は、SF作家・ゲームコレクターである赤野工作氏しかいない。
編集
結局、同人誌って違法なの? 実在する「VTuber」の二次創作、もしかして肖像権侵害や侮辱罪に当たっちゃう? 令和版、同人文化への最新の法的動向を弁護士に根掘り葉掘り聞いてます。
編集
日本語ラップを、構造的に理解する──音楽としてでもライフスタイルとしてでもない、新しいヒップホップの解釈を提示してもらっています。
編集
オタク/ラップのトップランナーだからこそ語れる“ニコラップ”の世界。懐かしいだけじゃなく、今に接続される話になっています。
ライター・編集者
減らないVTuberの活動休止について、根本的な原因を九条林檎さんに聞きました。推しのVTuberがいる方は、ぜひ読んでもらいたい内容です。