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  • 2020.09.12

クイズ王の語る、知られざる競技クイズ クイズはヒップホップと似てる?

アプリやゲームで、誰もがクイズを楽しめるようになった現在。

テレビで脚光を浴びる「クイズ王」達がしのぎを削ってきたディープな競技としてのクイズを、私たちはまだ知らない。

クイズ王の語る、知られざる競技クイズ クイズはヒップホップと似てる?

クイズノックのふくらPさん(写真左)、伊沢さん(写真右)

2016年に立ち上げられ、19年には法人化。WebメディアやYouTubeを通じてクイズの魅力や「知ることの楽しさ」を発信してきたQuizKnock(以下、クイズノック)。

クイズや知識、学びとエンタメを結びつけたコンテンツは大きな支持を得て、現在では人気YouTubeとしてのイメージも強くなっている。

KAI-YOU Premiumでは、競技クイズプレイヤーとして活躍してきた代表の伊沢拓司さん、そしてふくらP(福良)さんに、前後編にわたって「競技クイズ」や「現代の教養」についてインタビューを行った。

プレイヤーとして日本テレビの『全国高等学校クイズ選手権』(通称「高校生クイズ」)2連覇を成し遂げ、東大王への出演などクイズ王の名をほしいままにする伊沢さん。

QuizKnockのYouTube進出を提案し、自身も出演しつつユニークな企画や編集を手掛けるふくらPさん。

クイズプレイヤーとしての顔もあわせもつ彼らは、クイズ業界を支える「競技クイズ」をどう考えているのか。あまり知られていない「競技クイズ」に迫る。

取材・執筆:岡野純也 撮影:I.ITO 企画・編集:小林優介 編集補佐:新見直

目次

  1. 爆発するクイ研、「競技クイズ」とはなんなのか?
  2. 歴史をつくり、編纂する2人のクイズ王
  3. 伊沢拓司とZeebra、クイズとヒップホップの共通点
  4. まずは全てを捨てる。クイズプレイヤー最強への道
  5. なぞなぞは美しい? クイズはアートと呼べるのか

爆発するクイ研、「競技クイズ」とはなんなのか?

──そもそも「競技クイズ」というものは、どういったものなのでしょうか?

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伊沢 「競技クイズ」というのは、よく使われているけど定義が決まっていない言葉なんです。たぶん、大体「ガチンコですよ」ぐらいの使われ方だよね。

福良 そう、人によって使う言葉も違うし定義もバラバラ。

あえて説明するなら、例えばクイズ番組には、テレビに映れるから出場する人、優勝したら賞金がもらえるから出場する人がいると思うけど、「競技クイズ」は純粋にクイズができるのが楽しいから参加している人が多いですね。

伊沢 僕は、テレビ番組ではなく、賞金を目当てにするわけでもないクイズ活動全般を指して「アマチュアクイズ」という単語をよく使っています。

ただ、「競技クイズ」「アマチュアクイズ」では指してる領域も微妙に違っていて、多分競技クイズというのは、アマチュアクイズの中でもワイワイ楽しくやってるクイズは含まない。

──なるほど。賞金は出ないからプロではないけど、かと言ってエンジョイ勢でもないガチ勢…?

伊沢 「競技クイズ」という言葉は、古川洋平さん(クイズ作家、クイズプレイヤー。クイズ法人カプリティオ代表)が最初に言い始めたとされているんだけど、文献を見てみるとその言葉自体は昔から使われている用例はあるみたいです。だから、みんなで明確に同じ定義を共有してるわけでもないんですよね。

福良 類義語で「草クイズ」って言葉もある。プロ野球じゃないものが全部草野球と言われているように、テレビクイズを「プロクイズ」として、そうじゃないものを全部ひっくるめて「草クイズ」って言う場合もあるんです。

伊沢 でも「草クイズ」って言うと、上下関係が生まれているということで怒る人もいますね。

だから僕は、お金をもらっているかどうかという明確な定義のある「プロ/アマチュアクイズ」という言葉を使っていて、アマチュアクイズ業界でプレイされているクイズのことを一応は「競技クイズ」と呼んでいる。その用法が定まってきたのも、ここ10年ですね。

──伊沢さんは高校生の頃からクイズの全国大会で、クイズ環境の整っていない地方からの出場者のために早押しボタンを持参して触ってもらうなど、普及活動をしていたというお話がありました(関連記事)。学生のころから「競技クイズシーン」のことを考えていたんですか?

伊沢 そういう所はあったと思います。とはいえ、当時のシーンは今に比べるとすごく小さくて、みんながシーン全体について言及できるぐらいの規模で。だからもっと広まれーという気持ちでした。

当時のクイズの情報交換の場は、mixiと、対策サイトの掲示板で、どっちかにアクセスできていれば大体の情報が手に入る状況でした。それで事足りるくらい競技人口も少なかった。

──今はどうなんですか?

伊沢 今はとにかく人が増えて、学生のナンバーワンを競う大会は、千人も来たりします。

福良 “クイズ研究部爆発”が起こっていて、競技人口が激増しています。

伊沢 誰でも出られる「オープン大会」と呼ばれるクイズ大会の種別があるんですが、1993年ぐらいから参加人口が10年以上ずっと横ばいでした。

それが、「高校生クイズ」が路線変更して“知力の甲子園”として人間ドラマを強調するようになった2008年ぐらいから一気に増えるんです。ちょうど福良さんもそのころにハマってる。

今はさらにその比じゃないくらい異様な勢いで増えてる。この数年だけで、クイズシーンの規模は倍増どころじゃない、3倍増ぐらいはしてると思いますね。

歴史をつくり、編纂する2人のクイズ王

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──伊沢さんは雑誌『ユリイカ』で、株式会社ゲンロンの取締役にして、競技クイズ界最強とも言われるもう一人のクイズ王・徳久倫康さんとクイズの歴史について対談していました。クイズプレイヤーは自分たちで「クイズ史」を編纂しているのでしょうか?

伊沢 クイズの競技シーンで歴史に興味があって手も動かしてるのは、僕ら2人ぐらいですね(笑)。徳久さんは2012年に自社で刊行した『思想地図β』という雑誌で『クイズ2.0』という論文を書いてる(関連リンク)。

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伊沢 これがクイズ史の編纂としてはよくできていて、アマチュアクイズの流れとテレビクイズの流れが両方語られたのはおそらく初めて。初めて、両者を統合しての編纂がなされたわけですね。

それ以前、00年代前半にいくつかの雑誌がクイズの歴史を取り上げたりしていたんですが、それ以降は2012年まで空白です。僕はそれをもう一度、本という形でまとめようとしていて、その断片を出したのがその対談です。

それくらい、クイズ史の研究というものに、クイズプレイヤーたちは無関心なのが現状です。良い悪いは置いておいて。

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