「知識は役に立たなくてもいい」東大出身のクイズ王が語る知と教養

Interview

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  • 2020.09.17 19:00:00

WebメディアやYouTube、様々な媒体で、「エンタメ」という軸を貫きながら知識を提供し続ける天才集団・クイズノック。

価値観と情報が氾濫する時代に、若年層向けに知を切り拓く彼らが語る「教養」とは。

「知識は役に立たなくてもいい」東大出身のクイズ王が語る知と教養

クイズノックの伊沢さん(写真左)、ふくらPさん(写真右)

2016年の発足以来、WebメディアやYouTubeを通じてクイズの魅力を発信してきたQuizKnock(以下、クイズノック)。

クイズや知識、学びとエンタメを結びつけたコンテンツは大きな支持を得て、現在では人気YouTuberとしてのイメージも強くなっている。

前編では、代表の伊沢拓司さん、そしてふくらP(福良)さんだからこそ持つリアルな目線で「競技クイズ」について語っていただいた。

後編となる今回は、クイズと知識、教養との関係に注目。現代を生き抜くために必要な考え方まで、クイズを熟知するお2人に語ってもらう。

取材・執筆:岡野純也 撮影:I.ITO 企画・編集:小林優介

目次

  1. 情報の取り扱いを巡って
  2. 今、役立つ「知識」とは?
  3. キーワードはものさし
  4. 相対主義の時代の知のありかた
  5. ふくらPがクイズノックであることの意味

情報の取り扱いを巡って

── 知識に関して、最近はフェイクニュース問題など、情報の正確さが問われることが増えています。クイズノックでは情報の真偽を確かめるファクトチェックや裏取りはどうされていますか?

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伊沢  動画にはファクトチェック専門の人が一本一本決まっていて、しっかりチェックしてから出すことになっていますし、記事も編集、校閲、校正は担当者を分ける形で運用しています。

それでも間違いが出てしまうことはありますが、なるべく少なくなるようにはやっていますね。

── 「QuizKnock」を立ち上げられた2016年は、キュレーションメディアを巡って、安価な費用で量産された記事の精度が問題視された時期でした。立ち上げの背景には、そうした問題への意識があったとうかがいました。

※2016年、DeNAの運営する「WELQ」や「MERY」をはじめとしたキュレーションメディアで、不確かな情報の掲載や、他サイトからの盗用が発覚して社会問題となった

伊沢 まさに、ベーシックコンセプトはそこ(キュレーションメディアへのカウンター)にありました。

大学のクイズ研究会を積極的にメディアと絡めたのも、レポートなんかの一環として文献収集や精査の仕方のような、メディアや情報へのリテラシーを大学教育の中で学んでいる現場の学生だからこそ、情報の正確さに神経質なぐらいこだわれるんじゃないかと思ったからです。

あと大学図書館があるというのは、当初は大きかったです。例えば東大の図書館は、調べ物をしたい時には資料の宝庫ですから。

──なるほど。一方で、情報過多な社会で、むしろ本当に知りたい情報に辿りつきづらい、真偽の判断がわかりづらいということにもなっています。本当に知りたいことや、信頼できる「」にアクセスするにはどうすればいいのでしょう?

伊沢  クイズノックでは、ライターや編集部が面白いと思ったことを提供するという形で「知」へのアクセスの過程を提示しよう、とは考えていますね。

まさにキュレーションというか。クイズというのはそもそも事実に対して解釈を加えて切り取る行為ですから、本当に知りたいことを生のまま提供するのに適したコンテンツではない。

なので、その切り口の面白さだったり、ライター独自の視点を大事に、という方針でやっています。

ただ、お話してきたように、「楽しいから始まる学び」を掲げ、まずエンタメから始まり、間接的な教育ということを考え始めたあたりから、キュレーション機能以上にクイズを通した習慣づくり──クイズで遊んでいるうちに緩やかに形成される、知識を楽しむ、知識を拒まないという習慣をつくる方向にメディアのコンセプト自体はシフトしていきました。

現在のWebメディア「QuizKnock」は「情報を待つ人から情報を探す人に」というのをひとつ掲げていて、新しい知に触れる習慣づけをエンタメの形で行うことで、知ることへの積極性をゆるやかにつくれればいいなと。

ただ、ユーザーもついて規模が大きくなった今だからこそ、別のアプローチがあるのかなと思っています。

今役立つ「知識」とは?南極大陸に初上陸した日本人は生きるうえで役立つか?

── 現在は、例えば「成功者のやっている〇つの習慣」のような、自分のキャリアにすぐ役立つ、ある意味で即物的な知識が重宝される時代になっていると言われています。クイズノックとして、そういったトレンドをあえて狙っていくことはありますか?

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福良  もしも、面白さや情報としての価値が同じで、すぐ役立つものとそうでないものがあるなら、すぐ役立つほうがみんなのためにはなるのかなとは思います。

けど、あくまで判断要因の一つという感じですかね。

伊沢  知識として使われることを目指しすぎてエンタメ性が失われるならクイズノックで出す価値はないし、我々のコンテンツとしてはただ知識を紹介するだけではダメ。何かしらの、これまでにない付加価値が生まれないといけないと思っていますね。

逆に言えば大事にしているのは手法的な要素であって、知識の中身ではないと考えています。

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