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  • 2020.12.19

“ポケモンを道具にすると敗北する”理由 多神教から定義するポケモンの正体

“ポケモンを道具にすると敗北する”理由 多神教から定義するポケモンの正体

クリエイター

この記事の制作者たち

目次

  1. アニミズムから考える「ポケットモンスター」の想像力
  2. ポケモンは「道具」だという”禁忌”
  3. 「悪」が存在しない、最新作『ソード・シールド』の想像力
  4. 「見られている」こと──ローズの憂いと、その天秤

子どもが絵を描くとき、太陽に顔を描く。花にも顔を描く。当然、母親や父親にも顔を描く。

生物や無機物、自然や現象などこの世のあらゆるものに霊魂(アニマ)の存在を認める考え方。イギリスの人類学者であるエドワード・B・タイラーはこれをアニミズムと名付けた。

タイラーは主に未開の文明の精霊信仰などについてアニミズムと命名したが、現在この言葉はもう少し広い意味で使われている。

例えば、日本の神道。自然現象や道具はおろか、お米一粒一粒やトイレにさえ神様がいる八百万の神という発想は、非常にアニミズム的である

キリスト教を代表とする絶対神を持つ一神教との最大の違いは、多神教・アニミズム的な神とはコミュニケーションがとれる、ということだ。

旱ばつ時に神様の注意を惹く雨乞いという儀式。祈願成就のお礼として食物や金銭を奉納するお賽銭という文化。それらは一方通行の信仰というより、しっかりと見返りを求める「契約」や「交換」に近い。

また例えば「雷」という言葉の語源に「神鳴り」というものがある。雷という自然現象が科学的に解明されなかった時代、人類は事象に人格を与えることで、説明可能なものとして安心するという宗教的生存戦略を採用して社会を安定させてきた。

子どもが太陽や花に顔を描くのはなぜか。スイスの心理学者であるJ・ピアジェによると「子どもはそもそも生物と無生物を区別しない」だとか「自己と事象の境界線が曖昧である」だとか色々言われているが、ここで取り上げたいことは一つ、人間(子ども)にとって万物はもともとコミュニケーションのとれる(心がある)存在だということだ。

「ポケモン」は、その延長線上にある。

ポケモンとは、アニミズムである

もう少し言うなら……ポケモンとは、人間以外にもコミュニケートしたいという内なる欲求である。

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