LAM インタビュー「僕は天才ではない、だけど──」
2020.11.21
担当書籍の累計発行部数6,000万部、売上高は250億円を超える敏腕ラノベ編集者が語る、イラストレーターへの実践的な提言。
編集はイラストレーターをどんな基準で選ぶか。「良いイラスト」の定義とは何か。隆盛するイラストレーションシーンの中での生き残り戦略とは──
400冊以上のライトノベルを手がけ、『ソードアート・オンライン』や『とある魔術の禁書目録』、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』はじめ、数々のヒット作を生み出してきた三木一馬さん。
2016年4月、電撃文庫の編集長を務めるKADOKAWAから独立を果たし、作家のエージェント会社「ストレートエッジ」を立ち上げたことでも注目を集めた。敏腕編集者は、イラストレーションとどう向き合ってきたのか。
※本稿は、図録『ILLUSTRATION 2017』収録インタビューの転載として2017年に『KAI-YOU.net』に掲載された記事を再構成したもの
取材・文:新見直
目次
- 編集者になってからラノベを読み始めた
- 編集にとってのメディアミックスは「手段」
- 三木一馬流、イラストレーターの選び方
- 「良いイラスト」の定義とは何か?
- イラストレーターが“青田買い”で潰されないために
- メディアミックスを見据えたアドバイス
- イラストレーターとして長く続けるためには、自身のキャリアを見据えた活動を
──編集者になるまで、いわゆる「ライトノベル」(以下「ラノベ」)は読んだことがなかったとうかがいました。
三木一馬(以下、三木) 一般文芸や海外ミステリーを多少読んだことがあるくらいで、『機動戦士ガンダム』や『新世紀エヴァンゲリオン』はわかる程度の知識でメディアワークス(現在は株式会社KADOKAWA)を受けました。入社2年目から電撃文庫編集部に配属が決まって、それから電撃文庫を勉強するようになったんです。
読み続ける中でわかったことは、『ラノベ』と呼ばれる作品は、すごくエンターテインメントを追求したものなんだ、ということでした。僕が入社前までに読んでいた『小説』というものは、もっと特定の思想を取り入れたり、世相風刺だったりといった、ある意味芸術的な部分がありました。
でもライトノベルはそれよりなにより『面白い』と思う娯楽を追求しているジャンルの商品なんだと分かったんです。それが2001年頃のことです。
──それから15年の間に、ラノベ市場は当時と比較にならないくらいに成長していきました。そして、電撃文庫の編集長に就任した三木さんはその中心にいた方だと思っています。
三木 とても光栄です、ありがとうございます。ただ、自分のポジションを意識したこともなければ、プレッシャーを感じたこともなかったですね。今までずっと好き勝手に仕事をやらせてもらっていますし、昔も今も本当に変わらずにいいなと思った作家と『これは面白いから本にして出そう』ということを続けているだけで、そういった環境でいられたことは幸運ですし、ありがたかったです。
──三木さんは、メディアミックス展開も数多く手がけられていますよね。
三木 メディアミックスの仕事も多いですね。僕の中でアニメ化や漫画化という展開はものすごくシンプルに、『本を売るための手段』として考えています。言ってしまえば、書店用のポップ制作や作品のキャッチコピーを考える作業の延長線上にある行為です。
その出来の良し悪しによって、元になった原作への注目度が変わり、売上げも左右される。ですから、アニメを良い作品にする=原作を成功させるということ、という思いで関わっていますが、それは本を売るのが目的です。
──書籍化するためのカバーや挿絵を描かれるイラストについても、『本を売るための手段』という認識なのでしょうか?
三木 いえ、それは違いますね。イラストレーターさんは、一緒に作品をつくる“仲間”です。作家がいて、編集者がいて、そしてイラストレーターとデザイナーがいる。この集団がチームとなって本づくりをし、『売るための手段』を考えます。ですから、イラストレーター選定にはこだわりますね。
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