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  • 2022.04.09

絵の本質を言葉にできたら「トレパク」も無くなるはず

絵の本質を言葉にできたら「トレパク」も無くなるはず

イラストレーションや表現を巡る状況や価値観は、常に時代によって変化を見せている。

インタビュー中編では、著作権違反としては同じく侵害の可能性がある「二次創作」が許される一方で、て「トレパク」をはじめとする”盗作”がなぜ批判されるのかを、文化的な背景を含め、改めて論理的に説明した。

しかしながら「二次創作」にかつてあった「お目こぼしを受けている」という感覚は、次第に世間から薄れていっているのもまた事実だ。


中村佑介さんが長年、イラストシーンの最前線で活躍し続けている理由は何か。あくまで「トレパク」を題材にした取材だったが、後編のインタビューでは、その理由についても考えさせられる内容となった。

KAI-YOU史上にも残るロングインタビューの終わりには、多くのイラストレーターに向けて中村佑介さんから一つの提案も出された。孤独な表現活動の在り方も、変わろうとしているのかもしれない

目次

  1. 「パクリ」と「オマージュ」は何が違うのか/同じなのか
  2. 「トレパク」のリスクを正しく認識する
  3. 日本人特有の「かわいい」という感想 その奥にあるもの
  4. 古塔つみが描いた『ILLUSTRATION 2022』の表紙 若手イラストレーターへの余波と提言
  5. 「トレパク」騒動のあとに イラストレーターの希望的な連帯

「パクリ」と「オマージュ」は何が違うのか/同じなのか

──前回記事での「模写」の話に付随して、“参考”や“オマージュ”との線引きも非常に難しいです。というより、多くの人は共通の定義なんて持たずにバラバラに考えているだけという状況になっていると思います。

中村佑介 本当にバラバラですよね。盗作した/された人の、それぞれの当事者によっても捉え方が違ってくると思います。

──中村さんは“パクリ”と“オマージュ”の違いを、どのように解釈されていますか?

中村佑介 「トレパク」がパクリの一形態だとするなら、“オマージュ”は、みんなが元ネタを知っていることが前提になります。例えばビートルズから影響を受けたバンドのレコードジャケットで、「アビーロード」風に横断歩道を渡っていたり、青りんごが置いていたり、メンバーがジョンと同じ丸眼鏡をかけたり、ポールと同じバイオリンベースを使っていたりがわかりやすいでしょう。

また、モノマネなどが代表的ですが敬意より”からかい”や”おもしろ”の要素が強い“パロディ”も同様で、「あれのオマージュなんでしょ、あれのパロディなんでしょ」と、観る人たちの大多数が共通の見解や文脈で楽しむことができる、もしくは元ネタを宣言している作品。

それが“オマージュ”であり“パロディ”であり“二次創作”でしょう。だからパロディやオマージュは、マイナーな作品やキャラに対しては難しいとも言えますね。

逆に、パクリというのは、元ネタがバレないように隠蔽され、オリジナルだと表明されている作品と制作スタンスを指す。もしも元ネタを指摘されるようなことがあったら「知りません」「黙っといて」という態度──それがパクリです。だからこちらはマイナーな作品から盗ってくることが多い。

実は、「パクリ」と「オマージュ」を比較したとき、表面上での明確な違いというのはあんまりないと思うんですよ。アウトプットされた作品の見栄えや印象としては。

例えばキティちゃんを黒くして、リボンがドクロになってるみたいな作品……そもそもサンリオは二次創作をあまり歓迎してないからそんなのないと思うけど(笑)、仮にそういうのものがあったとしたら、みんなパロディだと捉えるでしょう。誰もが知っているキャラクターですから。

ただ、キティちゃんを黒にしてドクロを加えただけで「私が考えたオリジナルキャラクターです」と言い張っていたら「いや、それはちゃうやん(笑)」ってなりますよね。

そういう姿勢の問題も大いにあると思います。「キティちゃんが大好きで描きました」ではなく「へー『キティちゃん』っていうキャラがいるんですか?知らないなぁー」と言ってしまう姿勢が、パクリの本質かもしれない。

つまり、バレて困るのがパクリで、むしろバレなきゃ作品の真価が伝わらなくて困るのがオマージュやパロディと呼ばれるものだと考えています。

──すごい。非常にわかりやすいですね。

中村佑介 ただ、オマージュやパロディも日本では著作権を侵害する可能性があることには変わりありません。当然、パロディでも訴えられることはある。明らかに参照元が明確な「サザエボン」(※)やコスプレ路上カート「マリカー」も消えてしまったじゃないですか。

中村佑介 法に照らすと、パロディであろうが、オマージュであろうが、パクリだろうが同じです。

結局は権利元が許すか、見逃してくれるか。パロディやオマージュをする人は、他者の作品を使って、実は「許してもらってる」という自覚は強めに持っていた方が、権利元との今のような良好な関係は続くでしょうね。

※『サザエさん』のサザエと『天才バカボン』のバカボンのパパを融合したキャラクター。1995年頃に大阪の土産物店や東京・竹下通りなどで多く見ることができた。無許可で製作・販売されていたが、告訴され、1997年に裁判所から販売禁止命令を出される(参照:https://www.excite.co.jp/news/article/Mogumogunews_033/

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