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  • 2021.02.02

ハードコアなヒップホップより、ラブソングが必要だった MIYACHI&Matt Cab インタビュー

ハードコアなヒップホップより、ラブソングが必要だった MIYACHI&Matt Cab インタビュー

コロナ以降、自然界の万物を敵とせず、共に生きようという考え方が一層意義のあるものになってきつつあるだろう。その意味で、小さな子どもが遊ぶ玩具の音、コンビニの入店音、車の持つエンジンやドア音、あるいは緊急事態宣言のアナウンス──身の回りの馴染み深い様々な構成要素から“音”を抜き出し、全く新鮮な曲として再構築するMatt Cabの実験的な手法は、ある種、自然との“共生”“共存”というテーマの音楽的な実践とも言えるかもしれない。

日本を拠点に活躍するアメリカ出身の音楽プロデューサーであるMatt Cabが作り出す日常をサンプリングしたビートと、そこに英語と日本語を混ぜたユニークな言葉使いと言語感覚でフリーキーに声を乗せるNY在住の日系アメリカ人ラッパー・MIYACHIの楽曲が、いま人々の間でフィールしているのは、そのような要因もあるのではないだろうか。

MIYACHI and Matt Cab - Famima Rap

国籍や人種、地域、文化、言葉、そして距離を“越境”するふたりは、精神性も音楽性もミックスしたジャンボラヤ=ごた混ぜを体現する。11月某日、コロナ禍の混沌の中で(その後混沌は増すことになるのだが)共作されたシングル「Famima Rap」とEP『GOOD NIGHT TOKYO EP』のリリースを控える、Matt CabとMIYACHIへインタビューを敢行した。

インタビュー・執筆:常川拓也 編集:和田拓也 撮影:Takanobu Watanabe

目次

  1. ハードコアなヒップホップより、ラブソングが必要だと思った
  2. ラッパーもサラリーマンも、同じ景色が見れるはず
  3. パンデミック以降の、「日常」というエレメント
  4. ヒップホップもアイドルも、スタイルを貫かないとおもしろくない
  5. ネットに「出口」はない “知らないこと”を知ること

ハードコアなヒップホップより、ラブソングが必要だと思った

────まずおふたりの出会いから伺えますか。

Matt Cab 2017年か2018年にやったユニットのフィーチャリングにMIYACHIが参加してくれました。遊びで作った曲をサウンドクラウドにあげたんですが、それが初めてのコラボレーションですね。

──アンパンマンビートでのコラボはどういった経緯で生まれたのでしょうか。

Matt Cab 息子のおもちゃの音が面白くて、これをサンプルにしたらいいビートになると思いました。でもなんか足りない、ここにめっちゃヤバいラップのバース入ったら最高だと思って、インスタにコメントしてくれてたMIYACHIにすぐに連絡しました。

MIYACHI 僕もやりたかった。

Matt Cab バイリンガルなリリシストで、MCとしてのスキルをずっと尊敬していたので、絶対クオリティ高いものが作れる自信がありました。

──5月には緊急事態宣言のアナウンスをサンプリングした曲も発表されました。

Matt Cab 自粛の間に逆に自分の頭がいつもと違うクリエイティブのメンタリティになりました。それでいろいろ日常生活の音を使ってビートを作った中のひとつで、あのアナウンスの音がどこかキャッチーに聞こえました。適当に遊んで作ってるビートもあれば、ちょっとみんなに考えさせたいビートもある。そういう意味であの音をサンプリングすれば面白い内容になると考えました。

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──あの曲の中でMIYACHIさんは“恋しいものは焼肉とライブ”とラップされていました。コロナ以降、アクティブに曲を発表し、直接的なメッセージも強くなっている印象がありますが、自粛期間中、どういった気持ちでしたか。

MIYACHI いま住んでるブルックリンはコロナで危険な状態になってたから、日本に戻ってライブできなくて寂しかった。ストリーミングだけで食べていくのはキツいから他の仕事をやらなきゃいけない人も周りにいる。いっぱい曲作って、ちゃんとライブなくても食べていけるように、頑張らないといけない気持ちがありました。今まで以上にリリックに意味のある曲を作りたいと思ってます。

Matt Cab 多くの人が亡くなり、難しく辛いこともいっぱいあったけど、誰もが自分の人生で何が大事かを考えさせられたとも思う。

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