

世代やジャンル、人種、古いものと新しいもの、文脈(歴史)と現在、これらの垣根を超えて接続する、「越境」する音楽家へのインタビュー連載。
今回は、多国籍音楽集団・ALIのボーカル、LEOに話を聞いた。

場所、人種、言語、セクシャリティ──壁を越境する音楽家たちへのインタビュー連載。第2回は、ファンクバンド・ALI(アリ)。
ライブサポート含め最大13人という大所帯ながら、正式メンバー全員がミックスという、(いまの社会の現状から考えれば)特異な構成の多国籍音楽集団だ。
アメリカの元プロボクサーであるモハメド・アリの命日(2016年6月3日)から本格的に活動を開始。都内の箱を転々としながらライブを続け、2019年にTVアニメ『BEASTARS』のために書き下ろした「Wild Side」がヒット。国内外で一層の注目を集めている。
メンバーの年齢も人種的バックグラウンドも様々。彼らが鳴らす音も、ジャズ、ソウル、ブルース、ロック、ディスコ、ヒップホップなど多様なエッセンスが同居し、「混在」という言葉がこれほどしっくりくるバンドもそう多くない。
そんなバンドのリーダーが、ボーカルにして発起人のLEOだ。
スーツにオールバックで固めたヘアスタイル、射抜くような視線は、マンマのグレービーソースをほおばる男たちの姿に冷や汗を感じながら円卓を囲む、スコセッシ映画の登場人物になったような感覚にさせる。
しかしその実、彼の言動はラフで親しみやすく、人間臭い。
「ぶつかってるバンドにはいいバンドが多いと思う」と話すように、音楽と人間に対する向き合い方は実直そのものだ。「団結」を意味する“ファンクバンド”を名乗っていることからも、その性格が伺える。今年に入ってすぐにフロントマンのラッパー・JUAがALIを脱退。新しいメンバーが加入したこともあり、LEOの言葉は自身の覚悟をより力強く映し出す。
「覚悟」「団結」──。ややもすれば時代の奔流に押し流されてしまいそうな言葉。振る舞いとともに、彼のような(もちろんいい意味でだが)古臭い人間ももうなかなか出会うことがなくなった。
しかし一方で、メンバーとの意見の対立、音楽的嗜好の違いを「面白い」と捉え、メインストリームのヒップホップと、ジャズやブルース、ファンクなどのバンドサウンドをかけ合わせる柔軟性も併せ持つ。
世代やジャンル、人種、古いものと新しいもの、文脈(歴史)と現在、これらの垣根を取り払い接続する媒介者のLEO。この連載のテーマである「越境」を映し出すバンドマンの彼に、ALIの今までとこれから、音楽に救われたという自身の生い立ちについて聞いた。
インタビュー:和田拓也 構成・執筆:本田悠喜 撮影:高橋勇人 編集:和田拓也
目次
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「いつかMステに出たら、次の日は絶対店頭に立つ」
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「団結」を表す“ファンク”を掲げる理由
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メンバー脱退、メジャー前夜、ALIとLEOの岐路
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やっぱり、バンドが世界一かっこいい
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他人と違っていい。それを教えてくれた音楽に生かされている
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どのカルチャーも過去と今が反動し合い、根底で繋がっている
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ヒップホップ全盛の時代に、ファンクバンドをやる理由
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