LAM インタビュー「僕は天才ではない、だけど──」
2020.11.21
日本を代表するアニメーターの一人である田中将賀。
アニメ『とらドラ!』や『君の名は。』を手がけた彼の語る、アニメーターの極意。
クリエイター
この記事の制作者たち
『家庭教師ヒットマンREBORN!』や『とらドラ!』などのキャラクターデザインをはじめ、数々の話題作に携わってきたアニメーター・田中将賀さん。
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』や『心が叫びたがってるんだ。』といったオリジナルアニメのキャタクターデザインを手がけ、アニメファン以外の層にも広く支持を集める作品への参加が目立っている。
特に象徴的なのは、2016年に公開され、記録的なヒットとなった新海誠監督による劇場版アニメ『君の名は。』だろう。同じくキャタクターデザインを手がけた『天気の子』を含め、現代において最も広く人の目に触れているアニメーターと言っても過言ではないかもしれない。
その田中さんが、アニメーターを目指した経緯から、これまでに手がけてきた作品についてのエピソードなど、自身のキャリアを振り返る。それは結果として、後続のクリエイターへの提言にもなっている。
そして、アニメやイラストを取り巻く今の状況は、トップクリエイターの目からはどう映っているのか。
※本稿は、図録『ILLUSTRATION 2018』収録インタビューの転載として2018年に『KAI-YOU.net』に掲載された記事を再構成したもの
目次
- アニメーターになるために“捨てた”もの
- 田中将賀の考える「原作への敬意」
- 「万人向け」にどう向き合うか
- 「『君の名は。』以降、目標を見失いかけた」
- より良い絵を描くために意識していること
──アニメーターとしてキャリアをスタートされた田中さんですが、現在のお仕事をするようになった経緯について聞かせてください。
田中将賀 理系の大学に通っていたのですが、授業についていけず遊び呆けるようになり、このまま大学にいてもしょうがないという風になってしまいました。
そんな中で、自分が受け身にならずにできることは、絵を描くことしかありませんでした。美大に進学していた従兄弟の影響もあって、絵だけはずっと描いていたんです。
僕は『週刊少年ジャンプ』の黄金世代で、『ドラゴンボール』や『北斗の拳』『聖闘士星矢』といった少年漫画、特にバスケットボールをやっていたので井上雄彦先生の『スラムダンク』をよく真似して描いてました。ただ、大学に入学する前には絵の世界へ進むことを親に猛反対されていたので、親に黙って大学を辞めて専門学校に入ったんです。
──絵に関わる仕事として、漫画家やイラストレーターではなくアニメーターを目指されたのはなぜでしょうか?
田中将賀 アニメーターを選んだのは、枚数さえ描ければ確実にお金になる仕事だと考えたからです。漫画家やイラストレーターだといくら枚数を描いても、その価値を認められなければお金を稼ぐことはできません。
僕は自分の実力や才能でお金がもらえるとはまったく思っていなかったので、自分の唯一の武器である『絵を描くこと』の中でも一番現実的に稼げそうな仕事だと思い選んだんです。
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