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  • 2021.08.22

hmngインタビュー 商業からの転身、インディーアニメの熱量に魅せられて

SNSを中心にしたアニメーション・クリエイターのコミュニティ「インディーアニメ」の世界では、次々と才能の萌芽が生まれている。2021年に入ってからも界隈がまとう創作の熱が収まる気配はなく、その勢いは徐々に企業をも動かしつつある。

hmngインタビュー 商業からの転身、インディーアニメの熱量に魅せられて

かねてよりEveYOASOBIずっと真夜中でいいのに。ヨルシカといった人気アーティストがアニメMV(AMV)を積極的に活用していることもあり、彼らのルーツと近いボカロ・同人音楽の世界でも、アニメMVの制作・起用が増えている。

同時に、「CLIP STUDIO PAINT」をはじめとするイラストツールの進化、「ループアニメ」という個人の制作コストとしても現実的な作品フォーマットの周知、ハッシュタグ「#indie_anime」の隆盛もあり、アニメ制作のハードルは徐々に下がっている。

イラストレーターとして活躍していた人が、自身の絵を動かしてアニメにも挑戦するなど、一人二役をこなすクリエイターも珍しくなくなった。

そんな中、いま企業や個人がこぞってオファーを送るアニメーター兼イラストレーターがいる。元テレビアニメーターのhmngさんだ。

新卒でアニメスタジオ・TRRIGERの門をたたき、作画監督を経て独立。しばらくフリーのアニメーターとして活躍したが、この春『呪術廻戦』の作画監督を務めたことを区切りに、インディーアニメの世界に転向。あわせてイラストレーターの仕事も本格的にスタートし、直近では、YOASOBIHOWL BE QUIETのMV・ジャケットアートワークを担当している。先日公開された、ホロライブ所属のバーチャルYouTuber、湊あくあのオリジナルソング「海想列車」のMVも手掛けた。

海想列車/湊あくあ

人の絵を描く商業アニメーションの世界から、自分の絵を描くアニメーター・イラストレーターへと“生まれ直した”hmngさん。新しい道を恐れず突き進む彼女の姿は、クリエイターの新しい可能性を予感させる。インタビューを通して、その輪郭を探った。

目次

  1. GIFアニメ作品の投稿 半年でTwitterフォロワー数が10倍に
  2. 女の子の、豊かな感情を切り取りたい
  3. 高校時代のhmngを惹きつけた、今石洋之の表現
  4. TRIGGERでの日々と、独立
  5. “ファッションGIF”がバズる理由
  6. hmngを魅了した、インディーアニメの熱量と自由さ

GIFアニメ作品の投稿 半年でTwitterフォロワー数が10倍に

──今年2月には『呪術廻戦』19話の作画監督もされていて、てっきり今後もテレビや劇場などの商業アニメの仕事をガンガンやっていくのかと思っていたんです。今は商業アニメーションの仕事は請けていないと伺って驚きました。

hmng 今もアニメMVをつくったりしているのでアニメーターではあるんですが、『呪術廻戦』を区切りに、商業アニメの業界から“転身”しました。去年の冬以降、オリジナルの絵を描きはじめて、今後は自分の絵を描きたい気持ちが強くなっていて。

──オリジナルの絵を描きはじめたのは、何かきっかけがあったんですか?

hmng 今年1月、アーティストのWiz_niccくんに誘っていただいて、ループアニメの動画をつくりました。彼との交流の中でイラストやGIFを描くようになったんですが、そうした作品をTwitterにアップしていたら、他のアーティストさんからもMVやイラストのお声がけをいただけたんです。もともと音楽のお仕事への憧れはありましたし、せっかくいただいた声にお応えしていきたいと思い、3月に転身しました。

──先日、hmngさんのフォロワーが9万人を超えられました。私がhmngさんを知ったのも今年2月ぐらいでしたが、その頃はフォロワー2~3万人ぐらいでしたよね?

hmng そうですね。もっと言えば、昨年12月下旬にファッションGIFアニメでバズる前は8000人くらいでした。

──ここ半年くらいで10倍以上に増えたんですね。実績のあるテレビアニメからの転身は、怖くなかったですか?

hmng 転身と言っても全く別の職業ではなく、同じ絵の世界の中ですから、怖くはなかったですね。もちろん新しいことをはじめるがゆえの、先が見えない不安はありますが。またアニメの仕事がしたくなったら、戻る可能性もあります。

ただ、今の活動には、商業アニメのときとはまた違う楽しさがあって。商業アニメの現場は、基本的に人の絵柄を描いて動かすのが仕事です。それもすごく好きなんですけど、今やっている自主制作では、ディレクションからキャラクターデザイン、作画まで全て自分一人で担当していて。そのスタイルが自分に合っているみたいで、ずっと描けちゃうんですよね。

──お仕事以外にもイラストやGIFアニメなど、作品をハイペースで投稿されていますね。

hmng 今描いているのは全部自分の絵だから、そもそも作品を生み出すスピードが速いというのはありますね。こだわりとか妥協も全部自分のさじ加減で、だからこそ省けた工程もあって。自分の絵ってこんなに描きやすいんだな、って感じています。なんだか絵を描きはじめた人みたいなコメントですけど。

──生まれ直したというか。

hmng そうですね。生まれ直したような感覚です。こんなに長年描き続けてきた絵の世界で、まだ新しい発見があって、それが楽しくてずっと描いている。自分がどんどん成長できている自信があるから、今、描くのがすごく楽しくて。描けば描くほどモチベーションが上がっていくような状態になってます。

──……寝てます?

hmng 寝てますよ! よく聞かれるんですけど、8時間以上は寝てます。ただ起きている間はほぼ絵を描き続けていて、集中力が続くおかげで、仕事も趣味のお絵かきも両方できている感じです。小さいときから、社会人になってもずーっと絵を描いていて、これだけ描いててもまだのびしろがあるって、すごく嬉しいことだと思うんですよね。今後もずっとそうなのかなと思うと、ワクワクしかないんです。

──趣味でアップしているイラストは、どれぐらいの時間で描いていますか?

hmng 30分から3時間くらいで完成させてますね。ループのGIFアニメだったら6時間くらい。仕事はもっとたくさんの時間をかけるんですけど。

──早いですね! そのスピード感はテレビアニメの現場で培われたんでしょうか?

hmng 基礎的な速さはそうだと思います。アニメーターをしていると、画力や手癖がすごくつくから。あとは転身したときに、自分なりに作業の効率化について研究したんです。これから仕事として自分の絵を描いていくんだったら、たくさん描けるようにならなきゃいけないと思って。

──どのようなポイントで効率化しているのでしょうか?

hmng 基本的に影は塗らず、ハイライトと画面処理で立体感を表現するとか、背景をぼかすことで華やかさを出すとか、自作フィルターで絵の密度を上げるとか……画風や描き方を最初に固めたんです。後々楽をするために今面倒くさいことをする、っていうのが好きで。

──現在モチベーションに影響を受けていたり、仲の良いクリエイターさんはいますか?

hmng 1人は、成人向け漫画家のでんぶ腿先生です。学生時代からの仲で、漫画家とアニメ・イラストとで少しジャンルは違うんですけど、絵を描くという点では共通していますから、通じ合う部分も大きくて。毎日何時間も作業通話をしていて、何度も一緒に修羅場をくぐり抜けてきた、戦友みたいな存在ですね。

もう1人は、音楽家でボカロPのbuzzGさん。buzzGさんは制作の話も趣味の話も仕事の話もできて、人としてもクリエイターとしても尊敬しています。もともと私がボカロをよく聴いていたこともあって、buzzさんのつくるボカロ曲が大好きなんです。

でんぶとbuzzGさんは本当に心の支えです。二人がいなかったら、今みたいに新しいことをやっていても、こんなにうまくいっていなかったんじゃないかと思うくらい、私にとって大切な人たちですね。

女の子の、豊かな感情を切り取りたい

──hmngさんの絵は、ルック全体から感じる湿度や、女の子の表情の奥ゆかしさも魅力ですよね。ただ可愛いだけじゃないというか。

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