LGBTQ差別はなぜレゲエに深く根差してきたのか? ヘイト騒動に巻き込まれたMINMIインタビューも
2022.11.05
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私たちは現在、ソーシャルメディアで言葉と同じくらいリアクションGIFやネタ画像でコミュニケーションを取っている。「ミーム」と呼ばれるインターネット上でコピー・拡散され流通するそれらのイメージは、いまや手っ取り早く簡単に情報を伝達する会話の一部として日常に組み込まれている。
2015年10月13日、大統領選への出馬を表明したばかりのドナルド・トランプは、自身に扮したカエルの画像をリツイートした。このカエル=ぺぺは、白人至上主義者やオルト・ライト(オルタナ右翼)を象徴するヘイトシンボルとしてミーム化されていたキャラクターであり、このときトランプはそれを認識した上で、彼らへシグナルを送ったのだった。しかし、本来のぺぺは単なる漫画のキャラクターに過ぎなかった。
『フィールズ・グッド・マン』は、米アンダーグラウンド・コミック界の人気漫画家、マット・フューリーが創作した漫画『ボーイズ・クラブ』のカエルのキャラクターであるぺぺが辿った数奇で不幸な運命をひとつの筋道として、現在のアメリカ社会に巻き起こった急激な変化、極右化する世界を考察するドキュメンタリーだ。
政治の二極化、陰謀論、ヘイトスピーチ、不寛容、反知性主義──アメリカ現代社会に起こっているこのような事態は、インターネットの匿名掲示板「4chan」(日本のふたば☆ちゃんねる/2ちゃんねるに由来する)の文化=チャン・カルチャーの影響が根本にあると本作は分析する。
4chanは、鬱屈した感情を抱えた若者の受け皿となり、日常では決して表立って言えなかったはずの極端な思想を醸成した。4ちゃんねらーは疎外感や絶望を表すためにミームを作成したが、いつしかそれは、ニヒリズムや暴力を呼びかける道具ともなった。その中でのんきで無邪気なぺぺは、彼らのミームとして、歪んだ憎しみや悪意、プロパガンダのために悪用されてしまったのだ。
ぺぺを通してメディア研究を図る本作を起点として、4chanの誹謗中傷など攻撃的な言動が主流のソーシャルメディア、そして政治にどのように移っていったのか、アメリカ大統領選のミーム化、社会を善と悪に二分するミームの機能について、監督のアーサー・ジョーンズとプロデューサーのジョルジオ・アンジェリーニにインタビューを行った。
インタビュー・文:常川拓也 編集:和田拓也 (C)2020 Feels Good Man Film LLC
目次
- 私たちの世代での最大のストーリー
- チャン・カルチャーが、はじめてポップカルチャーと政治をミックスした
- 敵対心を生み出す循環
──『フィールズ・グッド・マン』は、ペペを通して、コミックのキャラクターがミーム化していく過程から、オルト・ライトのマスコット、そしてドナルド・トランプのアバターへと歪曲されていったアメリカ社会の動きを網羅的に説明しています。当初から政治とカルチャーが交錯する時代への批評を試みる意識はあったのでしょうか。
アーサー・ジョーンズ(以下、アーサー) ジョルジオが以前に『Owned: A Tale of Two Americans』(2018)という作品を作っているのですが、それはまさに芸術と政治が交錯しているような題材でした。私はその映画のアニメーションを担当していました。
ただ、私自身は最初からそこまで意識していたわけではなく、『フィールズ・グッド・マン』は、私がマット・フューリーのコミックのファンで、彼の友人だというところから始まりました。なので、まずはマットの身に起きたことを可能な限り親しみやすく共感できるような方法で伝えたいという気持ちがあったのです。そこからぺぺというすごくユニークな題材を用いて、アメリカでいま何が起こっているのかを描きたいと考えるようになりました。
──Netflixの『監視資本主義:デジタル社会がもたらす光と影』(2020)や『グレート・ハック:SNS史上最悪のスキャンダル』(2019)など、近年、ソーシャルメディアが私たちをどのようにコントロールしているかを探ったドキュメンタリーが増えつつある印象がありますが、本作は、インターネット文化の中でもチャン・カルチャーを洞察しています。匿名のプラットフォームである4chanのどのような側面に注目しましたか。
アーサー 大きな質問だと思いますが、最近、私がよく話していることでもあるのですが、4chanから発生した極端な思想が、より一般的なメインストリームのソーシャルメディアの方に入り込む動きができていると思います。それはアメリカの政治を見ていてもわかるように、人種差別や外国人嫌悪、ヘイトスピーチなど4chanから出てきた過激な思考がすぐにメインストリームに流れてきて、それが現実化しているのです。そこで私たちは、カエルのぺぺが、こうした大きな社会問題を表すためのユニークなケーススタディになると考えました。
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