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  • 2022.03.04

「キャラクターデザイン」を西洋美術史から紐解く 歴史画に人種差別問題まで

キャラクターデザインと西洋美術。

歴史を紐解くことで、その根源的な思想と背景が見えてくる。

「キャラクターデザイン」を西洋美術史から紐解く 歴史画に人種差別問題まで

ポップカルチャーにおいて欠かすことのできない存在、イラストレーター

キービジュアルにキャラクターデザイン。人気イラストレーターはどんなプロジェクトにも引っ張りだこの存在。当然、それに憧れるイラストレーターの卵も数多い。

そんな未来のイラストレーターたちのために教壇に立つのが松下哲也さんだ。ロマン主義絵画史と近代挿画史を専門としながら、キャラクター表現史についての著述、最近では動画配信プラットフォーム「シラス」のチャンネル「松下哲也のアート講釈日本地」(外部リンク)配信も盛んに行っている。

キャラクター表現史という聞き慣れない分野では、いったいどんな研究や講義が行われているのか。

目次

  1. ポップカルチャーと近接する前衛芸術や現代美術
  2. 理論と鑑賞と実践を兼ねた課題
  3. キャラクター表現は、西洋美術史からも語られるべきである
  4. キャラクターデザインと表裏にある「観相学」

ポップカルチャーと近接する前衛芸術や現代美術

松下哲也さん

松下哲也さん

──松下さんは現在、非常勤講師として三つの大学で講義されてます。どのような講義をされているのでしょうか?

松下哲也 以前、一般大学で教えていたときは西洋美術史を担当していました。大教室で何百人かが講義に参加する、いわゆるパンキョー(「一般教養科目」の略)です。

また、どこの大学にもポップカルチャー論で卒論を書きたい学生はいっぱいいるんです。けれど、芸術学科や哲学科にはそれを教える機能はない。なので「松下、やってくれ」ということでポップカルチャー史・キャラクター表現史も担当しましたね。

現在は、まず僕の出身校である多摩美術大学では理論系の芸術学科で教えています。戦後日本の前衛芸術の理論的旗手だった東野芳明が80年代につくった学科です。

この学科は批評家や研究者、あるいは学芸員やキュレーターを養成するところで、ここではそういう美術関係の仕事を志望する学生に向けた授業をやっています。

ここでいうポップカルチャーとは、たとえば「ゴジラ」や「セーラームーン」、「エヴァンゲリオン」のような特撮やアニメ、漫画を指します。じつのところ、それをつくっている人たちも学校や職場で勉強してプロになるのだから、特撮一本、アニメ一本でやってきた人はそんなにいません。彼らにも当然先生や友達がいて、戦後のポップカルチャーと前衛芸術や現代美術の間には明らかな人的交流と影響関係がありました。

例えば円谷プロの円谷英二は怪獣映画で有名ですが、初期の仕事は、たとえば川端康成が脚本を書き衣笠貞之助が監督したアバンギャルド映画『狂つた一頁』の撮影補助を担当していたことが知られています。また、円谷は戦後実験映画の先駆けとみなされている松本俊夫監督『銀輪』の特撮を担当しています。この『銀輪』は松本、円谷、そして美術評論家の滝口修造のもとに集まった若手芸術家集団「実験工房」のコラボレーションによって成立しました。

ちなみに、滝口は東宝の前身であるP.C.L.でスクリプター(記録係)として働いていましたが、職場の後輩には後に『ゴジラ』を監督する本多猪四郎がいます。端的に言って、ファインアートとポップカルチャーは、近い世界だと言えるんです。

僕は、そのような領域横断的な批評や研究をするための視点をどうやって得るべきかということを、歴史を軸にして講義してますね。

──なるほど。京都芸術大学ではどんなことを教えられているんですか?

松下哲也 通信教育部 イラストレーションコースは2021年度に設立されたばかりの学科です。ピクシブと大学が協業で立ち上げたコースです。

松下哲也 僕の担当科目は3回生以上が履修する科目なので、今のところは3年時編入の学生の課題を採点し始めたという段階です。ですので、この大学での仕事はまだ未知数です。

ここでの授業のために作成した教材のキモは、キャラクター表現、なんでもいいんですけど、たとえばここにある『ラブライブ!サンシャイン!!』のルビィちゃんの絵とかですね。

「『ラブライブ!』ってこれですね」と、黒澤ルビィのコースターを見せてくれる松下さん

「『ラブライブ!』ってこれですね」と、黒澤ルビィのコースターを見せてくれる松下さん

そういう現代日本のキャラクター文化と美術史を同じ絵の歴史という大河の流れの中で捉えようということです。

美術史の授業は通常、古代、中世、近世、近代と編年体で各時代の様式の特徴を教え、主要作品を挙げることが多いですが、このコースはあくまでも実技系なので、絵を描くために必要な内容に絞っています。具体的には、絵に関するキーワードを立てて、それに関連する重要作品とそのコンテクスト、その背後にある理論を教えるというものです。

たとえば「遠近法」の回は遠近法の歴史や種類、そして具体的な描き方を指導しています。「色彩論」だったら色彩論と光学の歴史、その理論を背景にした絵画はどういうものかを説明しています。

僕も昔絵を描いていたので実感を込めて言うのですが、絵の上達には歴史と理論の知識が欠かせません。絵の描き方について我々が悩むことのほとんどは歴史上の巨匠や学者がすでに解決しているわけだから、よくあるつまづきはサクッと解決してサクッとうまくなろうよという考えで授業を構成しています。

というわけで、最終的には簡単なレポートとイラスト制作の両方を課す実習授業として構成しています。

京都精華大学では、マンガ学部のキャラクターデザインコースで教えています。ここもキャラクター関連のクリエイターを志望する学生が多い実技系のコースです。複数の教員で担当する1回生向けの「マンガ基礎実習」という必修科目の中で、僕は座学と実技のハイブリッドをやっています。

京都芸術大学でも京都精華大学でも、キャラクター表現に必要な歴史と理論の知識を教えた上で、造形作品の分析をさせています。

理論と鑑賞と実践を兼ねた課題

──造形作品の分析というと具体的にどういうことでしょうか?

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