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2022.11.05
サブスク全盛期、ドラマよりアニメよりバラエティより世界で人気を博している「シットコム」(シチュエーション・コメディ)。その中毒性、そして新たな作品の潮流について──
※本稿は、2020年に「KAI-YOU.net」で配信された記事を再構成したもの
世代によってはテレビと同等かそれ以上の影響力を持ち、世界中を席巻する動画配信サービス。その筆頭と言えるのがNetflixだ。
日々新コンテンツが投入される同サービスだが、世界の視聴者たちはどの番組を観ているのだろう?
80年代リバイバルを牽引するSF作品『ストレンジャー・シングス』? 映画顔負けのスケールで麻薬戦争を描いた大河ドラマ『ナルコス』? はたまた世界中で反響を呼びその後日本版も登場した変身番組『クィア・アイ』だろうか?
実はこのNetflixの看板とも言えるオリジナル作品たちは、例えば2018年のデータでは「Netflixで最も視聴されている上位20作品」に1つもランクインをしていないという(「Vox.com」が報じた2018年の視聴データより)。
代わりに上位を占めているのは、日本でも90年代に爆発的な人気を誇った『フレンズ』などのいわゆる“シットコム作品”だ(詳しくは後述する)。
2020年をもってその放映権がHBO MAXという動画配信サービスに移る同作品は、視聴割合4.13%を誇るNetflixの真の看板作品でもあったのだ(日本では2022年現在、Netflixでも同番組の配信は継続中)。
Netflixが同番組の配信権を獲得するのに約110億円(1億ドル)、それも2019年だけでその巨額を投じていることからも、人気の高さが十分にうかがえるだろう(The New York Times)。
目次
- 『フレンズ』 時代を映すシットコム
- シットコムの商品価値は「中毒性」
- カナダの片田舎から叩きつけられた『Letterkenny』
- 一見さんお断り? 新機軸の「中毒性」
海外ドラマファンでない限り、この「シットコム」(シチュエーション・コメディ)という言葉に馴染みのない読者もいるだろう。
日本でも人気のあった『フルハウス』のような、固定のキャストによる会話劇で進行するコメディ作品と言えばわかりやすいだろうか。近年のトレンド的には減少気味ではあるが、登場人物が飛ばすジョークに対して句読点の様に挟み込まれるLaugh Track(録音された観客の笑い声)も一つの特徴だ。
『フルハウス』を例に出してしまうと、シットコムがいかにもアメリカ的で大味な作品形態に思えるかもしれないが、人気のシットコムは時代時代の空気感や社会背景を巧みに反映することで視聴者の支持を得てきた。
先述の『フレンズ』は都市部に住む20代から30代前半の若者たちの悲喜こもごもを描いている。心理学者のジェフリー・アーネットが2000年に提唱した29歳までの成人形成期(emerging adulthood)、つまり青年から成人への過渡期にある新時代の若者たちの感情を上手くすくいあげることで人気を得た。
現に、2004年の『フレンズ』終了後から現在に至るまで、その模倣作が氾濫し続けているし、それぞれが時代や多様化するコミュニティごとの機微を作品に反映してきた。
シットコムが描くのは若者たちの生活に限らない。2009年に放送を開始した『モダン・ファミリー』という作品は2010年代を象徴するシットコムの一つだ。
同作品を日本の長寿シットコムにたとえて言うなら「フネと熟年離婚をした波平が、若くて美人なフィリピン人の奥さんを迎えて、大人になったカツオが中島と同性婚をして中国から養子を取った」世界線の作品だ。
もちろん日本でも全くありえない話ではないのだが、『モダン・ファミリー』は現代アメリカのリアルな家族の在り方を面白おかしく描いている。そして何よりも、その形態に変化はあれども、物語は普遍的な“家族愛”の話に集約されているため、幅広い年齢層の支持を得ている。
シットコムの魅力はなんと言っても、その世界や人物相関図に浸っていくうちに得られる“疑似的な友人・家族感覚”だ。
定番の舞台セット上で、お馴染みの顔ぶれがエピソード毎に普遍的な問題に直面し、新しい教訓を得ていく。それが20分間隔でループしていくことで、視聴者は登場人物たちと一緒に成長している様な感覚を得る。
イギリスのある臨床心理士はこのシットコム的な反復こそが「視聴者が抱える不安感を解消」する役割を果たしていると指摘している(外部リンク)。
そして、この反復こそがシットコムの人気を生み出している“中毒性”の源泉に他ならない。
NetflixやHuluで日々更新されていく新番組に圧倒される視聴者たちは、結局住み慣れた我が家や友達の輪に還っていく。
サブスクリプション(定期購読)・ビンジウォッチ(イッキ見)時代においては、その中毒性こそが各社サービスが喉から手が出るほど求めている、視聴者たちを繋ぎ止める「商品」なのだ。
アメリカの各テレビ局や競合企業がストリーミング・サービスを立ち上げる中、NetflixやHuluやAmazon Prime Videoの独占性は徐々に失われつつある。
前述したデータが示すように、Netflixの視聴割合上位20作品のうち13作品(うち7作品がシットコム)が他社制作であるため放映権が他サービスに流出する可能性がある。
明らかに、既存サービスはオリジナルのシットコム制作に注力し始めていて、その成果は様々だが、あまり振るわず早々に見切りを付けられる作品も少なくないのが現状だ(外部リンク)。
そんな中で、2019年5月にストリーミング・サービス業界最大手の一つ・Huluが、あるカナダ発のシットコムの独占配信権を獲得したというニュースが密かな話題を呼んだ。
長くなったが、実はここからが本題である。
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