「もっとみんなが活躍できるジャンルであってほしい」伴名練のSF論
2022.05.22
「設定考証」とは、事実との答え合わせをするものではなく、フィクションにリアリティをもたらすものである──『銀河英雄伝説 DIE NEUE THESE』や『ドリフターズ』、現在放送中の『機動戦士ガンダム 水星の魔女』まで、多くの作品に参加する白土晴一氏にインタビュー。
※本稿は、2016年に「KAI-YOU.net」で掲載された原稿を再構成している
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白土晴一さんは、『ヨルムンガンド』『純潔のマリア』『ジョーカー・ゲーム』など、コアなアニメファンや海外の視聴者の間で高い評価を受けた作品に設定考証、チーフリサーチャーとして参加してきた。
2016年には、平野耕太さんの漫画を原作としたTVアニメ『ドリフターズ』の設定考証を手がけた。
本作は、古今東西の歴史上の人物が異世界に集結し戦いを繰り広げるというファンタジー作品。その混沌とした世界観のリアリティを担保するのが、設定考証だ。
設定考証は、作画や美術、音響関係などと比べて、これまで話題にのぼることが少なかった役職だが、近年その存在感は増す一方だ。
漫画、アニメ、ゲームなど多媒体で活躍する白土さんに、設定考証とは何か、そしてその仕事内容や今後の展望についてうかがった。
目次
- 設定考証は現実や事実に即しているか検証する仕事……ではありません!
- 設定考証のニーズが増えてきたのは、“目が肥えてきた”から
- 調べて考えた設定をどこまで捨てられるか?
- アニメと漫画の設定考証の違いとは?
- 『ドリフターズ』ではいかに“平野世界”の強度を高めていくかを意識した
──白土さんが設定考証のお仕事に就いたきっかけとは何だったのでしょうか?
白土晴一(以下、白土) 僕の師匠はSF作家の横田順彌さんなんですが(2019年に逝去)、昔は普通のライターをしながら、師匠やほかの作家さんのお手伝いで資料を調べたりしていたんです。
アニメや漫画関係で最初に関わったのは、2006年に放送されたアニメの『タクティカルロア』で、コンセプトスーパーバイザーの小倉信也さんから「白土君は天気に詳しいかね?」と尋ねられたので「詳しくはないけど嫌いじゃないですよ」と答えたら、いつの間にか(作中に登場する)消えない台風の設定を考えるハメになりまして(笑)。
それからスタジオに出入りして「港湾施設の概要ってわかる?」」といった質問に答えるうちに、後ろのガヤ台詞とかを書くようになって、今に至ります。
──そもそも設定考証とは、具体的にどのようなお仕事なのでしょうか?
白土 アニメや漫画を含め、基本的にフィクション全般はウソで構成されているものなので、そこにリアリティを与えるための情報を提案するのが“考証”の役割だと思っています。
白土 たとえば歴史ものであれば、舞台となる時代や土地の文化や歴史、風俗に関する資料をまとめて提示します。『ジョーカー・ゲーム』ではレイアウトを見て、当時の建築様式や道路の舗装仕様をチェックしたりもしました。道幅を確認したり、当時はブロック塀はないので生け垣や板垣にしてくれという指示を出したり。
白土 あと、『ヨルムンガンド』のようなミリタリーものですと武器売買の契約書とか、作品中に出てくる文書を書くことも多いですね。外国を舞台にした作品の場合は、いちおう英語でそれらの下書きくらいまではします。文法に自信がないので、必ずネイティブチェックはしてもらいますけれど。
白土 でも実は、ひたすらそういった情報を固めてリアル=現実に近づければリアリティが出るかといえば、そういうわけではない。そもそも本当にリアルなものを楽しみたいのならドキュメンタリーかノンフィクション作品を見ればいいわけで。
──リアルであることと作品にリアリティがあることは違う、と。
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