言葉の変遷で辿るVの歴史 英語版Wikipediaで「バーチャルYouTuber」が「VTuber」に
2023.02.03
日本一のMCを決めるMCバトル大会「KOK」の2022FINALのレポートを前後編の2回に渡ってお届け。
ストリートの流儀を体現する「KOK」が放った強烈なメッセージを、ラッパー・ハハノシキュウが紐解く。
クリエイター
この記事の制作者たち
(バトルが興行になってお金になってる反面)このカルチャーの精神っていうのは(中略)全くと言っていいほど理解されていないと思うんで。そういうのをまた一つずつゆっくり理解してもらうっていう過程を進むんだなっていう感じです「呂布カルマ vs MOL53 FSL VOL.1 記者会見」よりMOL53
目次
- 2022年12月27日(火)「MCバトルは何のため?」
- 2023年01月22日(日)「今年のKOKはメンツがつまらない?」
- 1回戦第1試合 S-kaine vs 阿修羅(DJ PANASONIC STAGE)
- 1回戦第2試合 紅蓮 vs REDWING(DJ ZAI STAGE)
- 1回戦第3試合 CIMA vs MAKA(DJ KOPERO STAGE)
- 1回戦第4試合 MOL53 vs T-TANGG(peko STAGE)
- 1回戦第5試合 REIDAM vs Fuma no KTR(BEAT奉行 STAGE)
- 「REIDAM vs Fuma no KTR」というステージが放った強烈なメッセージ
この日の僕、ハハノシキュウは「小倉MC BATTLE GRAND CHAMPIONSHIP 2022 IN ZEPP FUKUOKA」を終えて、打ち上げ会場に来ていた。
GOMESSくん、MIDOさんと同じテーブルを囲んでグレープフルーツジュースを飲んでいた。最初の乾杯以降は自分の席から動かないで、話しかけられたらしゃべって、話しかけられなかったらボーッとする、というのを繰り返す。そんなニュートラルな楽しみ方でいつも満足してしまっている。
だけど、この日の僕は、らしくもなく一度だけ席を移動した。
どうしてそうしたのか、自分でもよくわからない。酒を飲んでたわけではない。だから酔った勢いとかでもない。
たぶん、魔が差したんだと思う。
(KOK主宰の)9SARIの三浦さんと裂固くんが話し込んでいるのが視界に入ったのだ。
ちょうど、2人の間の椅子に座っていた人(ちなみに梵頭さんではない)が違うテーブルに移動していたみたいで、導かれるように僕はグラスを持ってそこに座った。
「あ、シキュウ、お疲れー」「あっ、お疲れっすー」
コミュ力の低い僕を2人は快く受け入れてくれた。
「なんの話してたんすか?」
「裂固がね」
「今の俺にとって『バトルが生き甲斐だ』って話してたんすよ」
「バトルって仕事として嫌々出るもんじゃないの?(笑)」
「いや、俺はバトルがないと生きていけないんすよ。バトル前の『やるぞー!』って気持ちが昂る感じがたまんないっていうか」
「ああ、それはちょっとわかる! なんていうか、ネタ仕込むとかそういうんじゃなくて、心の置きどころみたいなのを準備しなきゃいけない感じよね」
「そうそう、そうなんすよ。で、バトルが続くとその準備みたいなのが間に合わない時あるじゃないですか? 例えば1回戦、2回戦、準決勝ってどんどんスパンが短くなっていく感じとか、そん時が一番気持ちいいんすよね」
「決勝戦だと1バースごとにそうなるよね。なんかわかる。前日いきなりリザーバーで声かかったりしてもそうなるし、なぜかその方が調子良かったりするよね。あっ、三浦さんが前にSKJの代わりに俺を呼んでくれたじゃないですか?」
「KING OF KINGS vs 真 ADRENALINEの(KT)Zepp Yokohamaの時だよね」
「そうそう、あん時、結構そんな感じでしたよ。頭真っ白なんだけどめっちゃ集中してるっていうか」
酒の席だから実際に話した内容と相違する部分もあるかもしれないが、この後に裂固くんが言った一言だけははっきりと覚えている。
「だから俺、12月、1月ってバトル入れまくってKOKまで途切れないようにしてるんすよ」
僕の中でMCバトルは「やりたくないけど、やらないといけないもの」という認識がある。MCバトルで優勝することは「目的」ではなく「手段」だと思っているからだ。
特に、ある程度名前が売れてからだと「目的」を見失いそうになってしまう。最初は名前を売るのが「目的」だったのに、それを達成できてしまうと何のためにバトルに出ているのかわからなくなる。バトルの勝敗と音源の売り上げに因果関係はほとんど感じないし、生活のためのシノギみたいになってきたりもする。
「マジでラッパーの中で一番好きです! 本当に応援してます!」
物販で言われる純粋な言葉に心から感謝しつつも「でも、君、ライブに来てくれたことないよね」と思ってしまう自分がいたりするから世知辛い。いや、応援されることはどんな形であれ嬉しいので、気にしないでください。
僕の場合は「目的」が2つある。
一つは「お金」。
僕の場合は賞金目当てなんて格好いいことは言えないが、今のバトルシーンは一昔前に比べたらギャラも良くなったし、普段のライブよりも格段に物販が売れる。
もう一つは「忘れられないこと」。
格好つけた言い方をするなら「FAMOUS」だ。
僕のような「ただの二流ラッパー」は毎年入ってくる新規のバトルファンの目が届かない日陰に暮らしているため、定期的に存在をアピールしないと最初からそこにいないものとされてしまう。極端な話、大きなバトルに顔を出さないと活動すらしてないと思われてしまうようなシーンだ。
例えば、鎮座DOPENESSがバトルに出なくなってから「ラップやめちゃったのかな?」というコメントを見つけた時はさすがに萎えた。
賽の河原じゃないが、僕のようなわかりづらいラッパーは毎年毎年、新一年生に同じ話を繰り返さないといけないのだ。
バトルに出なくても済むくらい他のことで──大半のラッパーにとっては曲で──稼げたらそれに越したことはないのだけど。
という具合に、僕はMCバトルに対して打算的な見方しかできないようになってしまっている。
しかし、KOKのステージではそんな物の考え方は全く役に立たない。
「なんでMCバトルに出るの?」
そんな質問をしたら本選出場者のほとんどがこう答えるだろう。
「日本一のタイトルが欲しいから」
優勝することそのものが「目的」なのだ。
「今年のKOKはメンツがつまらない」
そんな声もあると漢さんが言っていた。
16人中8人が初出場で、他の大きな大会に比べて“タレント枠”が少ない。
タレント枠というのは、平たく言うとすでに売名行為が終わっているMCのことだ。バトルファンからの市民権を得ていて、チケットの売り上げに繋がる人気を持っている。
タレント枠の中にも一軍と二軍があると僕は思っていて、2022年からその線引きが顕著になったのは否めない事実だ。
例えば、1回戦の第1試合はS-kaineと阿修羅というカードだった。
S-kaineは言わずもがなの一軍だ。基本的に16人しか出場できない昨今の大きな大会にもきちんと呼ばれていて、さらにその中で優勝までしている。もちろん、この日のKOKにおいても優勝候補の一人だ。
対する新潟代表の阿修羅は、高校生ラップ選手権出身ということもあって知名度もあるし楽曲の評判もいいが、それでもメンツの限られたタレント一軍の大会には呼ばれにくい立ち位置にいる。
この一軍と二軍の線引きは、2022年以降、多くのラッパーを苦しめたと思う。2015年以降の『フリースタイルダンジョン』に「呼ばれる」「呼ばれない」の線引きに似ているかもしれない。
阿修羅は自らの足で新潟予選を勝ち抜き、東日本予選で3位に滑り込んで、この本戦の枠を獲得した。残酷な話、大きな大会に出るための手段がそれしかなかったと言ってもいい。
そんな現状のバトルシーンを俯瞰した上で、今年のKOKは漢さんからの“メッセージ”が例年よりも強いと感じた。
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