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2023.08.10
アート分野に突如現れた反逆児、画像生成AI。DALL·E 2、Midjourney、Stable Diffusionといった生成系AIの発展と、一体どのように向き合うべきか?
クリエイター
この記事の制作者たち
AIの時代が到来する中で、アートやイラストが持つ意義は何なのか。
この疑問は単に技術的な答えを探し求めると言うだけでなく、人間の創造活動の根源に迫るものだ。
インタビューの前編では、画像生成AIの利点と欠点についての議論を中心に、早くからAIソフトと手書きの併用を試みていたイラストレーターのredjuiceさんにその思いや思考を率直に語ってもらった。
後編では、redjuiceさんのクリエイターとしての原点にも触れつつ、創作活動とは何か、それが人間にとってどのような意味を持つのか──そしてその意味はAIの時代にどう変容するのか、という深層に迫る形で進行していく。
redjuiceさんによれば、ポストAI時代におけるイラストレーターが持つ可能性のキーワードは「ドラマ」である、という。
「AIがどれだけ発展しても、人間の創作活動への情熱は奪えない」
創作がAIに支配された未来のディストピアを憂う一方で、人間だけが持つ創造力の本質を再確認する。
目次
- イラストレーターが、「感情的すぎる」ように見えてしまう理由
- 生成系AIにおけるイラスト系とリアル系──その反応の違い
- AIに比して、人間の人生は、とてつもなく短い
- 個性をつくる“negative prompt”──表現と“嫌いなもの”の関係
- 絵を描くことの本質 AIに奪われたくないもの
- 元技術者のredjuiceが出会った、創作活動の本質と喜び
- 何千時間、手を動かして、絵を描くということ
- この先の未来──AIが変えるもの、あるいは絶対に不変なもの
──クリエイティブと感情についての関係性は非常に深いように感じられます。AIの問題に限らず、「トレパク」への忌避感をはじめ、イラストコミュニティにおいて、しばしば感情が優先されがちな状況があるように思います。
redjuice それは僕もすごく気持ちがわかるというか──創作活動って感情の塊なんですよね。じゃないと続けられないというか。
おそらく音楽もそうですが、一つ一つの作品に、クリエイターの経験や趣味嗜好とか、ユーモア、好き、嫌い、愛憎、痛み、喜び、悲しみみたいな、言葉にできない異常なクソデカ感情がたくさん詰まってるんですよ。
そういったストーリーを積み上げて、汲んでいくことも、作品を楽しむ重要な要素です。その観点では、もはや成果物のクオリティだったり、論理的な正しさだったりが全てではなくなってしまう。
──そういった強い感情とAIは、かなり食い合わせが悪そうですもんね……。
redjuice その点、どこまで行ってもAIは空虚なんですよ。たとえ人間がつくったものと同等なものを出力できたとしても──あるいはそれ以上のものが生まれたとしても──AIがつくったものなのか/人間が生み出したものなのか、それだけで捉え方が変わってしまう。
感情が一切ないのに、感情があるかのような振る舞いをするロボットって、やっぱり気持ち悪いじゃないですか。
そういった「ニセモノ」が自分たちと同じフィールドにいてほしくないという嫌悪感がどうしてもあるんだと思います。そりゃ皆さん、感情的にもなりますよ!
──すごく腑に落ちました。
redjuice でも、うーん……AI生成物から、感情を呼び起こす作品が生まれることも、きっとあり得ますよね……。たしかにそれもアートと言えばアートです。
SNSではそういった作品に「いいね」が集まることもあって。でもやっぱり、感情論的に判断するならば「ニセモノ」なんです。
──AI作品が「いいね」や大量のフォロワーを集めていることも、事実として目立ってきていますね。
redjuice そうなんですよね。この議論に着地点はないですよね……イラストコミュニティのSNSでの議論というのは、感情論だけでなく、立場によって様々なポジショントークも入り乱れています。
参加しても疲れるだけなので、Twitterで何か話題になっても、僕はできるだけスルーしています!
──感情を持たないAI絵を発表する“AI絵師”を名乗る人々が登場して、SNSや各種プラットフォームを利用して、経済活動を行うようにもなりました。これにも批判が巻き起こっています。
redjuice “AI絵師”に対しては言いたいことは色々ありますが……できることなら穴から出ないで、もしくは地球の外でやってほしいですね。
AIで生成したコンテンツを販売して利益が出てしまうなら、権利問題が関わっていることをわかっていても行動に移してしまう人もいるでしょう。
この流れは実際に法律で禁止されない限りは、今後も発生することだとは思います。そういう人たちが一定数存在するのは仕方がないとして、特定のアーティストの絵柄を模倣するようなモデルをつくったり、それを販売したりっていうのはやめてね、と。
──一方で写真のようなリアル系の表現分野では、イラスト系のような強い批判は巻き起こっていないように見えます。リアル系への批判が少ない理由について、「絵」という表現の特殊性を考えることもできると思ったんです。
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