米津玄師の音楽に見る仏教観 諸行無常と刹那、鳴らす不協和音
2023.08.06
今、トレーディングカードゲーム業界に何が起こっているのか?
国内TCGのパイオニアの一人・ブシロード木谷代表が語る、業界の苦悩と将来性。
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今、トレーディングカードゲーム(以下、TCG)業界に何が起こっているのか? なぜこうなってしまったのか?
メディアを賑わす「ポケモンカードゲーム」を筆頭に熱狂的なブームの続いているTCGは、国内玩具業界における売上No.1を叩き出している。
後発の「ONE PIECEカードゲーム」などの勢いもさることながら、新カード発表のたびにトレンドを賑わす「遊戯王OCG」や、リリースから現在に至るまでキッズの心を掴み続ける「デュエル・マスターズ」、世界最古のTCG「マジック:ザ・ギャザリング」まで様々なタイトルがしのぎを削っている。
一方で、近年のTCGブームの過熱は、新商品の入手困難という状況を生み出し、買い占め行為なども横行。転売による利益を目的にカードを売買するユーザーも生まれ、高額カードの偽造や窃盗事件などの犯罪行為にまで及ぶケースも珍しくなくなってきた。
こうした事態がTCG業界の健全な姿かと言えば、もちろんそうではない。状況改善のため各メーカーや小売店も様々な施策をとっているものの、健全な未来へと向かっていく筋道はあるのだろうか。
そんなTCGの未来を考えるために話を聞くならば、適任者は木谷高明氏をおいて他にはいないだろう。「ヴァイスシュヴァルツ」や「カードファイト!! ヴァンガード」といった人気ブランドを開発する株式会社ブシロードの創業者であり、代表取締役社長として業界の最前線に立ち続ける歴戦の猛者。日本のTCG隆盛の立役者の一人だ。
かつてないほどのブームを巻き起こしながらも、その反動として大きく揺れ動く現在のTCG業界の渦中で、木谷高明氏は何を思うのか。
前後編に及ぶロングインタビューで、TCGの未来へと繋がる提言を聞く。
目次
- ブームで増えたのは転売ヤーだけ、ではない
- メーカーが真に効果的な転売対策をとれない理由
- TCG業界を救う好循環を生み出す
- 「ヴァイスシュヴァルツ」がNo.1キャラクターカードゲームである理由
- AIの発展が、カードゲーム開発にもたらす2つの利点
- インターネットの功罪 人間が持つ判断基準の均衡が壊れた時代
──2022年末には、TCG業界は「2023年もさらに成長する」と予測されていました。半年間で様々な動きがあったかと思いますが、今どうご覧になっていますか?
木谷高明 海外に関しては今も予測通りで、まだまだ成長するかなと思います。ですが国内については、「ポケモンカードゲーム」で起きているPSA偽造を巡る問題が出てきて、ちょっとわからなくなってきてしまいました。
※PSA偽造 コレクション性の高いカードを鑑定するグレーディングサービスPSAの鑑定カードの偽造品が出回っている問題。鑑定品の価値が暴落し、中古市場が荒れるなどシーンに影響を及ぼしている
木谷高明 今は「ポケモンカードゲーム」の売上シェアが5割、場合によっては7割ぐらいのお店もあります。我々他のメーカーがもっと頑張らないといけない部分でもあるんですが、それだけ大きなシェアを占めるタイトルに起きた問題なので、この余波がどこまで続いていくかは予想しづらいです。
──やはりPSA偽造問題は業界全体として大きな衝撃なのでしょうか?
木谷高明 高額カードが値崩れを起こすシナリオとしては、メーカーが過剰に供給するしかないと思っていました。まさか鑑定品の贋作が出て市場が荒れるなんて、正直全く予想できていませんでしたからね。
ただ、現状のTCG業界については、世間で言われているように転売ヤーが圧倒的に多いわけではなくて、プレイヤーがちゃんといる。カードショップを回ると各地でしっかりプレイヤーが増えているのがわかるんです。
TCGを遊んでくれている人たちからしたら、鑑定品レベルの高額カードの売買なんて雲の上の話だと思うんですよ。だから需要がなくなったわけではないですし、業界全体に致命的なダメージが出てくるというところまではいかないかなとは思ってます。
ただ一方で、その雲の上に依存しているお店もあったと思いますし、そこはやっぱり影響があるんだろうなと思います。もしかしたらPSA偽造がきっかけで閉店するお店もあるかもしれない。
個人でも、行き過ぎた投資としてギリギリのところで売り買いしてるみたいな話もあるようですから、そこまでやっているなら自己破産だってあり得る。
──転売ヤーと組んで高額カードの値段をさらに吊り上げる店もあるという話は聞きますが、まさしくそうしたところは今回の事件で大きな影響を受けていそうです。
木谷高明 転売ヤーと店が結託したら何でもできちゃいますし、これが株式の世界なら完全な法律違反なんですけど、現時点でTCGの世界には具体的な法規制がまだないんですよね。
やっていることは投機と変わらないけど規制はないわけですから、今のような状態になってしまうんだと思います。ただ、規制は難しいにしてもしっかり税金を取るべきだとは思いますね。
──セカンダリーマーケットの売上はメーカーに還元されるわけではないと思いますが、適度に盛り上がる分にはメーカー側も好ましい事態なのでしょうか?
木谷高明 直接的に還元はされないですけど、セカンダリーマーケットが活発なものは新品も売れますから。そこは持ちつ持たれつのところもあるかなと。
お店でシングルコーナーを大きく展開してくれるんだったら、それそのものが展示になるから意味がある。しかし、ネット上の個人間だけでやり取りされてもメーカーにとっては嬉しくはないですね。
そもそも高額なものを取引するなら、現物を見た方がいいと思うんですよ。僕はウイスキーが好きなんですけど、ネットじゃ絶対買わないですし(笑)。
お店もしっかり見て買い取っているわけですからね。それも含めて信用は大事だということが今回再確認できたんじゃないでしょうか。我々としては、カードはお店で買おうという啓蒙活動もしてますし、今後もアピールしていきます。
──木谷社長は転売については強く非難する姿勢をとられていますよね。
2大世の中から消えて欲しいもの。。。
転売と家虎。。。
寝ます。— 木谷高明 (@kidanit) May 8, 2023
木谷高明 ある程度は売買があった方がマーケット全体は活性化しますから、お店を通じて、いらないものは売って、ほしいものは買うっていう流れはあった方がいいんです。通常の売買は、されればされるほどほしい人に行き渡るようになる。
でも、新商品を転売目的で買い占めたり、値段を吊り上げたりするような常識を踏み外した行為はなくなってほしいと思っています。それは、ほしい人にほしいものが行き渡らないという全く逆の結果を生み出してしまう。
本当に相場で商売したいんだったら、株をやりゃいいじゃないですか。人がほしがっているものを自分の利益のためにわざわざ買えないようにするなんて、ズルいですよ。堂々と勝負すればいいのに、それができないから転売という行為に走るのでしょうね。
──確かに、正々堂々とした手段ではないです。それを木谷社長に仰っていただくのは、制作側の姿勢を示す行為として大いに意味があると思います。メーカーとしては、どのような対策がありますか?
木谷高明 本来的な理想を言えば、発売日から遅れても永遠に分納をする、つまり注文が来た分だけ刷り続けるとメーカーが宣言すれば転売ヤーは手を出さなくなるはずです。ただ、それをやるのはメーカーとしては難しい。
──効果的な対策に思えますが、なぜ難しいのでしょうか?
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