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  • 2023.08.18

日本の音楽文化には、プロ級の“チュートリアル”が足りない

日本の音楽文化には、プロ級の“チュートリアル”が足りない

クリエイター

この記事の制作者たち

名曲を名曲たらしめるのは、歌手や演奏者、作曲家・編曲家──大々的にクレジットされるプレイヤーやクリエイターの技量だけではない。

音量・定位・音質といった、個々の音と音のバランスを整える「ミキシング」や、プラットフォーム・デバイス毎に曲全体を調整・最適化する「マスタリング」を行う、サウンドエンジニアの能力にも大きく左右される。

では実際、サウンドエンジニアの作業工程が、どれだけ楽曲の聴き映えに影響を及ぼしているのか?

そんな疑問を検証する動画が、国内最大級のDTM(デスクトップ・ミュージック)メディア・SleepfreaksのYouTubeチャンネルで7月30日に公開された。

目次

  1. 第一線級のプロエンジニアが同じ曲をミックスして比較
  2. 日本語圏ではプロ級のチュートリアルが少ないという実情
  3. 情報の“手に入れやすさ”の改善は一考の余地あり

Photo by Tanner Boriack on Unsplash

※本稿は、KAI-YOU.netで2023年8月15日に掲載されたものをアーカイブ配信している

第一線級のプロエンジニアが同じ曲をミックスして比較

吉田 保さん、森元 浩二.さんのミキシング作業を比較した動画

今回「エンジニアが変わると楽曲サウンドにどのくらい違いが出るのか?」と題した動画に出演したのは、吉田保さんと森元浩二.さん。

前者は山下達郎さん、竹内まりやさん、松田聖子さん、Kinki Kidsら、後者は浜崎あゆみさん、DA PUMP三代目J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEらの楽曲を手がけてきた、第一線級のサウンドエンジニアである。

二人は、同じ楽曲(ジャンルはシティ・ポップ)と同じスタジオミュージシャンによる演奏という条件の下、レコーディングからミキシングまでを実施。

この動画では、90分という制限時間で行われた二人のミキシングの作業工程(ドラム、ベース、ボーカル、その他上モノ)が、本人の解説付きで紹介されており、最後にはそれぞれがミキシングした結果の比較も行われている。

プロ中のプロエンジニアが、長年培ってきた技術や知識の一端を明かす(しかも無料で)──音楽を志すものなら垂涎ものの、あまりにも贅沢な企画だ。

日本語圏ではプロ級のチュートリアルが少ないという実情

DTM──コンピュータを用いた音楽制作が主流となり、プロが使用しているツールも音楽制作ソフトやプラグインに移り変わった現代。

ここ数年の急速な技術発展により、アマチュアでも(音響的な観点に目をつぶれば、ではあるが)スタジオではなくても、プロと同じようなサウンドを再現できる環境になった。

しかし、ツールこそプロと遜色ないものが使えるようになった一方で、その“使い方”──ノウハウ・メソッド・ハウツーの普及は、海外に対して日本はいま一歩遅れている印象が拭えない。

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情報のアクセシビリティ改善も、日本の音楽の国際競争力を上げる手段の一つだ