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  • 2024.07.08

「クラファンの約束が守られないから返金して」は本当に認められる? VTuber餅月ひまりの実例を弁護士が解説

「クラファンの約束が守られないから返金して」は本当に認められる? VTuber餅月ひまりの実例を弁護士が解説

芸術活動を支援する「骨董通り法律事務所」に所属する寺内康介弁護士の協力のもと、連載中の「ポップカルチャー×法律 Q&A」シリーズ。

第5回は「クラウドファンディング」を取り上げる。近年はカルチャーシーンにおいても、新たにプロジェクトを立ち上げる際の資金調達方法として一般化してきた印象がある。資金的なバックアップに乏しいアーティストのみならず、一定の知名度や人気を得た後であっても、話題づくりを兼ねてクラウドファンディングを実施するケースもある。

方法としてはありふれてきたからこそ、安易に利用するのは考えものだ。クリエイターはこのサービスの要点を理解したうえで使わなければ、ファンとの不和を生むだけでなく、訴訟リスクを抱えることにもなりかねない。

今回のテーマを考えるにあたり、現在進行系のプロジェクトではあるが、象徴的な事例を一つ挙げよう。VTuber事務所「ライヴラリ」による『餅月ひまり初オリジナルアルバム制作プロジェクト!』のクラウドファンディングだ。

「CAMPFIRE」で実施された本プロジェクトは、2022年8月26日に開始し、目標金額を大きく上回る2600万円という支援金を集めて2022年10月24日に終了したが、期間中に事務所と餅月ひまりの間に問題が発生。クラウドファンディングによるリターン品の返礼は実施されないまま、2023年9月3日に餅月ひまりは事実上の活動休止を迎えた。

一時は「希望者については支援金を全額返金する」と事務所側は発表したが、発言は二転三転。返金は行わず、CAMPFIREで発表したプロジェクトを完遂すると宣言されて反発も呼んでいる。

2024年6月現在、支援者への活動報告は続けられていくなかで、「新規の通常活動衣装を除いて、すべて制作する予定」であること、さらには「リアルライブは協議次第だが、配信で実施できるように調整する」といったことなどが発表されている。ただし詳細は執筆現在では明確になっていない。

(なお、本稿ではその是非は問わない。当該プロジェクトを含む事務所の対応をめぐっては、KAI-YOU Premiumの別記事で代表者を直撃インタビューしている)

クラウドファンディングの適正利用について考えると共に、VTuberという仮想とリアルが混ざる存在のキャラクター性や人間性をどのように認め得るのか。本案件のケースを事例としながら、クリエイターが知っておくべき「クラウドファンディングの法的な観点」について、寺内弁護士に具体的な解説をお願いした。

目次

  1. Q1. クラウドファンディングに法的な返済義務はない?
  2. Q2. クラウドファンディングのプラットフォームはどこまで責任を負う?
  3. Q3. クラウドファンディングの債務不履行は「詐欺」ではないの?
  4. Q4. VTuberの「中の人」が変更になってもイベントに問題はない?

Q1. クラウドファンディングに法的な返済義務はない?

Q1. まずはクラウドファンディングという資金調達方法について、法的な観点から「知っておくべきこと」を教えてください。

クラウドファンディングは「インターネットを介して、不特定多数の人から資金を募る手法の総称」と言えますが、資金の集め方には様々な種類があり、それぞれで法的な位置づけも異なります。代表的なタイプとしては購入型、寄付型、融資型、投資型が挙げられます。

購入型は、特定の商品やサービスといったリターンを見返りとして一定の金銭が支払われるものです。法的には「売買契約」の一種と捉えることができます。新商品の開発資金を募り、支援者には完成した商品を提供するタイプもこれに当たるでしょう。

次に、寄付型は、支援者が物品・サービス・金銭的なリターンを実質的には求めていないもので、法的には「贈与契約」と言えます。「お礼メッセージ」といった簡単なリターンがある場合でも、それが支払う金銭に見合った経済的価値のない場合、やはり「贈与契約」と言えるでしょう。リターンの内容が支払われる金銭に見合うかどうか相対的であるため、寄付型と購入型を厳密に分けられない場合もあるでしょう。

融資型は文字通り、支援者からの借入でプロジェクトを実現するタイプで、あらかじめ返済期日を定めてお金を集めます。実際には支援者が直接プロジェクト実施者に貸し付けるのではなく、支援者の資金でファンドを形成し、そのファンドからプロジェクト実施者に貸し付けられることが多いと思われます。この場合、ファンドとプロジェクト実施者との間は、法的には「金銭消費貸借契約」と言えます。

そして投資型は、株式を発行して投資を募るもので、法的には「出資契約」(株式の売買)と言えます。

クラウドファンディングを実施する際、あるいは支援者としてサポートする際には、そのプロジェクトがいずれの種類に当てはまるのかを理解した上で進めていく必要があるでしょう。

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特にプロジェクト実施者には、それぞれの契約に基づいた義務を果たすことが求められます。簡単に言えば、大切なのは「約束を守りましょう」ということです

プロジェクト実施者がどういった義務を負うかは、クラウドファンディングの種類、内容によります。例えば、購入型であれば、約束した商品やサービスを提供する義務を負います。もし、何らかの理由で提供できない場合は、支援者に適切な説明を行い、返金などの対応を取る必要があるでしょう。

クラウドファンディングも契約ですから、約束した義務を果たせなければ、つまり契約違反があれば、金銭返還などの法的義務は発生します。任意に問題が解決しない場合は裁判へ発展することもあるでしょうが、これはクラウドファンディングに限ったことではなく、何かしらの「契約」を伴う問題解決の一般的な手法です。

今回のきっかけとなった餅月ひまりのプロジェクトについては、購入型とも言えますが寄付型という側面もあります。

いずれにしても、プロジェクト実施者は支援者との間の「契約義務」を果たし、「約束」を守る。守れない場合は金銭返還などの法的義務が発生し得る。これらが基本となります。

そして、「不特定多数の人から資金を募る手法」であるクラウドファンディングが持つ性質の一つと言えますが、プロジェクト実施者と支援者が直接の契約を結ぶケースでは、各支援者との間で、多数の個別の契約が成立しています。そのため、契約不履行となった際の解決も、各支援者との個別対応が基本となります。

Q2. クラウドファンディングのプラットフォームはどこまで責任を負う?

Q2. 現在、クラウドファンディングは「CAMPFIRE」や「Makuake」といったプラットフォーム事業者を通じて実施されることが大多数です。プロジェクトオーナー側と支援者側で問題が起きた場合に、プラットフォーム事業者の責任を問うことはできるのでしょうか。

結論から言うと、プロジェクト実施者と支援者との直接契約であるかどうかによります。これはプラットフォーム事業者の利用規約などに記載があるでしょう。

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