配信イベント「スト鯖GTA2」熱狂の裏で視聴者が暴走 隆盛する推し活とストリーマー人気、その亀裂
2024.09.21
クリエイター
この記事の制作者たち
芸術活動を支援する「骨董通り法律事務所」に所属する寺内康介弁護士の協力のもと、連載中の「ポップカルチャー×法律 Q&A」シリーズ。
第6回は「SNS時代におけるキャプチャ/切り抜きの是非」を取り上げる。近年、テレビ番組のキャプチャ画像や切り抜き動画のSNS投稿、ラジオ番組の書き起こしブログなど、著作権侵害とコンテンツの話題化・収益化で揺れるニュースが増えている。
2024年7月にはテレビ朝日系列のテレビ番組『永野&くるま クレバーなクレーマー』で、お笑い芸人の永野さんと令和ロマン・髙比良くるまさんが、「SNSでテレビ番組のキャプチャ(スクリーンショット)がバズること」に意見を述べたシーンが話題に。番組中でも「違法動画や画像の削除作業を行っている。TVerへのリンクを貼ればOKではない」と強調された。
#クレバーなクレーマー
「テレビ番組のキャプチャ」について
永野&くるまがアレコレ話してるので
TVerでぜひ見てください!!!!!!
たったの9分で終わりますhttps://t.co/dT60436IH6あと三谷アナも色々ぶっちゃけてます pic.twitter.com/pg3wHxqtIg
— 永野&くるまのひっかかりニーチェ【テレ朝公式】 (@naganokuruma_EX) July 10, 2024
一方で、特にお笑い芸人やアイドルファンに顕著だが、出演番組や当人を応援するためにSNSでキャプチャを拡散することで配信プラットフォームでの再生回数を向上させたいという狙いも。ファンとしての厚意を強く批判されたことで、SNSでは悲しみの声も挙がった。
また、ラジオ書き起こしで人気を博すブログ「miyearnZZ Labo」が、有料ウェブマガジン「みやーんZZのRadio Days」をスタートするも、ラジオ局から無許諾で書き起こした記事を有料配信したことで炎上、更新を停止する事態に発展。
— みやーんZZ (@miyearnzz) July 16, 2024
さらに、YouTubeなどで主流となっている「切り抜き動画」が、元動画の認知拡大に貢献する一方で、最近ではプラットフォーム側から収益化NGを突きつけられるなど、新たな局面を迎えている。
こうした状況下で、ファンによる二次創作的な活動を「新時代のクリエイター」と捉えるべきなのか。それとも、従来の著作権の枠組みで規制すべきなのか。現状の問題点を整理しながら、クリエイターとして向き合うべき課題について見ていこう。
目次
- Q1. テレビ番組の画像や動画をSNSにアップしてはだめ?
- Q2. SNSにアップするキャプチャは「引用」に当たらないの?
- Q3. ラジオ番組の「書き起こし」は著作権法違反になる?
- Q4. 切り抜き職人として生きる道はあり得ますか?
Q1. テレビ朝日系列のテレビ番組『永野&くるま クレバーなクレーマー』で、永野さんと髙比良くるまさんが、「SNSでテレビ番組のキャプチャがバズること」について意見を述べたシーンが話題になりました。テレビ番組の画面キャプチャや切り抜き動画を、SNSを始めとするインターネット上にアップロードすることの法的問題点について、どのように考えるべきでしょうか?
テレビ番組を素材としてアップロードする行為は、著作権法上、大きく2つの権利侵害に該当する可能性があります。
テレビ番組の画像や動画をキャプチャする時点で、著作物の「複製」に当たります。
個人的に楽しむ目的で行う「私的複製」であれば法的に許容されますが、SNSにアップロードする目的でキャプチャする場合は、私的複製の範囲を超えてしまいます。「私的」とは、個人や家庭内、またはこれに準じる限られた範囲内での使用を言います。ごく親しい数人程度の友人間であれば「私的」の範囲に含まれる可能性はありますが、範囲は限定的と考えておくのがよいでしょう。
なお、業務上の利用は「私的」に含まれません。例えば、書籍をコピーして社内で回覧したり、ダウンロードした資料を同僚に共有したりする行為は、理論的には著作権侵害の可能性があるのです。実際に、新聞社に無断で社内で新聞記事をイントラネット(※社内向けの電子掲示板やネットワーク)で共有した行為が著作権侵害とされた裁判例もあります。
キャプチャした画像や動画をSNSにアップロードする行為は、インターネットなどを通じて著作物を公衆向けに「送信」することに関する権利、いわゆる「公衆送信権」の侵害に該当します。「公衆」とは、不特定「または」多数を言います。「または」なので少数であっても不特定である場合や、特定でも多数の人々は「公衆」に当たります。
例えば、鍵付きのSNSアカウントであっても、フォロワーが多数いる場合は「公衆」に該当します。具体的な人数の基準はありませんが、50人程度でも「多数」と判断される可能性は十分あります。また、鍵付きでも実際はフォローリクエストを緩く認めている場合は、「不特定」への公開とされる可能性があるでしょう。逆に、極めて限定的な少人数のクローズドなグループ内での共有であれば、「公衆」送信に当たらない可能性はあります。
一般的な結論としては、テレビ番組のキャプチャや切り抜き動画をSNSにアップロードする行為は、基本的に著作権法違反のリスクが高いと言えます。
個人的な楽しみやごく親しい数人程度の友人間での共有であれば認められる可能性はあるものの、インターネット上で共有することは著作権者の許諾なしに行うべきではないでしょう。
Q2. テレビ番組のキャプチャや切り抜き動画をアップロードする人の中には「引用」であることを主張するケースも見受けられます。一方で、テレビ局や番組制作サイドからは「出展明記やTVerへのリンクを貼れば構わないという話ではない」と注意喚起する言葉も。仮に「引用」が適応され得る場合の要件など、どのように考えるべきでしょうか?
引用の成立は、著作権法第32条第1項に基づいて判断されます。当該条文は下記です。ただ、読んでみると、かなり「ざっくり」とした内容だと感じるはずです。
公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。著作権法 第三十二条より
このように「公正な慣行に合致」することと、「目的上正当な範囲内」であることが要求されていますが、どのような態様であればこれに当たるかは条文だけからははっきりしません。もっとも、これまでの裁判例や学説などから、適法な引用と認められるためには次の6つの点に注意しておくことが必要と言えます。
1. 既に公表されている著作物を利用すること
2. 引用部分と自己の作品部分とが明瞭に区別されていること
3. 自分の作品部分がメインであること(自分の作品と引用部分との主従関係)
4. 引用目的の正当性(引用の必要性)
5. 改変をせず引用すること
6. 合理的方法で出所を明示すること
続きを読むにはメンバーシップ登録が必要です
今すぐ10日間無料お試しを始めて記事の続きを読もう
800本以上のオリジナルコンテンツを読み放題
KAI-YOUすべてのサービスを広告なしで楽しめる
KAI-YOU Discordコミュニティへの参加
メンバー限定オンラインイベントや先行特典も
ポップなトピックを大解剖! 限定ラジオ番組の視聴
※初回登録の方に限り、無料お試し期間中に解約した場合、料金は一切かかりません。