Interview

  • 2024.09.11

直木賞作家 小川哲が語る、数奇なゲーム人生「世界は、ゲーム的ルールに縛られる未来に向かっている」

『ゲームの王国』『地図と拳』知られる作家・小川哲。折に触れてゲーム文化について洞察してきた彼はどのようにゲームに親しんできたのか。

のめり込んだ傑作『シヴィライゼーション』やサバイバルクラフト、アナログゲームへのこだわりから、その先にある世界まで。

直木賞作家 小川哲が語る、数奇なゲーム人生「世界は、ゲーム的ルールに縛られる未来に向かっている」

気鋭の小説家、小川哲

満州を巡って繰り広げられる歴史巨編『地図と拳』が第168回直木賞を受賞。クイズ番組で起きた珍事を掘り下げる小説『君のクイズ』が第76回日本推理作家協会賞長編および連作短編集部門を受賞した、才気あふれる作家だ。

小川氏は小説家としてのキャリアのなかで、ポル・ポトの圧政下を独自のゲーム理論で生き抜くカンボジアの天才少年を描いた『ゲームの王国』といった小説をはじめ、折に触れてゲーム文化について洞察してきた。

今回、小川氏と兼ねてから親交があったゲームシナリオライターである筆者・各務都心が、小川氏のゲーム観を根掘り葉掘りインタビューさせていただいた。

その結果、人生を通して付き合ってきたゲームやスポーツに対する熱い想いや、現代のゲームカルチャーが持つデザインの面白さやその限界、そしてその先にある世界について語っていただくことができた。

ひとりの作家がゲームを遊んできたことで、何を知り、何を感じたのか──是非ともチェックしていただきたい。

目次

  1. ゲームの攻略請負人だった幼少期
  2. ゲームを制限するより、自制できるようにさせた方がいい──小川哲のゲーム持論
  3. 小川哲がのめり込んだ傑作『シヴィライゼーション』を通して構築したゲームコミュニティ
  4. オンラインゲームとの付き合い方──大切なのは「いかに暇な知り合いを多くつくるか」
  5. ゲーム体験は小説執筆に活きない?──上達しないからこそ面白い体験
  6. 小川哲の語る「小説という表現形式の一番良いところ」
  7. 「全員が同じスタートラインに立っている」マーダーミステリーの魅力
  8. 世界はテレビゲーム的になっていく――機械的な判定がもたらす近未来のビジョン

ゲームの攻略請負人だった幼少期

──幼少期はどんなゲームを遊んでいましたか?

小川 小学校入学と同時に「スーパーファミコン」を買ってもらったのが最初ですね。それまでは友達の家でゲームを触っていました。

当時はサッカーをやっていたのもあって『Jリーグサッカー プライムゴール』『エキサイトステージ』『実況ワールドサッカー』をよく遊んでました。

基本的にはサッカークラブや学校の友達と遊ぶことが多かったですね。皆で誰かの家に集まって『スーパーマリオカート』を遊ぶこともありましたね。

スーパーマリオカート プレイ映像

──当時はゲームに対して、どのような気持ちで向き合っていたか覚えていますか? もっと上手くなりたいとか。

小川 楽しいからやっているだけで、上達しようという意識はなかったですね。たまに、ゲームがめっちゃ上手い友達がいて、どうあがいても太刀打ちできない場合もありましたね。多分、兄からコツを聞いていたんでしょうけれど。

そういう時も勝てるように努力するってことはありませんでした。自分の『スーパーマリオカート』のベストスコアを友達に抜いてもらったりしてました。何の意味があったのか(笑)。

中学生になって『ニンテンドウオールスター! 大乱闘スマッシュブラザーズ』で負けると悔しい思いを感じることがありましたが、あれは結局、ゲームプレイに途中での脱落があったからだと思います。

スポーツゲームは途中で脱落することがないじゃないですか。でも、ライフに限りがあるゲームが下手だと、途中から観てるだけの時間が発生するので、退屈だったんだと思います。大人になってパーティーでバトロワゲームをするときなんかも、楽しむためには上手にならないといけないってことを実感しましたね

小川哲さん

小川哲さん

──生活の中でゲームとはどのような付き合い方をしてきましたか? ガッツリやり込んでいたのでしょうか。

小川 うちは両親が共働きで、ゲームのプレイ時間の制限が一切なかったんですよ。親は管理しようがないですから、もうやりたい放題でした。他の家は大体制限があったんですけどね。

たしか小学校の3年生か4年生くらいで『ポケットモンスター 赤・緑』(1996年)が発売して『ドラゴンクエストVI 幻の大地』(1995年)も同じくらいに出ていて、中学校に上がってから『ファイナルファンタジーⅦ』(1997年)を遊んだんですよね。それらは誰よりも先に全クリしてました。

ポケットモンスター 赤・緑・青・ピカチュウ ダイジェスト映像

──クラスで誰よりも早くクリアするというのは、ネタバレを聞きたくないと思っていたから?

小川 ネタバレについては、僕個人はなるべくしないように気を付けてましたけど、聞きたくないという感じではなかったかな。友達の家に行ってそいつにボスの倒し方を教えてあげるとかはやってましたね。多分(『ドラクエⅥ』の)ムドーは20回くらい倒してるんじゃないかな(笑)。攻略請負人でしたね。

当時は皆同じゲームをやってましたから、ひとつのRPGを誰かの家に集まって遊んでましたよね。今じゃなかなか有り得ないですけど。

『ドラゴンクエストVI 幻の大地』 TGS2009出展映像

──それだけハードに遊んでいて、学業や部活に差し障りはなかったんですか?

小川 たまたま勉強が得意だったので、全然なかったんですよ。当時ってゲームをすると目が悪くなると言われてたんですけど、視力にも影響はありませんでした。今でも裸眼ですし。

だから、ゲームをやると成績が悪くなるとか、目が悪くなるとか、ウソだと思ってましたね。

ゲームを制限するより、自制できるようにさせた方がいい──小川哲のゲーム持論

──とはいえ、受験の際に一度だけ封印していたというのを以前に聞いた覚えがあります。

小川 高校3年生の夏休みから半年間だけ、受験のために自主的にゲームを封印してました。

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