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  • 2024.08.10

イラストレーター個展の開催費用300万円は、回収できる? 令和の個展が抱える課題

イラストレーター個展の開催費用300万円は、回収できる? 令和の個展が抱える課題

近年はイラストレーターの個展が増えてきた。これまでのギャラリーで行われてきた個展とは違い、企業が全面的にバックアップをするというスタイルである。

予算をかけて設計され、こわだり抜かれた展示──一見華やかで、動員も見込めそうに思えることだろう。ただし、そこには課題も横たわっている

今回は、ネット中心で活動してきたイラストレーターが展示を行うモチベーション、そして展示企画の持つ課題について考えていく。

目次

  1. なぜ、絵描きは個展をやるのか?
  2. 表現への探究心、プロダクトへのこだわり──イラストレーターが個展をやる理由
  3. 現代においてイラスト個展を成功に導くためには、チームが必要不可欠
  4. 個展は、金がかかる。そして、回収はさらに難しい
  5. 数百万円のお金は、どこから出ているのか?
  6. 個展の収益モデル 作家の取り分やギャラリーの取り分は?
  7. デスマーチ、トラブル、イベント対策……展示企画の課題
  8. 作家ではなく、企画を立てる
  9. これからの個展を見据えて──

なぜ、絵描きは個展をやるのか?

近年、イラストレーターによる個展が増えています。特にこの夏は人気イラストレーターの個展がとても多く、それぞれに注目が集まっています。

これらは従来の画家が行う、営業や発表のための展示とは少し異なります。

現代のイラストレーターはインターネットがあるので、作品を発表すること自体は容易になっています。さらに売れっ子の作家は仕事がいくらでも舞い込んでくる状況で、わざわざギャラリーを借りて個展をやる意義は少ないように思えます。

では、なぜ彼らは多忙な仕事の合間を縫って個展をやるのでしょうか。

表現への探究心、プロダクトへのこだわり──イラストレーターが個展をやる理由

個展増加の背景には、デジタル作品の普及があります。

特にインターネット上で活動しているイラストレーターたちは、発表の場がオンラインに留まりがちです。ネットで簡単にイラストを消費できるからこそ、これだけ市場規模を拡大してきましたが、作品の表現はモニターだけで見せるのは味気ないという考えがあるのです。

これは、同人誌を制作する理由にも似ています。

まず、印刷は絵のサイズをコントロールできます。デジタルだとPCモニタの20数インチか、スマホの小さい画面で鑑賞する他なく、表現者が大きさをコントロールできないのです。

美術館に行くとわかりますが、絵画は平面ではなく、立体であり量感を持った構造物です。特に絵の大きさは鑑賞体験に大きなインパクトを与えます。大きい絵はそれだけで強いエネルギーを持つのです。

さらに個展では空間をデザインし、設計できます。コンテンツが散らばっているSNSのタイムラインと異なり、一つのストーリーの中で参加者に体験を与えることができるのです。近年は没入感を重視した「イマーシブ」という展示スタイルも有名になって来ましたが、絵を単に額装して飾るだけではなく、空間として効果的な見せ方を模索する動きが増えています。

イラストにおいてもこの様な空間設計に対する意識が増えてきており、特にここ5年では展示のレベルも上がっています。既存の絵を画一的な方式で出すよりも、事前に3Dモデル(またはミニチュア模型)を制作し、計画的に進行することが増えているように感じます。

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資料提供:Namie様、pixiv WAEN GALLERY ※画像は一部加工しています

実際の展示の様子

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資料提供:赤倉様、pixiv WAEN GALLERY ※画像は一部加工しています

実際の展示の様子

現代においてイラスト個展を成功に導くためには、チームが必要不可欠

つまり、個展開催はより高度で専門的な知識が必要になってきています。単純に絵を描けるだけではなく、空間上のレイアウトや導線設計、印刷知識などが求められます。

さらにはビジネスの面で言うと、グッズ開発、販売知識、売り場の設計、イベント企画、プロモーションなど、総合力が必要になるのです。

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