Interview

  • 2024.09.21

「ラップスタア」からこぼれ落ちたラッパーの言葉が本に──『LIFE HISTORY MIXTAPE』座談会

「ラップスタア」からこぼれ落ちたラッパーの言葉が本に──『LIFE HISTORY MIXTAPE』座談会

若い世代のラッパーたちが子供の頃を振り返るインタビュー集『LIFE HISTORY MIXTAPE 01』(ライフヒストリー・ミックステープ)が刊行された。

自費出版という形でこのインタビュー集を執筆・発売したのは、ABEMAのオーディション番組「ラップスタア」のディレクターである菊池謙太郎

「番組では使われないような、表に出ない話を集めたい」という菊池のアイデアが形になっている。

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菊池謙太郎さん

SNSでいち早く反応し『スピード・バイブス・パンチライン』を刊行したばかりのライター・つやちゃん、『LIFE HISTORY MIXTAPE 01』でインタビューされる側の1人だった和歌山の気鋭ラッパー・TOFU

普段、カメラを回す菊池謙太郎はなぜ、ラッパーの証言を集めた書籍をつくりたくなったのか──2人をゲストに、『LIFE HISTORY MIXTAPE 01』刊行記念トークライブが西荻窪・今野書店で行われた。

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菊池謙太郎の『LIFE HISTORY MIXTAPE 01』制作史を紐解きながら、和歌山のヒップホップシーン、あるいは「ラップスタア」を振り返る。

目次

  1. はじめに──『ライフヒストリー・ミックステープ』刊行記念トークライブ
  2. 『ラップスタア』では使われないような素材を世に出したかった
  3. ヒップホップメディアの不在 インタビューの人選について
  4. ラッパーのルーツ語りと、メディアの残酷さ
  5. 寮から“脱走”してたどり着いたラップ──TOFUの証言
  6. Homunculu$とTOFUの奇妙な関係
  7. 過熱する和歌山のラップシーン
  8. ”ちょっと変な人”でないとヒットを打てない──規模拡大する『ラップスタア』の未来

はじめに──『ライフヒストリー・ミックステープ』刊行記念トークライブ

菊池謙太郎 皆様、今日はお越しいただきありがとうございます、菊池謙太郎です。ちょっと仰々しい感じですが、今回のイベントは、私が初めて出した著作『ライフヒストリー・ミックステープ』という本について、つやちゃんとTOFUくんをゲストを招いてトークショーを行う内容となっています。TOFUくんは後半からの参加です。

はじめに今回のトークショーにつやちゃんに参加いただいた経緯を説明すると、『ライフヒストリー・ミックステープ』は自費出版だったので、ネットショップを自分でオープンして販売を行いつつ、宣伝はSNSで告知するという形式でした。すると真っ先に、つやちゃんからSNS上で反応をいただきまして。つやちゃんが最初にこの本を知ったきっかけはなんだったんですか?

つやちゃん valkneeさんのSNSですね。この本のインタビューを受けたと書いてあったのを見て、面白そうだなと。本が届いたその日に読み終わって、すぐSNSに感想を書きました。

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菊池謙太郎 つやちゃんは、僕のような素人のつくった本に詳細な感想を書いてくれて、それがすごく嬉しかった。そういった背景があったので、トークショーの企画が立ち上がった時にすぐ、つやちゃんに相談しました。

つやちゃん 感想をあげて、速攻で「イベント出ない?」という菊池さんからのDMが来ましたね(笑)。それから菊池さんと一度お茶をして現在に至る、という流れです。

『ラップスタア』では使われないような素材を世に出したかった

つやちゃん この本は、今までラッパーから聞いたことのないような話が沢山書かれていた点が特に面白くて。「なぜ、ここまで初出しの話を聞き出せたんだろう?」と考えた結果、この本は「ラッパーの幼少期」にスポットを当てているんですよね。

一般的にラッパーへのインタビューといえば、アーティストとして本格的に活動し始めてからの話を聞くことがほとんどで、子供時代や学生の頃のエピソードはあまり語られない。そうした今まで光が当てられてこなかった時代に、あえてスポットを当てるスタイルが面白いなと。

菊池謙太郎 ABEMAの『ラップスタア』という番組にテレビディレクターとして携わっているのですが、その経験が本を制作するきっかけになりましたね。

菊池謙太郎 番組ではラッパーの過去にフォーカスを当てるというのがあって、ディレクターが行う質問に「どういう家庭環境で育ったのか?」というような、音楽そのものには関係がないものもあるんです。

そこでラッパーから面白い話を沢山聞けるんですが、どうしても編集でカットしなければいけない部分もある。それを聞いているうちに、今まで表に出なかった対話を盛り込みたい、番組とは違う切り口にしたい、という思いが募り、今回の本のコンセプトが生まれたように思います。

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