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  • 2022.09.15

サイバーパンクとVTuber 技術に覆われても表出してしまう人間性が魅力になる

サイバーパンクとVTuber 技術に覆われても表出してしまう人間性が魅力になる

今、バーチャルシーンで最もヒップホップシーンに近いVTuber・オシャレになりたい!ピーナッツくん。反対にヒップホップからバーチャルに最も近いラッパー・Kamui

この異色の2人によるコラボレーションが、Kamuiのニューアルバム『YC2.5』にて実現された。

かたや黄色い豆のゆるキャラ、かたやタトゥーをその身に刻み込んだラッパー……頭から爪先まで不似合いなツーショットである。しかし異端の存在同士、共鳴する。

イベントの自主開催(「ぽんぽこ24」/「MUDOLLY」)やクラウドファンディングによる創作の資金調達(ショートアニメ/『YC2.5』)といった、何にも依らず自らの活動基盤を築き上げてきたキャリアに注目すれば、全くの異分野ながらも相似形の軌跡を見出せるだろう

そんな2人が退廃的な未来の景色──一般にサイバーパンクと呼ばれるような──で交わったことを機に、今回たっぷり1時間半ほどの対談の席を設けた。

前編である本稿では、出会いに始まりコラボレーションまでの経緯、『YC2.5』という作品へのピーナッツくんのガチレビュー、そして「シティ」というモチーフにおける表現者論など、2人の気鋭クリエイターが大いに語り合う。

目次

  1. 異分野で共鳴し合った「フィクサー」
  2. 「ミライノソラ」レコーディングの舞台裏とフィーチャリング論
  3. 俺が「ジャックイン」していたのか!
  4. 「ハードボイルド・サイバーパンク野郎」としてのKamui
  5. 2人の頭の中に在る「シティ」とは何か
  6. “東京”というソーシャル・ネットワークの中で

異分野で共鳴し合った「フィクサー」

ピーナッツくんとKamui

左:ピーナッツくん 右:Kamuiさん

──本日は『YC2.5』のリリースに際して、ピーナッツくんとのコラボ曲「ミライノソラ(feat.ピーナッツくん)」も収録されていることで、サイバーパンクという世界観やアプローチとしてのヒップホップなど、実は共通する点の多いお二人に集まっていただきました。よろしくお願いします。

ピーナッツくん よろしくナッツ!

Kamui よろしくお願いします。……最近糖質制限ダイエットしてるから全然脳みそ回ってねえな。

ピーナッツくん これ食べますか?(ピーナッツくん、おもむろに袋を取り出す)。

──それはなんですか? グミですか?

ピーナッツくん いや、ラムネです。

──(笑)。では、まずはコラボに至るまでの経緯を伺っていきたいのですが、いつ頃から知り合ったのでしょうか?

Kamui 俺はもともとフォローされていた側だよね(笑)。先に教えてよ。

ピーナッツくん 僕はTENG GANG STARR(以下、TGS)の頃からリスナーだったナッツ。「TGSが始動します」ってツイートとかをリアルタイムで見て「おお、なんだこりゃ?」みたいな。その時から知っていたナッツ。

TENG GANG STARR - Tokyo Endless (prod.3-i)

──最初は一方的にリスナーだったと。

ピーナッツくん そうナッツ。TGSはビジュアルがまずかっこいいなと思ったナッツ。九龍城みたいなものが背景にあるアーティスト写真とかがすごく印象的で、今でこそKamuiさんはめちゃくちゃサイバーパンクな感じですけど、僕は初期からその香りを感じていましたね。

Kamui あの時は松本大洋の『鉄コン筋クリート』に意図的に寄せてた時期だったね。フィクションから飛び出してきた存在感のようなものを出そうとしていて。なかむらみなみのキャラがどぎついから、普通の形でデビューさせても全然面白くないよなって思っていて。

ピーナッツくん なかむらみなみさんのぶっ飛んだキャラクター性について、当時よく語られてたじゃないですか。Kamuiさんがただのラッパーではなくて、プロデューサーというかフィクサー感があったナッツ。

Kamui ああ、そうなの(笑)。俺はピーナッツくんにも、VTuberとしてのフィクサー感をすごい感じていて。マジで。

それは俺もピーナッツくんに感心するところで、フィクサー的な立場から客観的にどう見せていくかという部分がすごく上手い。もしかしたら、人と違う見方でTGSを気に入ってくれたのかもしれない。ちゃんと俺の意図も読んで、好きになってくれたのかなって。

──お互いにプロデューサー的な気質があるというのは頷けます。

ピーナッツくん TGSって当時、ゆるふわギャングと比較されることが多かったじゃないですか。でも全然明確に違うし、差異を見せようとしてるなというのが伝わって、カッケーみたいに思ったナッツね。

その後、Kamuiさんのライブも行ったナッツ。渋谷WWWでやった「MUDOLLY EXTRA」とか、ヤギ・ハイレグと一緒に行きました。ヤギ・ハイレグがめちゃくちゃKamuiさんのことが好きなんですよ。彼は「Kamuiさんには本当に幸せになってほしい」っていつも願っています。

Kamui (笑)。

ピーナッツくん 彼の影響もあって、僕もKamuiさんのInstagramの配信とかも見ていました。でも実際にお会いするとは思わなかったナッツ。ピーナッツくんとしてもKamuiさんに言及することはしてなかったかもしれないんですが、でもたしか、生放送か何かで「『YC2』やばい」って言ってたんですよね、僕。

Kamui マジで。嬉しいな。でもそういうとこは切り抜かれてねぇんだよな……。

──(笑)。ではKamuiさん側のお話も教えてください。

Kamui まず、気づいたらTwitterでフォローされていて……。でも何で気づいたんだっけな? まあともかく、やたらフォロワーが多くてよく分かんない、黄色い姿をした変な奴がフォロワーリストにいて。

「これって誰なんだろう」と思って。ラップもしているから「へえ」と思って、聴いてみて。そしたらビートをAge Factoryのnerdwitchkomugichanがつくってるっていうから連絡して。で、彼も「この子めっちゃいいですよ」って言うし、俺も聴いてみてセンスあるなって思ったからLINEを聞いた。今年に入ったくらいのことかな。

それで面白そうだし会ってみたいなって思ったんですけど、渋谷のWWW Xでライブするっていうから見に行って、そこから意気投合して、みたいな感じですね。

ピーナッツくん その後はVMO(※)のライブで会って、朝まで喋ってたナッツね。しかも立ち話で。

※Violent Magic Orchestra:ピーナッツくんのアルバム『Walk Through The Stars』にギターで参加したコイデシュンペイさんも在籍するインダストリアルバンド。

──アツい一夜があったんですね。

Kamui 喋っている中で、自分の作品の深いところまで気づいてくれていたのにすごく感動したというか、嬉しかったなっていうのはありましたね。

ピーナッツくん こちらこそナッツ(照)。Kamuiさんと初めてがっつり喋った時に、「YouTube大変っしょ?」みたいな感じのことを言ってくれて。「ああ……(胸に手を当てる)」って。

Kamui その時に誰かが「ピーナッツくんって何十万人もチャンネル登録者数いるし、めっちゃイケイケだよね」みたいなことを言ってて、俺は「いや違う!」つって。「チャンネル登録者の数で安泰とか無いから」とか「彼の苦労を分かってないっすよ」とか、まだ会って2回目の時に(笑)。

ピーナッツくん なんでYouTuberのそんな深いとこまでわかってんだ、この人?!って思ったナッツ。

Kamui いや、本当は何もわかってないんだけど(笑)。俺がちょうどメンタル的に落ちてたから、俺の苦労を勝手に投影したんだと思う。

ピーナッツくん でも、嬉しかったナッツ。

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