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  • 2022.03.18

ボカロ曲にとって、投稿は終わりじゃなく始まり──40mPが語る、歌ってみたとボカロの関係

ボカロ曲にとって、投稿は終わりじゃなく始まり──40mPが語る、歌ってみたとボカロの関係

「からくりピエロ」「恋愛裁判」「トリノコシティ」「シリョクケンサ」「ドレミファロンド」……往年のボカロファンの中には、これらの曲をカラオケで歌ったことのある人も多いだろう。

40mPさんの楽曲は、「歌ってみた」シーンでも、多くの活動者にカバーされている。ニコニコ動画で盛り上がったボカロ、そして歌ってみたの輪が他のプラットフォームに広がった今も、その勢いは変わらない。

また、2013年にはGUMIを用いた「少年と魔法のロボット」が、NHK「みんなのうた」に抜擢。ボカロ曲が選ばれるのは番組史上初めてのことで、当時大きな話題となった。

原曲をボカロ曲としながら、多くの人々に歌い継がれてきた40mPさんの楽曲群。その根底には、活動を始めた当初から彼が持ち続けてきた「人間が歌いやすいように」という意識があった。

インタビュー後編では、プラットフォームに対する考え、昨今の「歌ってみた」の発展に思うこと、さらに家族について──最近ボカロに興味を持ち始めたという子どものことも、詳細に話してくださった。史上初の二世代ボカロPは誕生するのか。

目次

  1. 今のボカロのメインプラットフォームはどこなのか?
  2. 歌ってみたは「ぜひお願いします」 二次創作がもたらす広がり
  3. 子どもは自分の父親が40mPだと理解している 40mP流・英才教育

今のボカロのメインプラットフォームはどこなのか?

──14年間の活動を振り返ったときに、特に印象的だった出会いはありますか?

40mP 色んな方との出会いによって今の自分があると思っていますが、音楽面に関して影響が大きいのは事務員Gさんですね。ピアニストでありながら、長くイベント制作をやっている方で。彼の誘いがあって「虹色オーケストラ(※)」というコンサートが実現しました。

※40mPの楽曲をバンド・オーケストラの演奏と歌い手による歌唱で届ける同人ライブイベント。

それまではずっと、僕は1人で音楽をやっていたんです。もちろん他のボカロPとコラボしたり、人に曲をつくったりする経験もあったけど、虹色オーケストラではいろんなクリエイターや演奏者、歌い手のみなさんと一緒に作品をつくり上げる経験をさせてもらいました。

そもそも、「自分の曲を生楽器で演奏するとこういうふうになるんだ」ということを、肌で感じて理解する経験をさせてくれた場でもあって。そこから、音楽に対する考えがかなり変わった部分もあって。振り返ってみてぱっと思い浮かぶのは、事務員Gさんとの出会いですね。

40mP ボカロPでいうと、DECO*27ですね。活動を始めた時期がほぼ同じで、その後もコラボして曲をつくったりしていて。最近はあんまり交流がないんですけど、「どうしてるかな」ってちょっと横目で見ながら活動してる所はあります。

僕はボカロPとしての横のつながりがほとんどないんです。でも古くから続いていて、しかも自分が音楽的に影響を受けているとなると、まず思い浮かぶのは彼ですね。

40mPさんの妻・シャノさんのツイート

──最近の若い世代のボカロPで、注目してる方はいますか?

40mP 実は最近、ボカロP単位で曲を聴くことがなくなってしまって。トレンドを仕入れるのが、完全に子どもが聴いてる曲からになってるんですよ

だから最近の曲もわりと聴いているとは思うんですけど、誰がどの曲をつくっているかをちゃんと把握できてないんです。昔は気になった曲からそのボカロPのマイリストを漁って、みたいなことをやってたんですけどね。ここ数年くらいは、そういう聴き方をしなくなってしまいました。

──それは単純にお忙しくなったからなのか、あるいは界隈が変化するにつれて、追い方が変わってきた部分があるのでしょうか?

40mP ボカロの主戦場がYouTubeにも広がってからは、「ボカロのメインプラットフォームってどこなんだろう」と、自分自身が迷子になっている感じがあって。僕が始めた当時は、ニコニコ動画の閉じた世界の中で盛り上がっている文化だったので、たとえば週間ランキングを見ればだいたいそのときのトレンドが追えたと思うんですよね。

最近はもう、どこが主戦場で入口なのか、自分の中でわからなくなっていて。多分リスナーさんにも、そう感じている方はいるんじゃないかなと思います。

あとは自分の中で、ボカロのムーブメントを追い過ぎると、そっちに影響されすぎてしまうきらいもある。だから意図的に避けていた時期があって、今もその辺の意識を若干引きずってるのかもしれません。仕事のリファレンスで挙げてもらった曲とか、子どもが聴いてる曲とか、「追う」というよりも自分の耳に入ってくるものでトレンドを知るみたいな聴き方になってしまっていますね。

──40mPさんご自身も、活動の拠点とするプラットフォームをニコニコ動画からYouTubeに切り替えられたのかなと勝手に思っていたんですが、これは意識的なものですか?

40mP 特段、ニコニコ動画をやめて、YouTubeに行こうという意図があったわけではないんですが……いくつか事情があって。ひとつは、いろんな所に作品が分散するよりは、1ヶ所にまとめた方が見やすいかなという考えです。

もうひとつは、ニコニコ動画は自分の生まれ故郷であり、ホームであると思っている反面、怖い場所だとも思っているんです。ニコニコ動画は忌憚のない意見をもらえる場所で、実は活動を始めた当初から「今回はどういうコメントがつくんだろう」という、恐怖心みたいなものがありました

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