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  • 2024.10.27

ビックリマンシールから派生!? 1枚100万円の取引も──大人が熱狂する自作シールの世界

ビックリマンシールから派生!? 1枚100万円の取引も──大人が熱狂する自作シールの世界

クリエイター

この記事の制作者たち

初めまして。RAMCLEARのツムキといいます。

普段はアナログゲームデザイナーをしているのですが、ここ最近で「自作シール」の世界に触れ、自分でも自作シールを題材にしたアナログゲーム『貼神(シール)バトラー』をつくってしまったほどに激ハマりしています。

「自作シール」とは、文字通り「(おまけ風シールを)自分でつくったシール」です。

80年代に大ブームを巻き起こしたお菓子のおまけシールが、リアタイではキッズだった作家たちの「純粋にカッコいいシールをつくりたい」という強い衝動と30年越しに磨かれた技術によって、この令和の時代に圧倒的な進化を遂げ、静かに、しかし凄まじい熱量を持って続々増殖しているんです。

昔懐かし『ビックリマンシール』から、人気クリエイターによる自作シールまで、新たなシールが現在進行形でどんどん生み出され、時にはとんでもないほどの高値(2023年の自作新作シール「ハッピー天女Ⅲ」のオークション落札価格は驚きの893,000円でした!)がつくほど市場も盛り上がりを見せています。

自作シールサークル「イシール」

自作シールサークル「イシール」

ここではこの「知られざる自作シールの世界」を紹介したいと思います。

しかし、筆者も2022年から自作シールの世界に触れたヒヨッコです。なので、ほとんどその辺りのことはわかっておりません。

そこで、自作シールのメッカの一つでもあるBAR「荒木町ナイト」の常連の方々のお話や、まんだらけ中津誠貴氏による『自作シール本』、ネット配信番組「DOMMUNE」での自作シール特集なども踏まえて、学びながらまとめています。

※BAR「荒木町ナイト」も自作シールシーンにとって大変重要、かつ、とっても面白いお店ですので、後半でしっかり紹介します

監修:UN21(@un2110) 一部シール写真提供:マスシン(@msahsiunnn

目次

  1. 自作シール前史 社会現象となった「ビックリマンシール」の世界
  2. シールの価格差が問題に……ビックリマンシールの栄枯盛衰
  3. ビックリマンだけじゃない! おまけシールの数々
  4. ビックリマンシールと、大本教『霊界物語』との類似を喝破した大塚英志
  5. そもそもなぜ自作シールが勃興しているのか?どういう成り立ちと変遷を辿っているのか?

自作シール前史 社会現象となった「ビックリマンシール」の世界

自作シール前史として、メインストリームであるところのビックリマンシールの存在を語らないわけにはいきません。

ロッテが売り出したチョコレート菓子・ウェハースチョコのおまけについてくる正方形のシール。1985年に発売されると社会現象を巻き起こしたことで知られるビックリマンシール「悪魔vs天使シール」以前のビックリマンについては、ご存知ない人も多いかもしれません。

ビックリマンシールが生まれたのは遡ること今から47年前の1977年、アニメ『ヤッターマン』が放映開始し、少年ジャンプでは『こちら葛飾区亀有公園前派出所』が連載スタート。イギリスではロンドンパンクが誕生し、アメリカではアタリ社から初のTVゲーム機が発売されたそんな時代。

シールを物理的に日常空間に貼ることで小さな変化をもたらす、文字通り“ビックリさせる”──そんなコンセプトから始まったおまけシール。それがオリジナルのビックリマンです。最初は「どっきりシール」という名前で、ピンク・フロイド的なプログレッシブなデザインが特徴の尖ったアイテムでした。

どっきりシール

ビックリマンシールの前身となった「どっきりシール」

そんなビックリマンシールですが、発売当初は耳目を集めたものの、2代目「ウッㇱッシール」7代目「まじゃりんこシール」と代を重ねるごとに徐々に勢いは衰え、シリーズは停滞、シリーズ終了も検討されていました。

しかし、1985年、ビックリマンの10代目にあたる「悪魔vs天使 シール」という新しいコンセプトのシールが登場。

以前からのダジャレ要素に加えて、このシリーズから、神話的なモチーフをキャラクターデザインに取り入れ、またシールの素材やそれぞれのレアリティに差をつけることで、コレクションする楽しみやレアシールを手に入れるドキドキが飛躍的にアップしました。

ビックリマンの10代目「悪魔vs天使 シール」

ビックリマンの10代目「悪魔vs天使 シール」

すると、翌年には、ビックリマンチョコは月の販売数1300万個を超える大ブームを巻き起こします。シリーズはその後7年間も続き、ビックリマンは(たぶん)世界に類を見ないお菓子発のメディアミックスとして一時代を築きます。

シールの価格差が問題に……ビックリマンシールの栄枯盛衰

ビックリマンシールの面白いところは、ただ集めるだけじゃないという点です。子供たちがシールを「貼る」「剥がす」「削る」「傾ける」「(パズル的に)組み合わせる」などなど、いろんな方法で遊べる(介入できる)工夫がなされていました。

また、シールの裏には難解で謎めいたストーリーが独特の文体とフォントで48mm四方に詰め込まれ、それらを補う形で雑誌『コロコロコミック』での漫画連載やTVアニメといったメディアミックス展開がされるようになると、子供たちのストーリーやキャラクターに対する興味もどんどん深まっていきました。

しかし、ビックリマンシールの人気が高まりすぎた1988年、公正取引委員会から「不当景品類及び不当表示防止法に違反する」と、指導が入ってしまいます。

これはざっくり説明すると「シールの価格差がありすぎる!」という指摘で、その後おまけシールは「価格差をなくす」「種類ごとの混入率を均一にする」「特定のシールに価値が出るような広告をしない」の3つの自粛案による方針転換を余儀なくされました。

ロッテは17弾以降のシールからヘッド(いわゆる当たりシール。一箱に1枚〜2枚でめちゃくちゃ貴重です!)の素材の原価を抑え、その結果、目玉のヘッドはそれまででは考えられないような地味な仕様になってしまいました。また、ヘッド封入率も天使、お守り、悪魔シールと均一に。

結果として、ビックリマンシールは当時のキッズへの求心力をみるみる失っていきました。これを機に離れていったファンはあまりにも多く、ビックリマンブームは急速に終焉に向かっていきます。

また、上記の3つの自粛案は現在のビックリマンにも適用されており、シール業界におけるメインストリームである「商業おまけシール」の大きな枷になっていると考えられます。

そしてこれは、カウンターカルチャーとしての自作シールを語る上でもめちゃくちゃ重要な要素となります。

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