インターネットが拡張する声の劇空間 「ボイスドラマ」という文化
2020.10.09
これはSF世界の物語ではなく、今まさに現実の音楽シーンで起きている物語だ
クリエイター
この記事の制作者たち
生成AIが生み出した架空のメタルプロジェクトから、肉体を持つ現実のミュージシャンが集結した「実体のあるバンド」へ──
そんな前代未聞のパラダイムシフトを体現しているのが、世界中のメタルリスナーのみならず、多くの音楽ファンやAI分野からも熱い視線を集めるポストAIバンド・NEON ONIだ。
NEON ONI
コンポーザー/プロデューサーのKAGEさんが、音楽生成AI「Suno」を用いて制作した楽曲をインターネット上に公開したことからはじまったこのプロジェクト。
BABYMETALやBring Me The Horizonらの系譜を継ぐヘヴィかつキャッチーなサウンドとダークな世界観はAIでつくられた。瞬く間に海を越えて話題となり、当初は“本物の日本のバンドだ”と信じ込むリスナーが続出するなど、大きな議論を呼んだ。
その後、AI生成であることが公に明かされると、実際に楽器を演奏する実力派メンバーを迎え入れ、リアルなライブシーンへと殴り込みをかける。世界最大級のメタルフェス「Wacken Open Air」への出場権をかけた日本予選のファイナリストに選出されるなど、確実に現実のステージを揺らしはじめている。
KAI-YOUは、KAGEさんに加え、Lisaさん(クリーンボーカル)、Nickさん(リードギター)、Miacatさん(リズムギター)ら、NEON ONIのメンバー4名にインタビューを敢行。
プロジェクトをリアルへと突き動かしたファンへの想い、生身のプレイヤーたちが感じたAI楽曲の衝撃、そして「AIと人間の融合」がもたらす音楽の未来まで、彼らが追求する新しいメタルのあり方を探った。
目次
- 音楽生成AI・Sunoとの邂逅から生まれた「裏カワイイメタル」
- とにかく「ファンを失望させないために」
- 生身のプレイヤーが集結──AI楽曲が放つ「可能性」
- 音楽は最終的に「人がどう表現するか」
- 賛否両論のリアルなライブシーンへ──「ポストAI」が目指す未来
──まずは「NEON ONI」というAIメタルプロジェクトの成り立ちについて教えてください。
KAGE 若い頃はいくつかのメタルバンドでリードボーカルをつとめ、失恋や世界情勢、ニヒリズムなどをテーマに多くの楽曲を書いてきました。
ある日、自宅を掃除している際に昔の歌詞を見つけ、音楽生成AIの「Suno」を使ってその曲をリメイクしてみたのがこのプロジェクトのはじまりです。他のジャンルの楽曲も遊び感覚で制作していました。
その頃、BABYMETALの「SONG 3」をよく聴いていたのもあり、「このスタイルで楽曲をつくったらどうなるのだろう」と興味が沸いたんです。そこで、用意していた歌詞を日本語に翻訳して調整しました。
KAGE その曲は「仮面を被り続ける二面性」をテーマにしたものだったのですが、Sunoが意図せず「don’t forget ur mask(仮面を忘れるな)」というフレーズを生成して。その不気味な美しさに強く惹かれましたね。
その後、公開した楽曲がインターネット上で多くのリスナーから反響を呼び、プロジェクトが自然と広がっていったという流れです。
──やはり、BABYMETALからの影響が大きかったのですね。他にはどのような音楽的ルーツがあるのでしょうか。
KAGE BABYMETALのほかには、Bring Me The Horizon、Linkin Park、そして花冷え。から強い影響を受けています。

──メタルや音楽好きのコミュニティからは「(BABYMETALが定義づけた)『KAWAII METAL』の影響下にあるバンド」として評価されることも多いですが、それについてはどう捉えていますか?
KAGE BABYMETALには影響を受けていたので、当初は自分でもそのようなジャンルなのかなと考えていました。
しかし、歌詞のディープさやビジュアルのアイデンティティを踏まえ、業界の知人から「裏カワイイメタル(Ura-Kawaii Metal)」と定義されたんです。現在ではその表現が一番しっくりきていますし、NEON ONIの唯一無二のスタイルとして定着しています。
──AIを用いた具体的な生成プロセスについて、明かせる範囲で教えてください。
KAGE 生成プロセスについては独自に構築したワークフローがあるため、詳細は現時点では非公開としています。ただし、単純なプロンプト(指示文)を入力するだけで成立するような、イージーなものではないということだけは明言しておきたいです。
──楽曲のビジュアルや歌詞のコンセプトには、どのようなイメージが反映されているのでしょうか。
KAGE ビジュアルや歌詞のイメージは、漫画家・伊藤潤二さんの作品やビデオゲーム『サイレントヒル』、『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面』といった日本のダークな作品から多大な影響を受けています。
楽曲の不気味さや不安感を構築する上で、これらの世界観は欠かせません。
歌詞のコンセプトで言えば、「SATORi SEDAi」は世界情勢に対する感情、「ニヒリズム」は人生の反復や閉塞感、そして「U R nOt aLoNe」では母への想いを表現しています。
──活動初期はAIによる楽曲であることは明らかになっていませんでした。ストレートにお聞きしますが、はじめからAIによって聴き手を「騙す」つもりがあったのでしょうか?
続きを読むにはメンバーシップ登録が必要です
今すぐ10日間無料お試しを始めて記事の続きを読もう
残り 4950文字 / 画像4枚
800本以上のオリジナルコンテンツを読み放題
KAI-YOU Discordコミュニティへの参加
メンバー限定イベントやラジオ配信、先行特典も
※初回登録の方に限り、無料お試し期間中に解約した場合、料金は一切かかりません。
様々なジャンルの最前線で活躍するクリエイターや識者を中心に、思想や作品、実態に迫る取材をお届け
様々な記事の中から編集部で厳選したイチオシ作品をご紹介
ラッパー/ライター/編集
現代の日本の音楽シーンを語るなら、ボカロ文化は不可欠。2020年代のボカロ曲において、音楽的な独自性はどこにあるのか? 柴那典さんが「MAJ2025」受賞候補曲から考えます。
ライター
『ブルーアーカイブ』の青い色彩設計、そしてエデン条約のストーリー。この2つを柱に日本のサブカルチャーがアジアにどんな影響を与えたか、韓国でどう花開いたかを紐解きます
ライター
ぶいすぽっ!所属の蝶屋はなびさん。普段から前向きな姿勢を崩さない彼女のひたむきさはどこから来ているのかうかがいました。格ゲートークも充実!
編集
語られざる、違法な海賊版トレーディングカードゲームの歴史。世界広しと言えども、この解像度でその歴史を紡げる人は、SF作家・ゲームコレクターである赤野工作氏しかいない。
編集
結局、同人誌って違法なの? 実在する「VTuber」の二次創作、もしかして肖像権侵害や侮辱罪に当たっちゃう? 令和版、同人文化への最新の法的動向を弁護士に根掘り葉掘り聞いてます。
編集
日本語ラップを、構造的に理解する──音楽としてでもライフスタイルとしてでもない、新しいヒップホップの解釈を提示してもらっています。
編集
オタク/ラップのトップランナーだからこそ語れる“ニコラップ”の世界。懐かしいだけじゃなく、今に接続される話になっています。
ライター・編集者
減らないVTuberの活動休止について、根本的な原因を九条林檎さんに聞きました。推しのVTuberがいる方は、ぜひ読んでもらいたい内容です。