アイドルと漫才──IZ*ONEと宮脇咲良に見る日韓“コミュニケーション文化“の交錯

Interview

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  • 2019.09.18 19:00:00

アイドルバラエティが今、日韓の“コミュニケーション文化”の差異を浮かび上がらせると同時に、相互の接近・交錯を占う一つの重要な指標としても機能し始めているのではないか?

1人の少女の活躍を軸に、その未来を射程に捉える。

アイドルと漫才──IZ*ONEと宮脇咲良に見る日韓“コミュニケーション文化“の交錯

本連載では、文学・映画という二つのジャンルから、今の韓国に生きる人々のリアリティが刻み込まれている作品を取り上げてきた。最後に扱うのは、これまでたびたび言及してきた韓国のリアリティや社会の状況を、もっともユニークに反映している「芸能」のジャンルだ。

初回に記した通り、筆者が韓国の文学や映画にふれるきっかけのひとつとして、K-POPアイドルの存在があった。音楽的な文脈においてもそれらはすでに十分評価されていると言えるが、バラエティ・笑いといった「芸能」の観点からも語るべきことがあるように思える。

特に、2018年10月のデビュー以来、世界的な人気を誇る日韓合同のアイドルグループ「IZ*ONE」の存在は重要だ。IZ*ONEは、韓国で流行している、いわゆるサバイバルオーディション形式のアイドル番組「PRODUCE48」からデビューした、12人組グループ。そのなかには、HKT48の宮脇咲良・矢吹奈子、AKB48 team8の本田仁美の日本人3名が含まれている。

IZ*ONE (아이즈원) - 라비앙로즈 (La Vie en Rose) MV

バラエティや笑いといった今回の文脈においてIZ*ONEが重要なのは、彼女たちが「日本でアイドルバラエティ経験のある者が韓国でデビューした初めてのケース」だからだ。

日本のバラエティと韓国のバラエティ。その違いを最も鮮明に浮かび上がらせてくれると同時に、両者が交錯し、新たなバラエティカルチャーが生まれる可能性も見せてくれるのではないか。そんな期待を持ちつつ、彼女たちの出演した番組を取り上げていく。

「スキル(実力)のなさ」をいかに捉えるか──浮かび上がったのは“評価軸”の違い

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IZ*ONEが誕生するきっかけとなった「PRODUCE 48」の時点で、日韓の異なるアイドル文化が交じり合い、良くも悪くも化学反応が生まれる結果となった。

同番組は、韓国では非常に人気の高いサバイバルオーディション「PRODUCE 101」シリーズの第3シーズンで、デビュー前の練習生がレッスンやステージを通じて競い合いながらデビューを目指す。途中で何度か「国民プロデューサー」(視聴者)による投票が行われ、その投票数によって順位がつけられる。

「PICK ME」 初回パフォーマンス(「PRODUCE48」EP.0)

ステージが進むごとに足切りが行われてゆき、最終ステージで上位12名に入るとデビュー確定となる。普段のレッスン風景の映像編集やステージのカメラワークで100人近い候補者の印象は大きく左右され、それが視聴者投票の順位にも影響するという過酷なシステムとなっている。

そしてシーズン3である「PRODUCE 48」の最大の特徴は、その名の通り、日本の「AKB48グループ」とのコラボレーション企画となっていることだ。韓国の練習生57名のほか、日本からも有名・無名問わず39名のAKBグループメンバーが参加しており、その中に韓国でも知られていた宮脇咲良や松井珠理奈といった人気メンバーが含まれていたことで大きな話題を呼んだ。

とはいえ、親しみやすさや独特なコミュニケーション文化が特徴的なAKB48グループと、長年みっちりパフォーマンスを高めてからデビューするK-POPアイドルの練習生たちとでは、目指すステージの方向性や積んできた経験が違いすぎることが番組スタート前から懸念されていた。事実、前半では技術面で大きく劣る日本人メンバーが余り物のように扱われるという演出も目立った

しかし中盤以降、番組は予想外の展開を見せていく。慣れない環境で必死に追いつこうとする姿や、ステージ経験豊富であるがゆえの勝負強さ、表情づくりの上手さ、キャラクターのコミカルさなどで日本人メンバーの人気が高まり、最終審査直前の段階でトップ10のうち1位・2位を含む6人を日本人が占める結果となったのだ。急いで付け加えれば、前述の通りこうした「展開」自体が編集の賜物だという考え方もできるため、この結果そのものについて掘り下げるのはここでは避けたい。

しかし要因はどうあれ、少なくとも当初は箸にも棒にもかからなかった日本人メンバーに対し、「情が湧いてしまった」視聴者が多かったのは得票数から明らかだ(投票システム上、韓国国内の視聴者しか投票ができないため、日本のファンが票をかき集めたわけではない)。歌やダンスのスキルが急激に伸び、韓国人練習生を大きく上回ったというわけではない。にもかかわらず、日本人メンバーに票を入れてしまっているという事態に、韓国の視聴者は少なからず自分で驚いたのではないだろうか。あるいは、いわゆるスキルに還元できない、何らかの魅力という評価軸があるということを、改めて確認せざるを得なかったのではないだろうか。

ただ、このことから韓国と日本のアイドルカルチャーが根本では同じだ、と判断するのは早計に思える。パフォーマンスの「できなさ」や実力のなさに対する態度は、依然として、両国の(少なくともAKB48グループの)アイドルカルチャーで大きく異なっているように思える。実力のなさ、あるいはメインストリームで行われている競争とは別の価値観を肯定し“愛でる”ような態度は、韓国においてはマジョリティになり得ないだろう。

スキル面では不十分な点もありながら、最終的にIZ*ONEメンバーに選ばれるほどの人気と魅力を備えていたカン・ヘウォンに対して、トレーナーが指摘した「人気で順位を上げた自覚があるなら、もう少し実力を高める努力をしてもいいのでは」という言葉は、まさにそれを象徴している。結果的にスキルよりも愛嬌が評価されることがあったとしても、「愛嬌があればスキルはいらない」ということにはならない。そこにはやはり、大きな差があるのだ。

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スキルと魅力をめぐるこの認識の違いは、直接バラエティや笑いの問題と関わるわけではない。しかし人気と魅力をめぐる、同じ「芸能」の問題として、この二つは深いところで繋がっているように思える。

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アイドルが結ぶ、日韓の“コミュニケーション”