若いオタクはアニメからVTuberに流れたのか? 7つのポイントから考察
2022.07.31
クリエイター
この記事の制作者たち
「バーチャルカルチャー」を生み出す大きな特徴といえる2つの革命。
容姿を思うままにデザインし、現実の姿からの印象バイアスから脱することができる「容姿革命」。物理的な距離の近さよりも、精神的な距離の近さが重要となる「距離・場の革命」。
コラム最終回となる本記事では、これらの要素を盛り込んだ現在進行形のコンテンツについて見ていきたい。
バーチャルYouTuberという概念を生み出した「キズナアイ」、多くの個人勢VTuber誕生のきっかけとなった「ねこます」。その二者がVTuberというシーンの発展において大きなトピックだったのは、VTuberファンならずとも知っている人も多いと思う。
そして、彼女たちが形づくったVTuberという概念を根底から覆したのがバーチャルライバーグループ「にじさんじ」だった(にじさんじではバーチャルタレントのことをバーチャルライバーと呼んでいるので、以後はVライバーと呼んでいく。)
「にじさんじ」はデビュー当初からいくつかの点でこれまでのVTuberとは違う斬新なアプローチをとった。特に斬新だったのはその「仕組み」である。
1. バーチャル上の姿をつくり、オーディションにて魂を募集していくスタイル
2. 社内開発のiPhoneアプリを使い、ライバーたちがそれぞれのやりやすい場所から手軽に配信できるシステム
このアプローチにより、にじさんは多くのバーチャルタレントを展開させることに成功した。
2018年2月8日に活動を開始した1期生が8人、同年3月15日に活動を開始した2期生が10名……その勢いはとまることなく、現在ユーザーローカル社のサイトを参照すると関連のチャンネルは87にものぼっている。今なお勢力は拡大する一方で、グループ全体の視聴回数や影響力は圧倒的だ。
しかし、1期生のリリース前、ここまで大きくなることを業界の誰もが予想できていなかった。
企業勢が事業として行うバーチャルYouTuberの基本であった3Dのアバターを用いるのではなく、2Dの姿を中心としていたことや、スタジオを使わずほぼ個人と変わらない配信方法をとっていたこと(自宅から配信するにじさんじのライバーは多い)。これらが弱点になるのでは? と考えていた人も多かったが、結果として、これらがまさに「強み」になったのだ。
2Dアバターは3Dよりも一般的には制作面でのコストが低く、スピードも早い。そのため、にじさんじは多様なVライバーをどんどん生み出すことができている。同時に、バーチャルライバーは季節にあわせて、衣装の着せ替えを行うこともでき、そのタイミングで多くのファンアートが生まれたりもする(容姿革命)。
また、ほぼ個人配信のような形が功を奏し、ラジオのような距離感の近さを生み出した。部屋で友達に話しかけるような近さで、普段の生活であったことをファンに報告したり、歌ってみた、ゲーム配信を行う。そのリアルさ、親近感、距離感の近さは多くの人たちに響いた。Vライバーがリアルでどこから配信していようが、まるで同じ部屋にいるような錯覚になる(距離と場の革命)。
にじさんじの登場と台頭は、質の高い3Dモデルを用い、最先端技術を利用した映像をつくることだけがバーチャルの本質ではないことを明らかにした。「容姿をデザイン」し、「精神的な距離を近づける」様々なアイデンティティこそが、多くの人をひきつける。にじさんじは個々のライバーたちの創意工夫もあり、「バーチャル」の本質にいち早く気づいていたのかもしれない。
ちなみににじさんじのスタイルは大きな成功を収めたため、業界では後追いするグループも多かった。しかしそれでも、にじさんじは強く、同様のスタイルを表面だけ真似て失敗したところも多かった。個人的ににじさんじさんのファンでもあるので、その他の様々な取り組みのうまさについても語りたいところだが、長くなるので割愛する。
続きを読むにはメンバーシップ登録が必要です
今すぐ10日間無料お試しを始めて記事の続きを読もう
400本以上のオリジナルコンテンツを読み放題
KAI-YOUすべてのサービスを広告なしで楽しめる
KAI-YOU Discordコミュニティへの参加
メンバー限定オンラインイベントや先行特典も
ポップなトピックを大解剖! 限定ラジオ番組の視聴
※初回登録の方に限り、無料お試し期間中に解約した場合、料金は一切かかりません。