若いオタクはアニメからVTuberに流れたのか? 7つのポイントから考察
2022.07.31
かつて喧伝された「Webメディア」という新たな報道、ニュース、コンテンツ発信の形。
マスメディアのオルタナティブとして期待され、数年前は数億を超える大型調達も目立ったが、そのビジネスと持続可能性を今一度再考していく──。
「Webメディア有識者会議2019」。前回は、参加者のそれぞれのキャリアや仕事を振り返りつつ、Webメディアが辿ってきた歴史の一部を参照し、Webメディアが今、どのような地点にあるのかを議論した。
その中で見えてきたのは、無料/広告メディアを採用する媒体の多くは(それはつまり知名度のあるWebメディアのほとんどなのだが)過渡期にあり、厳しい状況だということだった。
Vol.2となる今回は「プラットフォーム依存」「属人化」「バーティカルメディア」といった昨今のWebメディアや情報環境を取り巻くワードを横断しながら、持続可能なWebメディアのモデルケースを、実践的な手法も提示しながら模索していく。
目次
- 消えるオウンドメディア、「SHIBUYA GAME」撤退の理由
- 属人的でもなく、プラットフォーム依存もしないメディアは可能か?
- 属人性を越えて──Netflixのやりかた
- 大企業、あるいは小規模でないとメディア運営は不可能?
- メディアで稼ぐ、その方法論の模索
──オウンドメディアは、媒体の売上よりも、ブランドの整理や別の商品の宣伝のために運営されるものが多い。本来は売上を求められるような媒体ではないはず。広告モデルのメディアは単純化すれば「儲からないから無くなる」とわかりやすく説明がつきますが、オウンドメディアの閉鎖が続く理由みたいなものはあるのでしょうか?
宮脇 本当に身もふたもない話だけど、更新停止で話題になった「Fuminners」とか「みんなのごはん」とかは母体の会社の業績不振ですね。オウンドメディア運営しようと思ったら、ライターや撮影など、基本的にお金が滅茶苦茶かかるじゃないですか。
宮脇 一方でパブリッシュメディア──例えばメディアジーンさんが運営しているようなメディアはちゃんと採算合わせて、編集者も雇って、ライターにお願いしてという形で行われている。収益源である広告費を取ってくることも自分たちでやってる。
けれど、オウンドメディアはそこが違う。オウンドメディアの多くは、企業のブランディングや商品・サービスの認知度を高めることが目的でしょう。マネタイズのためのメディアだから、そこに使えるお金が枯渇するとなくなるしかないというだけの話なんです。
朽木 広報的価値観で運営するところと、マネタイズに振り切ってやってるところがある。経験上、この目的がブレて行ったり来たりすると、あんまり良いことにならない気はします。
ただ、マーケティングに振り切れば、少人数でめちゃくちゃ儲けることはできると思うんです。アフィリエイト単価が高くて、あまり他業者が入ってないニッチなジャンルに目をつけて、そこでメディアをやる。すごく単純化した例ですが、クライアントから直接1コンバージョン(※)あたり20万円くださいと言って、月に500コンバージョン取ったら、月間1億円で年間12億円じゃないですか。もちろん、そんなに高単価の領域というのはそうそうないでしょうけれど、思考実験としてはあり得るはず。
でも「利益を出せるオウンドメディアがある」ということを社内の偉い人が聞きつけて、「利益を出せるなら出して」となると、ちょっと話が変わってきますよね。また、そもそも費用対効果の考え方もいろいろあって、例えば採用。採用サービスを利用することによって結構な費用がかかりますが、オウンドメディアがその機能を代替できれば、それは十分価値があるということになるはず。マーケティングの前段階で市場を醸成するとか。このへんは実は効果を示しやすいとも言えるはずなのですが。
──そもそも「SHIBUYA GAME」はどうして撤退されたんですか?
石川 宮脇さんのおっしゃる通りで、事業会社の業績に紐付いた経営判断という面が大きいです。キャッシュレス化に伴うペイメント戦国時代の中、ネットワーク型のプリペイド式電子マネーというビジネスモデルは頭打ちしてしまっていました。主軸としての電子マネー事業あっての、投資フェーズとしてのe-Sports事業だったので、稼ぎ頭の勢いが芳しくないとコストカットの矛先はまだ稼いでない新規事業に向くというのは自然な流れでした。
特にe-Speotsは本当に読めない。エコシステムができ上がってなくて、言ってしまえば儲けられている企業は少ない。みんな現在は投資フェーズだという割り切りを持って、泥水をずっと飲み続けるという業界の構造になっている。もちろん体力のあるプレイヤーもいて、例えばサイバーエージェントの子会社のCyberZはe-Sportsにすごく積極的です。大きく投資されていますし、3〜5年ぐらいはしょうがないねぐらいのスタンスで取り組んでいる。
でも前職の場合はそんなには待てなかったのだと思います。それに、3年後に良い状況になっているかと問われたときに、悲しいけれど、自信を持って「はい、なってます」とは誰も言えない状況。参入プレイヤーの数は多いですが市場規模も100億円が国内ではまだ見えない。グローバルで見てもようやく1,000億円という規模感です。ゲーム会社の作品の売り上げを積み上げればもちろん大きな市場ですが、e-Speotsというカテゴリに区切るとまだ全然。そういう背景もあるので慎重になるのは仕方ないとは思います。
朽木 でも本当は多分、そういうニッチな路線が正しいんだろうなとも思います。さっき(Vol.1を参照)の「属人化」以外にメディアが生き残るには、現状ではプラットフォームに依存するしかなくなる。
未だにニュースプラットフォームは莫大なユーザーを確保している。Googleの検索流入に依存するのも同様です。更新停止した「nanapi」はめちゃくちゃ検索を取りに行っていましたよね。あのモデルを真似したメディアはたくさんあったし、僕もかつてはそれをゴリゴリに真似していたこともある。そしてその依存モデルから抜け出そうと、例えば落合陽一さんとか、ホリエモンさんとか、著名人を起用して属人性を強く打ち出したメディアが登場しているのかな思っています。
そうでもないとしたら、バーティカルメディア(※1)になる。うちの会社も別の部署がバーティカルメディアを運営しているので他人事ではありませんが、バーティカルメディアの場合、ジャンル選びが大事ですよね。これは鶏と卵の問題ともいえるけど、石川さんがおっしゃっていたように、市場があるところじゃないとバーティカルメディアは成り立たないのかもしれない。「深く刺す」ことを意識するあまり、そもそも市場がない場所に突っ込んだりしてしまうわけです。
純粋な特定分野への熱意とかでメディアをやっていたら話は別なんですけど、儲けたいのに市場がない場所でバーティカルメディアをやっても、それはうまくいきませんよね。
バーティカルメディアの利点で良く言われるのは、そこでのコミュニティができるとか、専門性が上がるから広告が取れる・単価が上がるとか。でもこれは前述したように鶏と卵で。そもそも読者がいないメディアの広告枠は売れない。「自分が営業だったらどうか」と思考実験をしてみるのは大事だと思います。読者がいないのにどうやって広告を売るんだろう、と。
持続可能なメディアの一つとして、市場がある領域を見越したバーティカルメディアはあり得ると思います。属人的というのも人に依存しているので、その人が飽きられてしまえば新しい人をどんどん出していけないといけない。それはそれでしんどそうなので。だから、関心を持たれ続けそうな領域、例えばヘルスケアですね。そこでバーティカルメディアをやるのは一手なのですが、「WELQ」化しやすいというリスクが常にある。難しいです。
※1 「垂直に深く掘り下げる」ジャンル特化型メディアのこと。近年では幅広い分野を扱っていたメディアがジャンルごとにバーティカルメディアを展開するケースも増えている。
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