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  • 2019.12.13

ジャーナリズムが機能しない本当の理由

ジャーナリズムが機能しない本当の理由

現状のインターネット発メディアにおけるビジネスの難しさと、新たな可能性を探ってきたWebメディア座談会。

時代の移り変わりの中で、人々の情報の接し方は変化し続けている。

かつてはマスメディアを超え得る新たな媒体の在り方として持て囃されたWebメディアだが、その規模や影響力、売上において限界値が見えると同時に、コンテンツ面でもジャーナリズムの不足も指摘されることが多い。

テレビや新聞といったレガシーに比肩するという「幻想」を失った今、Webメディアに求められる価値とは何なのか。

目次

  1. インフォメーション、報道、ジャーナリズムの現在
  2. メディアの公共性を担保していたもの
  3. Webメディアバブルの終焉と、当事者の思い
  4. 大義を失ったWebメディアは何を志すべきか

インフォメーション、報道、ジャーナリズムの現在

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宮脇 新聞社の話題になってるんで、ずっと気になってて。「Webメディア」っていうとなんとなく、ジャーナリズムというよりもインフォメーション寄りのメディアのイメージがありますよね。その理由の根幹として、ジャーナリズムはお金になりづらいというのがあって、新聞の場合は購読料もあってビジネスモデルで成り立ってたんですけど、インフォメーションしかないというのは、非常に危機的だなと思っていて。

お金を稼ぎ出せないから、「WELQ」的なメディアにはジャーナリズムはほとんどない。個人で有料化して起業するというのはあり得るけど、既存のオウンドメディアは後手を踏んじゃって、さらに政権批判とかもほぼできない。一般の人の方が声がSNSでは大きくて、みんなTwitterで言い散らかしてるけど。全然深く論考できてないんです。

私は別に反安倍政権の立場でもないですし、言ってしまえば割とノンポリなんですが、現政権の良くないことは、良くないとちゃんと思ってる。少し前だと大臣が不祥事起こしたら、ジャーナリズムがしっかり機能していて、世間にきちんと報道されて、大臣の首が飛んでいたのに、最近は言い逃れして、逃げ切るケースが目立つじゃないですか。テレビや新聞も追求が甘くなっていて、メディア全体のパワーが落ちているんじゃないかなと思っている。

石川 マスメディアは、圧倒的にマイルドになった印象は受けますね。大きな問題だと思います。

朽木 Webに対して、あまり新聞社が適応できていないと指摘される理由の一つとして、今でも紙の購読料が売上で言うと圧倒的なんです。日本新聞協会のデータ(外部リンク)によれば、新聞業界全体の売り上げは2018年度で1兆6600億円。

これと比較してしまうと、デジタルの市場規模が小さすぎて、投資しづらい。もちろん、このままだといずれ破綻するという危機感はみんな持っているんですが、ここまでいろいろと議論させていただいたように、受け皿としてのウェブメディア業界が育っていない現状、手をこまねいてしまっているともいえます。

石川 朝日新聞社が運営している「ポトフ」(※1)の動きやその周りの記事を読んで、バーティカルメディアで大学スポーツを取り上げたりしているのは、Webへの親和性を高める施策だと思っていました。若年層を取り込みにいっているのかと。

※1 朝日新聞社が運営するバーティカルメディアプラットフォーム。ミレニアル世代女性向けWebメディア「telling,」や大学スポーツをテーマにした「4years.」など、専門性の高いWebメディアが9媒体参加している。

朽木 そう言えると思います。一つ、業界の人じゃなくて一般の人のSNSの投稿なんですけど、ずっと覚えてるものがあって。「マスコミは“権力の監視”が自分たちの役割だって言うけど、そんなこと誰も頼んでない」という内容でした。これは現代の空気感を象徴するような意見だなと。今までは自然と読者が集まってきてくれると錯覚していたけど、この先はこちらからアプローチしないといけない。そのためにできることをどんどんやっている状況ですね。

宮脇 メディア関係の仕事やってると、すぐ「マスゴミが」ってネットで悪口を言われますよね。いやいや、マスメディアが報道するからいろんなことが表になるんでしょ?って。匿名でこういうこと言う奴は本当むかつくな、目の前にいたら殴ってやりたいな、とか思うんですけど(笑)。

朽木 もちろんマスコミ側が反省しなきゃいけないとこも多々ありますが……。
さっきのファンダムの話につなげると、報道も信頼を積み重ねるようにメディアをつくっていくしかないと思います。

石川 「NewsPicks」だと特集でやったりされてますもんね。

宮脇 そういうところがもっと突いていかないと。特に報道系のメディアはどんどん衰退していく。誰も信頼してくれなくなる。

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