Interview

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  • 2020.01.22

2020年以降「公共性」は求められるのか?

2019年末から続いたWebメディアの持続可能性をめぐる座談会も今回で最終回。

刻一刻と様相が変化していく情報環境。2020年以降を見据え、Webメディアの識者たちは何を考え、行動していくのか。

2020年以降「公共性」は求められるのか?

目次

  1. そもそもなぜ、インターネットなのか
  2. メディアのかつての役割──公共性や多義性は、時代にそぐわない?
  3. 2020年以降、果たして何をしていくべきなのか

そもそもなぜ、インターネットなのか

──尾田さんや宮脇さんとか僕も、もともと出版出身じゃないですか。そこからインターネットの世界に行ったっていう人たちだと思うんですけど、お二人はなぜネットのメディアにいったのでしょうか。

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宮脇 僕は、本当に流れで(笑)。どんどんWebの仕事が時代と共に増えてきたんですよね。

尾田 僕の場合、最初は音楽出版社で、その時は音楽がイノベーションの中心──グランジが起こったりとか、文化的なムーブメントの中心にいる感がすごいあったんです。それで常にそういう何かが起こる現場の中心にいたいという気持ちがあって、いつしかスティーブ・ジョブズビル・ゲイツであったり、イノベーターと呼ばれる存在が音楽よりもインターネットやテックの世界のキーパーソンがイノベーションを起こす構造に変わった。

単純にそっちの方が面白いと思ったんです。小林弘人(※1)さん、かっこいいなみたいな(笑)。言ってることがロックよりも尖っていた。そういう意味で──最近、すごいモチベーション下がってきてしまっている。ネットもマスメディアもイノベーションの中心なのかって言うとなんか違うなっていう思いが今はあります。そういうワクワク感が急速に失われていて。

ムーブメントって横断的なものですよね。自分たちのカテゴリの外に対して爆発的に広がっていく何か。そういう快感だと思うんだけど、今はそれが自分たちのスケールの中で小さく静かにやっていくのが得策だみたいな状況になってる。正直、そういう意味ではすごく苦しい。

※1 株式会社インフォバーン創業者。現在は同企業の代表取締役 CVO(チーフ・ビジョナリー・オフィサー)。1994年に雑誌『WIRED』の日本版を創刊したことで知られるほか、ブログメディア「GIZMODO」の日本版も創刊。単著に『新世紀メディア論』『ウェブとはすなわち現実世界の未来図である』など。

宮脇 でもそれは成熟じゃないですかね。テレビの黎明期もみんなワクワクして、CMという発明ができた。CMの枠をつくって、それを売る。本編と切り離すっていうのはあれはメディアとして最高の儲かり方なんです。数十秒で何千万、何億と動く。それがネットの場合、コンテンツの閲覧を阻害するような場所に広告が出るじゃないですか。そしてコンテンツはどんどん無料になっていったのに、Instagramみたいなプラットフォーマーだけが儲かってたりするじゃないですか。

WebメディアはコンテンツをつくってPVを稼ごうとしたり、逆にPVじゃなく質で勝負しようみたいにこれまで右往左往してきたけれど、手を出し尽くした感がありますよね。なんかもうどうしようもなくない? っていう状況なのかもしれない。

石川 逆にワクワクを感じる次のシーンややり方みたいなものは見えていたりしますか?

──そういう意味で、有料課金とか有料配信の記事、メディアについてどう思われますか。この座談会もまさに、KAI-YOU Premiumというサブスクリプション型のメディアに掲載されるのですが。

宮脇 全然ありだと思います。それができるだけの知名度と、読者の理解と記事の質とが揃ってはじめて成立するもので、真似することも難しい。もちろん無料のメディアに比べるとPVも読者数も下がるじゃないですか。それでも読みたいと思ってくれる人がいるということですよね。

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